飼い殺しの犬

真田晃

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別荘に戻ると、早速酒のつまみと夕食作りに取り掛かる。
柚希は料理の手際が良く、次々と美味しそうな料理が出来上がっていく。


日暮れ頃、ゾロゾロとやってくる先輩達。

「わー、凄ーい!」
「美味しそう!」
「……だろぉー?」

金髪の派手な女性二人が、予め出されていた料理に感嘆すれば、強化メンバーの一人、木下先輩が自慢気に答える。

「ていうか、あの娘は?」
「あー、柚希ね。あいつは只の飯炊き女」
「アハハ、何それぇ!!」

先輩の返しに、彼女達が手を叩いて笑う。
二人は、先輩達に誘われてここのシャワーを借りに来た……らしい。
つまりは、ナンパされてお持ち帰りされたって事。

臍出しキャミソールから露出した、小麦色の肌。潮と化粧と日焼け止めクリームの交じった匂い。
胸の谷間が強調され、その奥には、日焼けしていない柔肌がチラリと見える。

畳の上のローテーブル。……というより、民宿の広間やお婆ちゃん家にありそうな、古臭い長テーブル。
その上に、柚希が拵えたお洒落な料理が次々と運ばれる。

女性二人を真ん中に座らせ、サークル幹部である渡瀬先輩と木下先輩がその両隣に座る。
スケベ心丸出しで、密着するように。
他の幹部候補四人はその正面に座り、バカ騒ぎをして場を盛り上げる。

結局、場所とシチュエーションが変わっただけで、いつもと何ら変わらない飲みサー。
台所脇に立つ柚希は、静かにその光景を眺めていた。



次々と空になっていく、酎ハイや缶ビール。

「おい、柚木。お前酒買ってこい!」

酔っぱらった渡瀬先輩が、僕に命を下す。
チラリと柚希を見れば、僕の視線に気付いて笑顔を返す。

「……私は、大丈夫だから」

下げた食器を洗う柚希。
一人残して置くのは少し、いやかなり心配だった。
……だけど、先輩達が狙っているのは、連れ込んだあの女性二人。

「………解った。気をつけて」
「はは。それ私の台詞」

柚希が屈託のない笑顔を返す。


……だけどまさか、この笑顔を見るのが最後になるとは……思ってもみなかった……



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