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しおりを挟むさわさわ、さわさわ……
上空の小枝が揺れ、木葉の擦れる音が響く。
地上の夜風が頬を撫でるより先に、辺り一面に舞う──薄ピンク色の花びら。
「……綺麗」
夜空に浮かぶ満月の下、淡く蒼白い月光が降り注ぐ中、風に舞ってひらひらと散りゆく様は、何とも幻想的で。
「ああ……」
そう言って微笑む、竜一の横顔。
好きな人の隣で、同じ景色を眺める──只それだけで、充分幸せに感じる。
だけど。それだけじゃ足りない時もあるから。その時々で、この思いをちゃんと言葉にして伝えなくちゃ。
僕に触れる前に引っ込められてしまった、竜一の手。片手でそっと拾い上げて引き寄せる。
「………大好きだよ、竜一」
厚みのある、大きな手。
両手で優しく包み込めば、手のひらから陽だまりのような優しさが伝わってくる。
「宇宙一、好き」
物理的に少し空いた距離が恨めしくて。お尻を詰め、竜一に寄り掛かり、その肩にそっと頭を預ければ……手中にあった大きな手が動き、指を絡めた恋人繋ぎへと変わる。
「もう、離れたくても……離れてやらねぇからな」
ぶっきらぼうに。だけど、少しだけ照れたような竜一の声。その問いかけに、小さくこくんと頷く。
「……うん」
「俺が嫉妬深ぇの、知ってんだろ?」
「うん……」
「……覚悟、できてんだろうな」
「ん、」
「本当に、解ってんのか?」
「解ってる」
竜一をそっと見上げれば、僕を見下ろす竜一の瞳が、甘く蕩けた色をしていて。言葉以上の優しさと愛おしさが、その眼差しから溢れんばかりに伝わってくる。
「一生、俺の傍にいろよ」
「ん……」
キュッと握られる手。もう片方の竜一の手が、涙でしっとりと濡れた僕の頬を優しく包み……視界いっぱいに、竜一の顔が迫る。
そっと瞼を閉じれば、さわさわと靡く風に乗って、熱くて柔らかな唇が舞い降り……そっと唇に重ねられた。
♡Happy blooming♡
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