9 / 11
9
しおりを挟むドーン…!
花火の音はしても、鬱蒼とした木々のせいで、その姿は見えない。
昴生を殴った大地は、階段から突き落とす様に彼を追い出した後、僕の所へ戻って隣に座る。
起き上がって膝を折り畳むと
脚の間からトロトロと白濁液が零れ、浴衣を汚していく。
「花火、見えねぇな」
「……」
「玲央が調べてたここ、穴場だったのは五年も前みてぇだしな」
そう言って大地がスマホを取り出し、画面を見せる。
「……玲央の事だから
ふて腐れて一人で見てんじゃねぇかと思ってよ。
検索履歴見て、片っ端から回ってたら、……遅くなっちまった……」
そう言うと、大地が此方に顔を向け、何か言いたげな、顔を強張らせた様な表情を見せる。
が、直ぐに軽い溜め息と共に顔を緩め、僕に横顔を見せた。
「……」
「…玲央、あの写真の事だけど…」
その言葉に、びくんっと肩が小さく跳ねる。
半裸の女性が脳裏に浮かび、僕に勝ち誇った様な表情を見せる。
「知り合いのつてで、やっと貰った写真の仕事が……AV関係でよ……」
襟足を掻きながら、ばつが悪そうな顔をちらりと此方に向けた。
「それ知ったら、玲央が怒ると思って……悪ぃ、ずっと黙ってて」
「………」
……浮気じゃ、なかった……
そう安堵はするものの、仕事とはいえやはり気持ちのいいものではない。
「……ばか、許さない」
両膝を立て抱えると、くるりと大地に背中を向ける。
「僕よりAVの女の子の方が、魅力的なんだ……大地は……」
背中を丸め、拗ねたように言葉を吐く。
と、その時……ふわりと煙草の匂いがし、次いで温もりが僕を背後から包んだ。
「……そうかもな。
写真家として名声を上げるチャンスを、玲央の為にみすみす逃してきたんだからな……」
「……え……」
大地の言葉に、胸がずくん、と痛む。
”今回は外せない、大事なカメラの仕事なんだよ“
……僕のせいで……大地……
そんな大事な……
ズキズキとした胸の痛みが僕を責める。
僕のせいで、大地の人生を狂わせてしまったのかと思うと、胸が押し潰される様に、苦しい…
「……悪ぃ、嫌な言い方した……
話蹴ってきたんだよ……その、
……玲央の方が、大事だからな」
「……」
それなのに、僕は……
欲しい言葉をくれた大地に、今は、申し訳なさばかりが募っていく。
僕は……何も……
ゆっくり振り返る。
そして大地の優しい瞳と視線がぶつかり
小さく唇を動かした。
「だい……」
「……玲央、ごめん。
淋しい思いや怖い思い、させちまって……」
僕を引き寄せ、厚い胸板にすっぽりと収めると
ぎゅっと強く抱き締めた。
10
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。


BL団地妻on vacation
夕凪
BL
BL団地妻第二弾。
団地妻の芦屋夫夫が団地を飛び出し、南の島でチョメチョメしてるお話です。
頭を空っぽにして薄目で読むぐらいがちょうどいいお話だと思います。
なんでも許せる人向けです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる