シンクロ -アゲハ舞い飛ぶ さくら舞い散る5-

真田晃

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ハイジ編

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驚いた様に、その手が直ぐに引っ込められる。

「……おま、」
「え……」

驚いてハイジを見れば、僕から視線を直ぐに外し、頬を赤く染めていた。
それにまた驚き、ハイジを真っ直ぐ見つめる。

「無意識かよ……」
「……」

赤い顔のまま、ふて腐れた様に口を尖らせる。


……無意識、だったのかな……

でも、意味も無くやった訳じゃない。


ハイジを凄く近くに感じて、前よりも愛しさが込み上げて……

そしたら……もうこれ以上、誰かを容赦なく傷付けて欲しくないと思ったし、自分を責めて、怯える姿も見たくないって……

もし、僕という存在が少しでも救いになるなら……いいな、って……


「……ったく。誘ったのはお前だからな」

言い終わるか終わらないかのうちに、ハイジの片手が僕の肩を強く押す。

「……!」

仰向けに転がされ、その上にハイジが素早く跨がる。

と、サラサラと白金色の横髪が流れ落ちた。

こんな状況なのに。やっぱりハイジの髪は、綺麗だな……なんて見とれてしまう。


僕を見下ろすハイジの瞳。
その瞳は何処か雄っぽく、だけど涙を含んだように熱く潤み、小さく揺れる。

「………」
「……ハイジ?」

僕を見下げたまま……ハイジの右手が僕の左頬を優しく包み、親指の腹で僕の下唇をそっとなぞる。


「キス、……していいか?」


熱く吐かれる声。
しかし、何処かまだそこには戸惑いが含まれていた。

「何で、そんな事聞くの……?」
「……もうしねぇって、言っちまったから」

ハイジの口から出た言葉に、僕はつい、クスッと顔を綻ばせる。

「なに笑ってんだよ」
「……だって。タクシーの中では聞かなかったから」
「あっ、あれは……その……」

ハイジの頬が、みるみる赤く染まっていく。
視線も定まらず、呼吸も乱れ、何処か落ち着かなくなってしまった。

「………いいだろ、別に」
「うん」

照れながら誤魔化すハイジが、可愛い。
愛しくて、どうにかなってしまいそう……

キラキラと光る白金の髪にそっと手を伸ばし、指を絡める。


「……いいよ、して」


唇を小さく動かした後、薄く瞼を閉じる。


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