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ハイジ編
34.
しおりを挟むハイジの手が、壊れ物に触れるかのように、僕の脇腹から胸元へと滑らせる。
そして、僕の背面に火照った身体を重ねながら、胸の小さな尖りを指先で抓んで弾く。
……はぁ、はぁ……
耳裏に掛かる熱い吐息。それが直ぐに離れ、浮き出た肩甲骨に熱が落とされる。
ハイジの濡れそぼつ熱い舌が、それを愛おしむように舐め、貪る様に何度も食んで柔く歯を立てる。
「……さくらの身体、随分と甘い味がすンな」
「………」
「スゲェ、たまんねー」
それは、ハイジの色に塗り替えるかのように。背骨に沿って、熱い舌がじっとりと這う。
腰は動かしていないにも関わらず、僕のナカでソレが脈動し、硬く滾って質量を増していく。
「こことか、どんな味がすンのか……舐めてみてぇ」
「……ぇ……」
乳首を弄んでいた指が、僕の臍の横を通って下腹部へと下りていく。
何度も果て、萎え縮んだそこを握られ、再び上下に扱かれる。
「………ゃだ、」
「ヤ、じゃねーよ。………リュウには許したんだろ?!」
その瞬間──一変する声色。
と同時に後頭部を掴まれ、上から叩きつけるように顔面をベッドに押しつけられる。
……息が、苦し……
深く沈められたまま、必死で浅い呼吸を繰り返す。
「ヤってたんだろ、あの部屋で!」
「………」
「あん時も」
……あの時……
多分……竜一の事務所らしき所に連れて行かれた時の事だ……
「言えよ! さっきみてェに『いいよ』って」
「……」
「言え、っつってンだろ!!」
僕の頭を握り潰すかのように、ギリギリとハイジの指に力が籠められる。
「………、ッ」
こんなハイジは、知らない……
溜まり場で生活している間は、ずっと優しかったから……
「───ああ、クソッ!」
上体を起こしたハイジが、僕の腰を乱暴に掴む。
その指先が、小刻みに震えていた。
ズンッ──
奥深くに打ち込まれる楔。その尖端が更に奥の奥まで挿ると、ぐちゃぐちゃにするように内臓を引っ搔き回される。
「こんなにシてんのに……全然、足りねぇ……」
ズッ、ズンッ──
ギリギリまで引き抜かれ、直ぐに最奥を貫かれる。
まるで、僕を壊すかのよう。激しい抽送を繰り返し、もう、何度も何度も何度も何度も──
「……足りねぇよ、さくら……」
ハァ、ハァ……
燻った感情の全てを、僕にぶつけてるみたいだ……
「……傷付けたくねーのに。……クソ」
「……」
……なのに、なんで……
こんな酷い事、しておきながら……傷付いたような声をして……
僕の背中──浮き出た肩甲骨の間に片手をつき、上から強く押さえつける。
「……この身体が、リュウに染められたかと思うと……
お前をこの手で、壊してやりたくなっちまう……ッ」
「──!」
ぶるっ、と震える身体。
……怖い……
豹変するハイジが。
その起伏の激しさが。
堪らずシーツをギュッと掴む。
「……」
『……いいよ』──そう、言ってしまいそうになる。
だけど、その言葉が喉の奥に支えて、なかなか出てこない……
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