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エピローグ 夢幻の梅雨
二度と、離さない
しおりを挟む車から降り、一面敷き詰められた玉砂利の上を歩く。
さわさわと木の葉が擦れる音に混じり、じゃく、じゃく……と、踏み締める音が鳴り響く。
道中には、赤い前掛けと帽子を被った、五体連なるお地蔵様。木陰には、朝露に濡れた苔やシダ植物。
時折吹く風が、ここだけ少し違う空気を運び、僕達を優しく包む。
「今日、晴れていてよかったね」
樹さんが、雲ひとつない青空を仰ぐ。
──ずっと……雨の日が、嫌いだった。
雨が降る日は、僕にとって嫌な事が起こるから。
だけど。
雨の中に、何となく大空の気配を感じてから……いつの間にか、そんなに嫌じゃなくなってた。
この先、どんな事があっても──
しとしとと降る雨の日も、実雨というこの名前も………好きになれそうな気がする。
だからもう──
「………雨が降ってても、平気だよ」
木漏れ日の中、隣にいる樹さんの左手をそっと掴む。
その左手薬指には、木漏れ日に当たって優しく光る、僕とのペアリング。
柔らかな白金色に輝くそれは、まるで樹さんと僕との未来を煌めかせてるようで……
「………行こうか」
「うん……」
その手が、僕の手をしっかりと握り締める。
……もう二度と、離さないように。
END
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