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第四章 永遠の凍雨

険しい横顔

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お風呂も朝食も早々に済ませ、荷物を纏めて旅館を後にする。
観光しながら帰る予定だったけど、今はそんな悠長な事など言っていられない。
あの後自宅に電話したものの、何度掛けても繋がらなくて。結局、樹さんが僕の家まで行き、直接父に事情を話してくれる事に。


「……」

車窓の外を眺めれば、しとしとと細い雨が降り続いている。辺りの景色は白っぽくぼやけて、あの日の事を嫌でも思い出してしまう。
せめて今日くらい、良い日になれば良かったのに──

「………ごめんなさい」

初めての旅行が、こんな形で終わってしまって……

「実雨が謝る必要はないよ」
「………でも」
「軽率だった僕のせいだ。……もう少し、実雨の立場やご家族の気持ちを配慮すべきだった」
「……」

そんなの……おかしい。
樹さんこそ、何にも悪くなんかないのに。
……だって、泊まりで温泉旅行に行きたいって言ったのも、父の了承を得たと嘘をついたのも、僕なんだから。
それに──

「……父は、僕に興味がないから……」

そう呟いた後、チラリと視線を樹さんに移す。

「……」

無反応な横顔。
躊躇いながらも、また直ぐに車窓へと視線を戻す。

窓ガラスに薄らと映る、自身の顔。その向こう側にある、雨に打たれてできた沢山の水滴が、風に煽られながら流されていく。


「……物心ついた時からね、僕と母は、ずっと父から避けられてたの。
仕事柄家にいる事も多かったけど、殆ど部屋に籠もりっきりで。家族で出掛けた事も、一緒に食卓を囲む事も無くて。
淋しかったけど、仕事だから仕方ないんだって思ってた」
「……」
「……でも。母が出て行ってから……父の様子が少し変わって──」


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