上 下
18 / 49

18.

しおりを挟む



×××



夢……だったんだろうか。

そう錯覚してしまう程、ハルオの態度はいつもと変わらない。
ただ──


「……おはよう。さくら」

寝室から顔を出した僕に、柔やかな表情を浮かべて声を掛けてくる。
ハルオが作ったんだろうか。運んできたワンプレート朝食を二皿、ガラステーブルに並べていた。

「丁度良かった。今、起こそうと思っていた所だよ」
「……」

大きめの白い皿に積み重なるようにして盛られた、半切りのフレンチトースト。彩り良く添えられているのは、フリルレタスにダイス状にカットしたトマト。円柱形の硝子容器に入った、8等分のスライスキウイとベリーソースの掛かったヨーグルト。
レストランで出てきそうな程お洒落な朝食に、驚きを隠せない。

「顔洗っておいで」
「……、うん」

優しげな声に戸惑いつつ、洗面所へと足を向けた。






カチャ、カチャン……
ナイフとフォークを持ち、ハルオが器用にフレンチトーストを一口サイズに切る。

「……」

こんなお洒落な朝食なんて、初めてかもしれない。
まだ少しぼんやりとする頭で、ナイフとフォークを持つ。

「どうかな。口に合うといいんだけど」

咀嚼そしゃくしながら、柔やかな笑顔を向けるハルオ。

「……」

一見すると、何処にでもいそうな優しい雰囲気のお兄さん。だけど……
過激なシチュエーションのAV動画。その中に映る人物が、ハルオに似ていて──

「今日、二人で出掛けようって約束していたけどさ。……止めにしないか?」
「……ぇ」

柔やかな表情を浮かべたハルオが、思ってもみない台詞を吐く。

「……」

……そうだ。確か、そんな事を以前言っていたっけ。
僕にお礼がしたいから、服を買ってあげる……とか何とか。

「……うん」
「その代わり。今日一日、さくらは家でのんびりしてくれていいから」

……え、どういう事……?
ハルオに用事が出来たからだとばかり思ってた。

まさか。今日一日この部屋で、ハルオと二人きり……?

「……」

集団レイプに遭った後の三日間とは、状況が全然違う。
あの時の僕は、ハルオの事まで頭が回っていなかったし、ハルオも腫れ物に触るかのような扱いをしていて、そこまで苦痛には感じなかった。

「実はね。さくらと一緒に観たいと思っていた映画があるんだよ」
「……ぇ……」

僕の心境などお構いなしに、ハルオが今日のスケジュールを口にする。
その表情は、今までとは違い生き生きとして見えた。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

あのDVDのように

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:31

どうしょういむ

BL / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:394

浮気用会話代行サービス

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:1

リオ・プレンダーガストはラスボスである

BL / 連載中 24h.ポイント:31,773pt お気に入り:1,829

妻子持ちの男が学生にレ…プされる話

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:19

君は魔法使い

BL / 完結 24h.ポイント:1,498pt お気に入り:40

逆月 - SAKAZUKI

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:1

シロクロさんの乳首時間

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:33

―レイプされたあの日から―

青春 / 完結 24h.ポイント:255pt お気に入り:11

処理中です...