7 / 9
7
しおりを挟む凪と一緒に、水族館を出る。
まだちゃんとした答えは貰っていない。
このまま付いていっていいのかも、よく解らない。
「………ごめん」
「……」
「きっと驚いたよね。……僕もまさか……僕が今日、水族館に来るなんて、思いもしなかったから」
「……」
凪が、おかしな事を言う。
さっき僕も、おかしな事を言ったけど。……でも、そういう事……なんだろう……
「本当の事を話すよ。……だから、ちゃんと聞いて欲しい」
並んで駅へと向かう道すがら、凪はぽつりぽつりと語り出した。
「──僕は、この世界とは違う未来から来たんだよ」
「……え」
「過去に戻るとね、それまでいた世界とは違う……別の世界に飛ばされる。
パラレルワールド……っていうのかな。同じ時間軸に無数の分岐点があって。選択してこなかった、それぞれ別の未来が存在する。
……にわかに信じがたい、絵空事だとしか思ってない人達が殆どだけどね。
その無数の世界には、創造した神にしか解けないロックが掛けられていて、簡単に往来できないようになっている。その世界の秩序を守る為に。
……でも僕は、その鍵を見つけたんだよ」
信号の手前で曲がり、凪が細い路地に入っていく。足早の凪に追いつけず、僕は小走りして追い掛ける。
「──塚原と僕はね、入学式で見かけた理央に、一目惚れしたんだ。
可憐な顔立ちながら、何処か人を寄せ付けない陰のようなものがあって。僕に似ていると感じた。仲良くなれたら、と思ったよ。
……でも、塚原は違った。
理央を虐めの対象にした。
わざと賭けに負けて、罰ゲームを利用して、理央に想いをぶつけたんだ」
「……」
「そんな理央は、深く思い詰めて……自殺した。
塚原に捨てられた本を抱えて、学校の最上階から身を投げて……」
「……」
「凄く、後悔したよ。
塚原を止めようと、何度も思ったのに。……最後まで出来なかった。
結局僕も、塚原と同じで……周りに悟られるのが、怖かったんだ。
でもその結果、大切な君を失う事になった。……取り返しのつかない事をしたと、今でも思ってる」
「……」
「この世界に来たのはね。理央に、もう一度会いたかったからなんだよ。
もしできるなら……理央を支えて、運命を変えられたらとも思った。
どれだけ理央の力になれたかは解らないけど……理央の命日、何事もなく公園のベンチに座っている姿を見た時は、嬉しかった。
……だから少し、欲が出た……」
「……」
「そろそろ、帰らなくちゃ」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした
月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。
人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。
高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。
一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。
はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。
次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。
――僕は、敦貴が好きなんだ。
自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。
エブリスタ様にも掲載しています(完結済)
エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位
◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。
応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。
『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です

すれ違いをしちゃう話
key
BL
BLになっていますので、苦手な方はお気をつけください。
この話はすれ違いをテーマにした短編になっており、複数のお話を載せる予定です。基本的に話ごとに登場人物は異なります。
1隣にいることが、ツラい。(改訂し、再掲です。完結済み)
2親友に恋しました。(改訂し、再掲です。完結まで予約済み)
夜20:00更新します。

【BL】記憶のカケラ
樺純
BL
あらすじ
とある事故により記憶の一部を失ってしまったキイチ。キイチはその事故以来、海辺である男性の後ろ姿を追いかける夢を毎日見るようになり、その男性の顔が見えそうになるといつもその夢から覚めるため、その相手が誰なのか気になりはじめる。
そんなキイチはいつからか惹かれている幼なじみのタカラの家に転がり込み、居候生活を送っているがタカラと幼なじみという関係を壊すのが怖くて告白出来ずにいた。そんな時、毎日見る夢に出てくるあの後ろ姿を街中で見つける。キイチはその人と会えば何故、あの夢を毎日見るのかその理由が分かるかもしれないとその後ろ姿に夢中になるが、結果としてそのキイチのその行動がタカラの心を締め付け過去の傷痕を抉る事となる。
キイチが忘れてしまった記憶とは?
タカラの抱える過去の傷痕とは?
散らばった記憶のカケラが1つになった時…真実が明かされる。
キイチ(男)
中二の時に事故に遭い記憶の一部を失う。幼なじみであり片想いの相手であるタカラの家に居候している。同じ男であることや幼なじみという関係を壊すのが怖く、タカラに告白出来ずにいるがタカラには過保護で尽くしている。
タカラ(男)
過去の出来事が忘れられないままキイチを自分の家に居候させている。タカラの心には過去の出来事により出来てしまった傷痕があり、その傷痕を癒すことができないまま自分の想いに蓋をしキイチと暮らしている。
ノイル(男)
キイチとタカラの幼なじみ。幼なじみ、男女7人組の年長者として2人を落ち着いた目で見守っている。キイチの働くカフェのオーナーでもあり、良き助言者でもあり、ノイルの行動により2人に大きな変化が訪れるキッカケとなる。
ミズキ(男)
幼なじみ7人組の1人でもありタカラの親友でもある。タカラと同じ職場に勤めていて会社ではタカラの執事くんと呼ばれるほどタカラに甘いが、恋人であるヒノハが1番大切なのでここぞと言う時は恋人を優先する。
ユウリ(女)
幼なじみ7人組の1人。ノイルの経営するカフェで一緒に働いていてノイルの彼女。
ヒノハ(女)
幼なじみ7人組の1人。ミズキの彼女。ミズキのことが大好きで冗談半分でタカラにライバル心を抱いてるというネタで場を和ませる。
リヒト(男)
幼なじみ7人組の1人。冷静な目で幼なじみ達が恋人になっていく様子を見守ってきた。
謎の男性
街でキイチが見かけた毎日夢に出てくる後ろ姿にそっくりな男。

キミの次に愛してる
Motoki
BL
社会人×高校生。
たった1人の家族である姉の由美を亡くした浩次は、姉の結婚相手、裕文と同居を続けている。
裕文の世話になり続ける事に遠慮する浩次は、大学受験を諦めて就職しようとするが……。
姉への愛と義兄への想いに悩む、ちょっぴり切ないほのぼのBL。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
綺麗事だけでは、手に入らない
和泉奏
BL
悪魔に代償を支払えば好きな人を手に入れられるのに想いあわないと意味がないってよくある漫画の主人公は拒否するけど、俺はそんなんじゃ報われない、救われないから何が何でも手に入れるって受けの話
絵葉書 -君がくれた、この想いは…-
真田晃
青春
一通の絵葉書が届いた。
どうして。いつもは手紙なのに……
書かれた文面に胸騒ぎを覚えた俺は、顔も知らない彼に、会いに行く。
※BL要素は薄いです。
※表紙絵は、フリーイラストをお借りしております。(規約により此方に記載)
フジョッシー様『5分で感じる初恋BL』コンテスト応募作品。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる