2 / 19
2.夕食
しおりを挟む「……チャーハンか」
二階から下りてきた兄が、ダイニングテーブルに並ぶ夕食を見下げながら呟く。
僕が作ったチャーハン。それから、インスタントの中華スープ。
「うん……」
「美味そうだな」
「……」
何となく、気まずい。
ドカッと椅子に座った兄は、何食わぬ顔でスプーンを手に取ると、チャーハンを掬って食べ始める。
いつもと同じ。何ら変わりはない。
「さっき母さんから連絡あったぞ。
……親父からもな。もう少し遅くなるから、帰りは深夜になるってよ」
「……」
……え……
その言葉に、一瞬で血の気が引く。
チラリと壁に掛かった時計を見れば、夜の七時を回った所だった。
じゃあ、あと約五時間……このまま兄と一緒なのか……
「お前、この後出掛ける予定とかあんのか?」
掬ったチャーハンを口に放り込みながら、いつもの表情、いつものトーンで僕に話し掛けてくる。
さっきまで、あんな動画を見て僕をオカズにしていたというのに……
「……別に……」
「別にって、何処も予定ねぇのか?……真面目だねぇ。
今夜は両親の帰りが遅くなる事ぐれぇ、薄々感じてたんだろ?」
「……」
……そうだ。
両親は今日、結婚記念日だとか何とか言って、日帰りの温泉旅行に出掛けていった。
でも、夕飯頃には帰ってくるって言ってたから……まさか、こんなに遅くなるなんて、思ってもみなくて……
ああもう。
だったら尚更。何でさっきあんな光景を見ちゃったんだよ……
「そういう兄貴こそ、どっか出掛けたりしないの?」
「どっか、行って欲しいか?」
「………」
言葉に詰まらせると、兄がニヤリと冷たく笑う。
……できる事なら、どっか行ってて欲しい。
でもそんな事、口が裂けても言えないけど。
とにかく、今夜一晩だけでも、兄とはこれ以上接触したくない。
関わりたくない。
早くご飯食べて、ツ○ヤにでも行って時間潰してこようかな。
そんな事を考えながら、急いでチャーハンを掻き込む。
「……そういやお前、付き合ってる彼女とは、どうなんだよ」
兄が目を伏せ、チャーハンをスプーンいっぱいに掬う。
噛まずに飲んでるのか……この数分で、皿いっぱいにあったそれが、もう半分まで減っていた。
「……」
──彼女。
僕が男に抱かれるゲイだって、もう知ってる癖に……
「浮気されたから、こっちから別れた」
「……浮気……? なんだお前、浮気されたのか……?」
「……うん」
唇をキュッと引き結び、兄から視線を横に逸らす。
すると兄は、スプーンを動かす手を止め、突然吹き出した。
「──ははっ、マジかよ!」
「……」
「ダッセぇな、お前!」
10
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説


イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる