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しおりを挟むいつだって波は穏やかで、月は淡く海を照らし──
お互い、触れ合える時が来るのを望んで待っている。
「それから葵の事が気になって。
気付いたら、葵の事ばかり考えてた。
こんな繊細な葵を『英雄が残した子』だと神格化されて。
追い詰められて苦しんでる葵の姿を見ていたら……
……俺が守ってやりたいって、そう思う様になってた」
祐輔……
そんな風に、思っててくれてたの……?
祐輔の告白に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
間近で瞳が合えば、もう……離れられない。
三日月の如く弧を描く、祐輔の唇。
僕の髪をゆっくりと撫で梳く指が……優しくて、温かくて、心地良い──
そんな、切なくもふわふわとした幸せを感じながら……島民の期待に応えられなかった重責を感じていた。
「なに、考えてるんだよ」
「……え」
「あまり……気にすんなって言ったろ」
祐輔の真っ直ぐな瞳が、僕の心の奥底まで見透かす。
「お前が抱えてるもんは、全部俺が引き受けてやる。
だから葵は……俺の番になって、俺の子を産んで。
俺の隣で笑ってくれれば、それでいいから」
「………うん」
月明かりが、祐輔の輪郭の影を濃くする。目尻に近い白目の部分に、蒼白い光が宿り……穏やかで切ない色を僕に見せる。
……好きだよ、祐輔……
もし祐輔が運命の番なら、どんなに良いだろう。
首筋の噛み跡は、番の証にはならなかったけど……
……いつか、きっと……
下瞼の縁を、祐輔の親指が柔く滑る。そうされて初めて、涙が零れていた事に気付いた。
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