上 下
53 / 199
ハイジ編

53.

しおりを挟む


頭を傾げて逃れる。
しかし、太一の拘束までは解けない……


「……ハイジはよォ……俺らをよくここに呼び集めて、これと同じ首輪わっかをしたオンナを輪姦させてんだぜ」


……え……


ゾクッ、……と背筋が凍りつく。


……ハイジが、そんな事……


「可哀想に……そのオンナ、顔も身体も痣だらけで。首輪を外してみりゃあ、絞められた跡がクッキリ残っててよ。……すっかり怯えきってたぜ……」


指先が冷え、感覚が無くなっていく。


……もし、それが事実なら……
さっき僕の隣にいた男がとった行動は、可笑しなものではなかったのかもしれない……

でも……だったら尚更。
どうしてハイジは、僕をあの部屋になんか………


『こいつには、ぜってー手ぇ出すなよ』


……ハイジ……


「俺らの知らねぇ所で、ハイジに何があったのかは知らねぇけど。恐らく、傷害事件で世話になった──辻田ってヤクザの影響だろうな」


暴漢に襲われてる中、ハイジを引き連れて部屋に入ってきた、龍成というヤクザの顔が浮かぶ。

辻田──何処かで、聞いた事があるような……


「それにしても」

太一のもう片方の手が、カットソーの裾から侵入する。

「会わねぇうちに、随分色っぽくなったなァ………お姫サマ」

首輪に触れていた指が僕の顎先に掛けられ、クィッと天井へと持ち上げられる。

「……こんな美味そうなご馳走、目の前でお預けされちゃあ、堪らないぜ……」

腰から脇腹にかけての曲線ラインを確かめる様に、太一の手のひらが肌を滑り上げる。そうしながら耳下の窪みに鼻先を寄せ、スゥと嗅ぐ。

「まぁ、お互い殺されねぇ様、気をつけようぜ」







ハイジがどんな仕事をしているのか──実際の現場を見たのは、初めてだった。

思い返せば、チームの溜まり場に住んでいた頃から、そういう部分に余り触れなかった気がする。

ハイジ自身が、話さなかったのもあるけど。気になった癖に、僕から聞いた事も無い。

「……」

太一に舐められた耳を拭い、その下の首筋を手で覆う。

剥き出しにされた心臓を、太一の濡れそぼつ大きな舌で執拗に転がされた様な……恐怖と憤り。


『……忘れろ』──太一の熱い息遣い。肌に纏う熱と感触……

自身の首筋に当てた指が、小さく震える。

……そんな簡単に……忘れる訳──


「……どうした?」

タクシーの後部座席。
窓ガラスに街のネオンが反射し、車の速度に合わせて光が走る。
ハイジを見れば、穏やかな表情をした瞳が僕を優しく包み込む。

「……」
「なんかあったか?」
「………ううん」

静かにそう答え、再び窓の外へと顔を向ける。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

助けの来ない状況で少年は壊れるまで嬲られる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

処理中です...