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しおりを挟む……どうして……
樫井とそのマネージャーが帰った後、黒革のソファにドカッと座った凌が、厚手の茶封筒をテーブルに投げる。
「……」
凌が欲しかったのは……お金、なの……?
積まれた金でいとも簡単に解決された事に、胸の中がざらつく。
『金で解決しようなんざ、卑怯なやり口やな!』……そう、言ってくれるものだと思っていたのに。
「……まぁ、そういう事や」
ショックを隠せず立ち尽くす僕を、口の片端を持ち上げた凌が鼻で笑う。
「当然です。赤の他人の貴方を救い出した上に、住む場所を与え、こうして面倒を見ているのですから」
畳み掛けるように、冷酷無慈悲な水神が口を挟む。
「それとも貴方は、朝食を作るだけのバイトで生計を立てられるとでも思っていたのですか?」
「……」
最もな事を言われ、言葉が出ない。
確かに、考えが浅はかだった。
見ず知らずの僕に何の見返り求めず、ここまで親切にしてくれる人なんて……いる筈がない。
「優しく手ぇ差し伸べたんは『金の成る木』やと見込んだからや。それ以外、助ける義理なんてあらへん。……やろ?」
「……」
「これからガンガン、稼いで貰うで!」
ソファの背に身体を預けて仰け反り、足を組んだ凌が鋭い目付きで不敵な笑みを浮かべた。
「ところで。撮影はどうしました?」
背後から近付く水神が、責めるような目つきで僕を見据える。
「まさか、また逃げ出したんですか?……本当にしようのない人ですね、貴方は」
呆れたように言い捨てながら僕の二の腕を掴み、ソファの向こうにある扉へと引っ張っていく。
「では、今……ここで撮影致しましょうか」
──ガチャ、
開かれたドアの向こうに見えたのは、セミダブルのパイプベッド。そして……撮影機材の数々。
「……ぇ」
さっきの撮影所と、同じ──いや、それよりも本格的で、その為に用意された部屋のよう。
ハンディカメラを持った男が数人、続いてバスローブ姿の男が一人、斜向かいのドアからぞろぞろと現れた。
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