14 / 56
14.溶けて、…沈む
しおりを挟む×××
凌のマンションに立ち寄ってから、アパートに帰る。と、玄関ドアの前に黒スーツ姿の水神が立っていた。
僕に気付くなり、銀淵眼鏡の奥に潜む切れ長の眼が鋭く尖る。
「……昨日、森崎とお会いしたそうですね」
そう言いながら、水神の身体が僕の方へと向けられる。
「しかし貴方は、採用を告げられた途端、それを無下に断ったとか」
能面のように表情のない顔。感情を持たないAIのような話し方。
瞬きもせず、僕をじっと見つめるその冷めた眼球でさえも、人工物のよう。
「お会いする、という事が、どんな意味を孕んでいるのかご存知ないのですか?
貴方は少なからず、芸能界に興味をお持ちになっていた。そんな貴方の為に、忙しい森崎が時間を割いてお会いになったのです」
「……」
「ひとつの作品を作り上げる為には、沢山の人と金が動きます。より良いものにする為に。勿論、納入期限を守る為に。
……これは、遊びではないのです。
貴方の単なる気まぐれひとつで、プロデューサーの森崎を振り回し、制作に関わる全ての方々に多大な迷惑を掛けたのです」
「……」
「解りますか?」
淡々と捲し立てる水神。
スラスラと口から発せられる声は、無機質で薄っぺらいもののように感じるのに。その言葉が、ズシンッと心に重くのしかかる。
「……」
……そん、な……
僕が、アゲハへの反抗意識を持ってしまったから。……だから、多くの人達に迷惑を掛けてしまったなんて……
罪悪感に苛まれながら俯くと、水神は容赦のない言葉を更に投げつける。
「もし貴方に、少しでも罪悪感というものがあるのだとしたら……これからその責任をとって頂きます」
「……!」
……責任……?
不安と心細さから水神を見上げれば、蒼白い三日月のような冷たい眼が僕を見下げていた。
「……至極簡単な事ですよ。
今夜、とあるホテルの一室で、森崎主催のパーティが開かれます。
今からそこに、貴方一人で出席して貰います」
そう言い切った水神の唇が、それまで見たことの無い……綺麗な弧を描いた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる