上 下
80 / 168
ハイジ編

80.

しおりを挟む


黒のロングヘア。やや吊り上がった猫目。濃いアイシャドー。
ハイジよりも背が高く、気が強そうなオーラを放つその女性は、二十代半ば位の水商売系。

ヘルプホストへの、厳しいテーブルマナーの指摘。初回にも関わらず、場内指名したホストにピンドンを入れてしまう程、金回りの良さ。


「最初は……単にハイジが、知り合いの女性に店を紹介しただけだと思ってた。
送りを断って、店を出ようとするハイジを追い掛け、一緒に帰っていたのが気になったけどね」

場内指名とは、初回で気に入ったホストを指名する事。
送りとは、気に入ったホストに店の外まで見送って貰う事。

「そのツンケンしてた山嵐の彼女が次に来た時は……ハイジにベタ惚れ状態で。
ピッタリと身体をくっつけて、想像できないぐらいのデレ子ちゃんになっててさ」


店の奥へと向かうハイジから離れ、一人卓についた途端──イヤホンを両耳に装着し、ついでに濃いめのサングラスを掛け、腕と足を組んで指名したホストとヘルプを完全に無視していたという。


「………」


……解らない。

けど、ハイジの腕に絡みついて甘える顔を向けたその女性を、ハイジが優しく微笑みかけている所を想像して──ズキン、と胸の奥が痛む。

「指名されたのが、まだ入りたての初々しいホストだったから。何とか盛り上げようと必死でさ。……でも、あれはちょっと可哀相だったな」
「……」
「……ま、そんなツンデレの彼女が最後に来た時──」



ガタガタガタ……


気の強いオーラは、もう見る影もなかった。

しゃんと伸びていた背中は丸まり、俯いた顔を長い髪で隠す。その髪の隙間からチラリと覗く、大きめの白いガーゼ。
右手で必死に左腕を押さえ、決してその手を外さなかったという。


「その押さえてた右腕の目立つ所には、幾つも青痣があってさ。
もう、口も利けないほど震えてて……」



………ハイジが……暴力……?


そんな事……



「………」


僕が押し黙ると、ホストが二度目となる深い溜め息を漏らす。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

支配された捜査員達はステージの上で恥辱ショーの開始を告げる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

闇夜 -アゲハ舞い飛ぶ さくら舞い散る3-

真田晃
BL
僕を束縛・強姦・監禁したハルオの元を抜け出し、凌のサポートを受けながら希望通りの生活を送っていた。 が、世の中そんなに上手い話なんて──無い。 ††† 初めての一人暮らし。再開する学校生活。そして、生計を立てる為の簡単なアルバイト。 いつか迎えに来てくれるだろうハイジを待ちながら、そんな平穏な日々を過ごし始めていた。 ある日、凌の後輩である『水神シン』と知り合う。冷酷な印象を持つ彼に容赦なく罪悪感を植え付けられ、次第に裏社会へと引き摺り落とされていく。 そんな中、とあるパーティで出会った俳優・樫井秀孝に、卑劣な方法で『身代わり』をさせられてしまう。 その本当の意味を知り、思い知らされた竜一への想い。そして、竜一の想い。 運命に翻弄され、傷付きながらも、それに抗い、立ち向かっていった先に待ち受けていたのは── 『アゲハ舞い飛ぶさくら舞い散る』シリーズ3作目。 注:実際にあった事件をヒントにした部分があります。 ◇◇◇ この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在の人物・団体・名称等とは一切関係ありません。 また法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。 ◇◇◇ 表紙絵は、「キミの世界メーカー」で作成後、加工(文字入れ等)しました。 表紙キャラクターは、エセ関西人の凌。 ※関西弁に間違いが御座いましたら、遠慮なくご指摘して頂けますと有り難いです。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...