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ハイジ編

43.

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『 児童養護施設って所で育った。……けど、抜けた』

──小四で施設を抜けてから、単身外の世界で、どうやって生きてきたんだろう。
住む所も無ければ、頼る所もない。そんな中、ハイジのチームを作ったんだから……きっと、想像以上の苦しみを味わってきたんだと思う。

施設の内か。それとも外か。──結局ハイジにとって、どちらが幸せだったのかな……


「……ンな顔すんなよ。
あん時抜け出してきたから、お前に出会えたんだぜ」

歯の浮くような台詞。
だけど、そんな軽いものなんかじゃない。

なんの反応も見せずにいれば、ハイジが僕の手からペットボトルを奪い取る。そして蓋を外し、再び僕の手に押し付ける。

「ちゃんと飲めよ、薬」
「………う、ん」

ゴホッ、ゲホゲホッ……
ひゅぅっと喉が張り付き、苦しさから再び咳き込んでしまう。

「大丈夫かよ」

直ぐにハイジが立ち上がり、丸めた僕の背中を優しく撫でてくれる。


……ねぇ、ハイジ……


施設を抜けた後……どうやって生きてきたの?
竜一とは、どうやって知り合ったの?
ヤバイ仕事って、一体どんな仕事だったの……?


聞きたい事や知りたい事なら、まだ山ほどある。


……ゴホッ、ゴホッ、

なのに。タイミング悪く、咳に阻まれてしまう。


「……もう、ゆっくり寝とけ」
「う、ぅん……っ、……ゲホッゲホッ」

咳き込む僕の背中から、ハイジの手が離れる。
そして握り締めた僕の手のひらを優しく広げ、風邪薬を拾う。


「風邪が治ったら、……外、連れ出してやる」


その言葉に驚いて、顔を少し上げる。ハイジの顔色を覗えば、穏やかな表情で僕を見つめたままベッド端に腰を下ろす。


「……だから、ホラ。口開けろ」


言われるまま、唇を割ってハイジに咥内を晒けてみせる。そこにハイジの指先が入り、舌上にそっと落とされるカプセル。


「……」


……粘膜に触れた指先。

それが少しだけ、震えていた気がした。



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