2 / 11
2
しおりを挟む
ミーンミンミン…
直線的で、じりじりと焼け付くような暑い日差しが肌を刺す。
真っ青な空を支配する、綿飴のような入道雲。
朝から晩まで、その存在感を示す蝉の声。
……大地、気に入ってくれるかな……
待ちに待った花火大会当日。
僕は浴衣を身に纏い、慣れない下駄を履いて、大地の住むアパートへと向かった。
「……悪い、急な仕事が入った」
玄関のドアが開かれるなり、大地が申し訳無さそうな顔を出す。
その言葉を聞いた瞬間、それまで高まっていた気持ちが一気に落ちる。
「……え」
「今回は外せない、大事なカメラの仕事なんだよ」
すっかり身支度を済ませた大地は、玄関に置かれたバックを背負った。
……大事な、って……
僕よりも…そんなにカメラが大事……?
浴衣の袖口を掴むと、唇を尖らせて俯く。
「……そんなに大事なら
早く行っちゃえ、…ばか……」
少し震えた声でそう言い放つと、溢れ零れそうになる涙に堪える。
そんな僕の頭に、大地の大きな手のひらがぽんと置かれる。
「拗ねるなよ……直ぐ帰るから」
「……」
「じゃ、行ってくる」
ぽんぽんとした後、僕の横を通り過ぎ、大地の手が離れた。
……やだ、行かないで……
下瞼の縁に溜まった涙が溢れ、ぽろりと零れ落ちる。
「……ばか……」
大地の為に、…浴衣着て
穴場まで、調べたのに……
下駄を脱ぎ、誰もいない部屋へと上がる。
「……」
……直ぐって、何時……なんだよ…
大地のいない部屋は、凄く静かで…何だか寂しい。
台所のシンク内に、水を張ったコップがひとつ。
余程急いでいたのだろう……蛇口からぽたぽたと水が垂れている。
それをキュッと締めると、和室のリビングへと振り返った。
小さなローテーブル。
その上に、A4サイズの茶封筒。
畳に足を踏み入れそこに近付くと、その封筒を拾い上げる。
……忘れもの……?
糊付けされていない封を開け
中を覗いて見る。
直線的で、じりじりと焼け付くような暑い日差しが肌を刺す。
真っ青な空を支配する、綿飴のような入道雲。
朝から晩まで、その存在感を示す蝉の声。
……大地、気に入ってくれるかな……
待ちに待った花火大会当日。
僕は浴衣を身に纏い、慣れない下駄を履いて、大地の住むアパートへと向かった。
「……悪い、急な仕事が入った」
玄関のドアが開かれるなり、大地が申し訳無さそうな顔を出す。
その言葉を聞いた瞬間、それまで高まっていた気持ちが一気に落ちる。
「……え」
「今回は外せない、大事なカメラの仕事なんだよ」
すっかり身支度を済ませた大地は、玄関に置かれたバックを背負った。
……大事な、って……
僕よりも…そんなにカメラが大事……?
浴衣の袖口を掴むと、唇を尖らせて俯く。
「……そんなに大事なら
早く行っちゃえ、…ばか……」
少し震えた声でそう言い放つと、溢れ零れそうになる涙に堪える。
そんな僕の頭に、大地の大きな手のひらがぽんと置かれる。
「拗ねるなよ……直ぐ帰るから」
「……」
「じゃ、行ってくる」
ぽんぽんとした後、僕の横を通り過ぎ、大地の手が離れた。
……やだ、行かないで……
下瞼の縁に溜まった涙が溢れ、ぽろりと零れ落ちる。
「……ばか……」
大地の為に、…浴衣着て
穴場まで、調べたのに……
下駄を脱ぎ、誰もいない部屋へと上がる。
「……」
……直ぐって、何時……なんだよ…
大地のいない部屋は、凄く静かで…何だか寂しい。
台所のシンク内に、水を張ったコップがひとつ。
余程急いでいたのだろう……蛇口からぽたぽたと水が垂れている。
それをキュッと締めると、和室のリビングへと振り返った。
小さなローテーブル。
その上に、A4サイズの茶封筒。
畳に足を踏み入れそこに近付くと、その封筒を拾い上げる。
……忘れもの……?
糊付けされていない封を開け
中を覗いて見る。
10
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
BL団地妻on vacation
夕凪
BL
BL団地妻第二弾。
団地妻の芦屋夫夫が団地を飛び出し、南の島でチョメチョメしてるお話です。
頭を空っぽにして薄目で読むぐらいがちょうどいいお話だと思います。
なんでも許せる人向けです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる