君の優しい嘘

真田晃

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凪と一緒に、水族館を出る。
まだちゃんとした答えは貰っていない。
このまま付いていっていいのかも、よく解らない。

「………ごめん」
「……」
「きっと驚いたよね。……僕もまさか……僕が今日、水族館に来るなんて、思いもしなかったから」
「……」

凪が、おかしな事を言う。
さっき僕も、おかしな事を言ったけど。……でも、そういう事……なんだろう……

「本当の事を話すよ。……だから、ちゃんと聞いて欲しい」

並んで駅へと向かう道すがら、凪はぽつりぽつりと語り出した。




「──僕は、この世界とは違う未来から来たんだよ」

「……え」

「過去に戻るとね、それまでいた世界とは違う……別の世界に飛ばされる。
パラレルワールド……っていうのかな。同じ時間軸に無数の分岐点があって。選択してこなかった、それぞれ別の未来が存在する。
……にわかに信じがたい、絵空事だとしか思ってない人達が殆どだけどね。
その無数の世界には、創造した神にしか解けないロックが掛けられていて、簡単に往来できないようになっている。その世界の秩序を守る為に。
……でも僕は、その鍵を見つけたんだよ」

信号の手前で曲がり、凪が細い路地に入っていく。足早の凪に追いつけず、僕は小走りして追い掛ける。

「──塚原と僕はね、入学式で見かけた理央に、一目惚れしたんだ。
可憐な顔立ちながら、何処か人を寄せ付けない陰のようなものがあって。僕に似ていると感じた。仲良くなれたら、と思ったよ。
……でも、塚原は違った。
理央を虐めの対象にした。
わざと賭けに負けて、罰ゲームを利用して、理央に想いをぶつけたんだ」

「……」

「そんな理央は、深く思い詰めて……自殺した。
塚原に捨てられた本を抱えて、学校の最上階から身を投げて……」

「……」

「凄く、後悔したよ。
塚原を止めようと、何度も思ったのに。……最後まで出来なかった。
結局僕も、塚原と同じで……周りに悟られるのが、怖かったんだ。
でもその結果、大切な君を失う事になった。……取り返しのつかない事をしたと、今でも思ってる」

「……」

「この世界に来たのはね。理央に、もう一度会いたかったからなんだよ。
もしできるなら……理央を支えて、運命を変えられたらとも思った。
どれだけ理央の力になれたかは解らないけど……理央の命日、何事もなく公園のベンチに座っている姿を見た時は、嬉しかった。
……だから少し、欲が出た……」

「……」

「そろそろ、帰らなくちゃ」


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