捕食する者 される者

真田晃

文字の大きさ
上 下
16 / 19

16.足、開け

しおりを挟む


──ゾクッ


全身で感じる、恐怖。
総毛立つ……という表現がよく似合う。

逃れようのないこの体勢で、どうやって逃げたらいいというのか……


「心桜。……足、開け」


命令しながら、兄が僕の膝を立てて左右に押し広げる。
そしてそのまま膝裏に手を掛け、軽々と持ち上げた。


「………、」

いつの間に脱いだのだろう。
膝立ちをした兄の下半身は完全に剥き出され、その中心にあるモノが太く反り勃ち、ねっとりと濡れててらてらと赤黒く光っている。

静かに息づくそれは、兄自身とはまるで別の生き物──ドクドクと脈打ち、尖端にある口から涎を垂らしていて……


「──!!」


いやだ、……

本能的に足をバタつかせれば、兄の鎖骨辺りを強く蹴っていた。
その衝動にハッと我に返れば、視界に映ったのは──みるみるしかめっ面に変わる、兄の表情。


「………ッ、」


──怖い。
怖い……
次に来るであろう、報復が──

だけど今は、そんな悠長な事を言ってられない。
素早く手足を動かしてうつ伏せになり、床を這いつくばりながら必死に逃げようともがく。


「………てめぇ、!」


ガッ……、

片側の足首を掴まれ、ずりずりと引き摺り戻される。
大きな手が僕の髪を鷲掴み、ガンガンッ、と容赦なく床に顔面を二度叩きつける。


「………っ、!」


息が、止まる──
鼻の奥に鈍い痛みがし、生温かなものが滲み広がっていく。
それはすぐに二つの穴からドロリと垂れ流れ、ぽたぽたぽた…と床に滴り落ち、歪な赤い水玉模様を作る。


「……ぅ、う″っ、」

床に粘着する、鮮血──
咄嗟に片手で鼻を抑えるものの、その余裕さえも兄は許してくれない。
両手で僕の腰骨辺りを引っ掴み、乱暴に仰向けへとひっくり返す。


「……チッ。少しは手加減してやろうと思ったのによ。
バカにしやがって。……クソッ」

鋭く尖った双眸。
遠目でも解る血走った眼。
その縁まで赤くなる程怒りに満ち──もう逃れられないのだと悟る。


………はぁ、はぁ、

萎縮し、震える身体。
身体を横に向け、膝を折り畳み、背中を丸めながら兄を見上げる。


……い、いやだ……
やめて………怖い……


怖い──



見下げた兄の黒い眼が──僕の顔、首筋、脇腹、そして平たい尻の間へ……ゆっくりと舐めるように動く。

「……クソ……
あの変態野郎に、簡単に許しやがって……」

吐き捨てるように呟いた後、両手が伸び、僕のシャツを引っ掴かんで手荒く脱がす。

その服を近くの床に投げ捨てた兄は、脅えきった僕の二の腕を摑み、上から強く押さえつけた。



はぁ、はぁ、はぁ………


「………心桜。ヤらせろ……」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

禁断の祈祷室

土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。 アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。 それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。 救済のために神は神官を抱くのか。 それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。 神×神官の許された神秘的な夜の話。 ※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

処理中です...