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「俺の気持ちを知ってて、どうしてこんなっ……!!」

もう片方の二の腕を掴まれ、ブルドーザーに押し出される土砂の如く部屋の奥へと後退る。……と、ベッド端に躓き、勢いよく背中から倒れる。
柔らかく跳ね上がったものの、脳振盪のうしんとうを起こしたかのように脳内が大きく揺さぶられて、……気持ち悪い。

「どうしてさくらは、俺を受け入れようとはしてくれないんだっ。
こんなに、こんなに好きなのにッ──好きなのに。……何で俺から逃げようとばかりするんだよッ……、!!」


──ハァ、ハァ、ハァ、ハァ

両手首を乱暴に掴み上げられ、片手で纏めて頭上辺りに沈められる。
……押さえ付けられた所が、痛い。

「……」

軽く眩暈がする中、薄く瞼を持ち上げれば……荒い息を繰り返しながら、思い詰めたような二つの眼が僕を見下ろしていた。

「海に行って何してた。ソイツに、何処まで許したんだよッ」
「……」
「俺は、毎日毎日毎日……、気が狂いそうな程、我慢してるっていうのにッッ、……!」

パーカーのジッパーに、ハルオの指が掛かる。引っ掛かりながらも急くように引っ下げて解き、左右に割り開く。曝かれる、中学校の制服。喉元の白シャツボタンを片手で乱暴に引き千切り、浮き出た鎖骨から首筋にかけて貪り付く。


「……いいよね、一回ぐらい。
彼氏ハイジ以外のヤツにも、許したんだからさ」

「──っ、!!」


まさか──レイプの事を、言ってるの……?!

信じられない台詞に、悪寒が走る。胸の奥を抉り取られたように……苦しい。


「……、ゃだ」


拘束された腕に力を入れ、身体を捩りながら逃れようと何度も藻掻く。

さっきまで、ハルオに対して多少なりとも罪悪感を抱いていたのに。
ずっと悩んでて……馬鹿みたいだ……

涙が溢れ、視界が歪む。


「これ以上、俺を拒絶するなッ、……!」


──ガリッ、

首の付け根に、立てた歯が食い込まれる。


「……ぃ″あぁ″っ、!」


鋭く突き抜ける痛み。
その瞬間──脳裏に火花が散り、全身が戦慄き、あの忌まわしい記憶が否応なく蘇って僕を襲う。



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