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ハイジ編
31.
しおりを挟む手首に嵌められた手錠。
今はベッドの柵にくくりつけられていないから、部屋の中を自由に動き回る事はできる。
シャワーにも行ける。
だけど、囚われている事に変わりはない。
ザァァァ……
未だに激しく降る雨音。
竜一専用の携帯は、あの部屋に置いたまま。
三日連続……なんて、奇跡みたいな事はあり得ない。
多分、一度も鳴ってはいないんだろう。
竜一もまだ、僕の異変に気付いてはいない筈。あの龍って人が、竜一に何かを吹き込まない限り。
「……」
目的は、何だったんだろう。
何であの部屋に、突然押し入ってきたんだろう。
竜一を探していた……とは思えない。もしそうなら、僕を捕まえて真っ先に問い詰める筈だから。
『最近、何か変わりはねぇか?』──ふと、竜一に言われた台詞が思い出される。
まさか、僕……?
……でも、僕になんて興味など無さそうな眼をしていたし。何処かで見た事がある程度の認識で、竜一のオンナの訳がないと、言い切っていた。
「……」
竜一との関係を、内部抗争中の敵対組織に知られた訳じゃないとすれば……一体──
「……そのままだったのかよ」
いつの間に、眠ってしまったんだろう。
パタン、とドアの閉まった音の後、近付く足音と共に少し呆れた声が聞こえ、目が覚める。
「……」
……確かに。
ハイジが出て行ってから、一歩も動いていない。
ベッドに降りてさえも……
横向きの身体を起こそうと、もぞもぞと手足を動かす。ただ、それだけなのに。僕に注ぎ込まれた精液が、溢れ出てしまう。
「──ッ、!」
……痛い……
切れた所が染みて、痛い……
「ほら、」
強引に僕を仰向けに倒し、首の下に腕を差し込むと、ハイジが僕の上体を起こしてくれる。
その瞬間──白濁液が更に溢れ、シーツが濡れ広がっていく。
「……」
それが空気に晒されれば、ひやりと冷たくて。乾いている肌にも濡れて不快感が増す。
「……さくら」
ハイジがベッド端に腰をかける。
何処から取り出したのか、手には黒革の短いベルトがあった。
「痕が目立つから、これ付けろ」
僕の首に、そのベルトを巻き付ける。
そして自身の首を傾げ、絞めすぎないよう調整しながらつく棒で止めると、定革に剣先を通す。
「……」
痕というのは、キスマークの事ではなく。多分、首を絞めた時にできた圧痕の事だろう。
もしキスマークなら、鎖骨の辺りにまで付けられているし……このベルトひとつで隠しきれそうにないから。
「……ハイジ」
「似合ってんな……」
硬く重厚感のあるそれが、簡単に僕を人間以下にする。
シャラッ……
首輪にある飾りの鎖が、音を立てて小さく揺れた。
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