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エピローグ 夢幻の梅雨

大空…!?

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薄瞼を通して感じる、柔らかな太陽の光。

瞼をゆっくりと持ち上げれば、パアッと辺りが開け、とても明るく爽やかな青空が目に飛び込む。


「………着いたよ」
「……」

声のする方へと視線を向ければ、そこには少し呆れたように微笑む樹さんが。

「……また、大空の夢でも見た?」
「………え……」

微睡む脳内に、ぼんやりと浮かんだのは、夢に出てきたお兄さん………


──大空そら……!?


ぱちんと瞼が全て上がり、一気に目が冴える。


……そうだ、大空だ──

僕が、放課後の教室に居残っていた時に現れた……大空の幻影と、同じ姿……


「……」

──でも。
小さい頃の記憶なんて、とても曖昧で不確かなもので。
確かにあの時──母に置いて行かれて泣いていた僕に、近所に住んでいたんだろうお兄さんが、優しく声を掛けてくれた記憶がぼんやり残っている。
だけど、その人の顔も、声も、交わした会話も……ハッキリとなんて、覚えてない……

……だから、もしかしたら……
大空の事を考えていたせいで、幼い頃に声を掛けてくれたお兄さんと、教室で会った大空の幻影との記憶が、勝手に結び付いて……自分でも気付かないうちに、心の奥底で思い描いていた願望が、夢となって現れたのかもしれない──


「………うん。凄く、不思議な夢」


でも、もし……
こんな非科学的な事なんて、あるのか解らないけど……

……もし本当に、あの時の大空が、時空を越えて、幼い僕の所へ飛んでいったのだとしたら──


『一生懸命追い掛けて来てくれて、……「大好き」って叫んでくれたしな』


──あの時の言葉は、ちゃんと大空に届いていたのかもしれない……


「………」

そう思ったら、胸の奥が熱くなり……
そこにそっと仕舞っておいた、大空への想いが……ゆっくりと溶けていくような気がした。


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