上 下
78 / 125
ハイジ編

78.

しおりを挟む

「こんな所で油売ってないで、指名のひとつでも取って来たら?……万年ヘルプくん」

切れ長の蒼眼が、不敵な笑みを溢す。僕の言葉尻を真似て、童顔ホストを揶揄いながら。


……こいつら、ヘルプ組だったのか。

なのに、よくナンバーワンホストまで上り詰めたアゲハを侮辱できたな。……こっちの事情なんか、何にも知らない癖に。

軽蔑した視線に、怒りと同情とが混ざり合う。

「………は、はい。すいませんっ」

僕からサッと離れ頭を下げた万年ヘルプくんが、簡単に身形を整えた後、何処か含んだような表情のままバックヤードを飛び出す。その後を、新人眼鏡があたふたと追い掛けていく。


「正直、見直した」

薄い唇の端が、少しだけ持ち上がる。

「この世界には似合わない気がしてたから。さっきの雑魚に、簡単にやられちゃうかと思ったよ」

そう言いながら、金髪蒼眼ホストが僕の方へと近付く。

「……」

目を逸らさず、ソイツを下から睨み付けるけど。僕では、威圧感とかそういったものは一切感じないらしい。

「アゲハの弟なんだってね。どおりで何となく似てた訳だ」

独り言のように呟きながら、僕の傍らに立つ。そしてジャケットの裾をパンと手の甲で払った後、スッとしゃがみ込む。

「……で。アゲハの弟が、なんで大友組の“狂犬”と一緒にいんの?」


……大友組……?


そんな具体的な名前を聞くのは、初めてだった。

ハイジは、龍成って人の恩義を感じて仕事を手伝ってるだけで、暴力団組員になった訳じゃないって言ってた。

でも……
……“狂犬”……って……

まさか、暴力団に飼われてるって訳じゃ……


「アゲハがこの世界に飛び込んだのは、弟をヤクザから守る為だって聞いていたけど。……あれ、嘘だったの?」

細められる切れ長の目。口角を綺麗に持ち上げた、営業スマイル。
その顔からは、何の感情も感じられない──吸い込まれた所で、ブラックホールのような闇が広がるだけ。

「……」
「まぁ、別にいいけど。……これ付けてるって事は、ハイジに捕まって飼育されてるって事だよね」

押し黙る僕の首元に、ホストの片手が伸びる。
黒革の首輪。それを下から人差し指で引っ掛け、二度ほどジャラジャラと揺らす。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

怖いお兄さん達に誘拐されたお話

安達
BL
普通に暮らしていた高校生の誠也(せいや)が突如怖いヤグザ達に誘拐されて監禁された後体を好き放題されるお話。親にも愛されず愛を知らずに育った誠也。だがそんな誠也にも夢があった。だから監禁されても何度も逃げようと試みる。そんな中で起こりゆく恋や愛の物語…。ハッピーエンドになる予定です。

男色官能小説短編集

明治通りの民
BL
男色官能小説の短編集です。

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

BL性癖詰め合わせ短編集

紅音
BL
とにかくエロいをモットーに書いています。 毎話エッチなことしかしてません。 日常的なことは挟むかもしれませんが多分ほぼほぼエッチなことしかしてません。 一応1話完結型ですが、同じキャラクターが別の話に出てきたりすることがあります。 誰かの地雷とか踏み抜くような話があったら誠に申し訳ございませんがお逃げください。 とにかくエロいをモットーに書いています。(大事だから2回言った。)

SLAVE 屋敷の奥で〜百回いくまで逃げられない〜🔞

阿沙🌷
BL
秘密の屋敷に囲われている青年の脱走未遂。捕縛された彼の仕置がはじまる。 成人向け、ヤマナシオチナシイミナシ。未成年者の閲覧は厳禁。痛い、救いない、地雷がいっぱい、何でも許せるかた向け。 地雷避けに↓ 序編 Day1 束縛 ローター スパンキング イラマ 乳首責め 挿入 中出し Day2 束縛 フェラ 挿入 連続 Day0 下剤 衆人 前封じ ローター 媚薬 見せしめ Day3 手淫 Day4 拘束 複数 三所責め Day5 拘束 焦らし 集団 水揚げ 媚薬 潮  イラマ ナカイキ Day6 かくれんぼ 踏みつけ ・地下室編 1日目 限界寸 ローションガーゼ 前を責め 2日目 乳首を責め 3日目 前→乳首ときたら最後はアレ ・屋敷編  とりあえず屋敷ものっぽくそれなりにお仕事をしていただく回になる予定。(五月の更新再開後~更新終了は未定) ・藤滝過去編 ・動乱編  構想だけ練っているため、完全に未定。 ✿応援してくださったかた、ありがとうございます!ストレス発散にゴリゴリ書いている当BLですが(本当にBがLしているのか??)、しばらくの間、亀オブ亀更新【めっっっっっっっっちゃ更新が鈍くなります】すみません!また戻ってきますのでその時は藤滝とやっちんにかまってくださいまし~~!!(爆) ✿いつも閲覧ありがとうございます。いつの間にかお気に入りの数が増えていて驚きました。恐れ多いことにございます。読んで頂けて嬉しいです。  ぼちぼちまた、お気に入り80overの時のように、感謝SSを書けたらいいなぁと思います。いつになるかわかりませんが(苦笑)。  本編もなんとな~く、それとな~く、どういうふうに終わらせるのか、少しずつ考えています。にしても、その終着にたどり着くまでの過程で発生する濡れ場シーンのプレイをどうにか書ききらないとなぁ~と。いや、そこがメインなんですが。  屋敷編がひと段落ついたら、次は「わんこプレイ」させたいので(落ち着け)、がんばるぞ~!(とか言いつつ相変わらず鈍足更新になるのでそこのところは……) ✿番外編! お気に入り80overありがとう企画SS→https://www.alphapolis.co.jp/novel/54693141/955607132【完結】 ✿その他の無理矢理系ハードエロシリーズ ・執事は淫らにため息をつく→https://www.alphapolis.co.jp/novel/54693141/473477124 ・習作→https://www.alphapolis.co.jp/novel/54693141/711466966 表紙は装丁カフェさまから。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...