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第四章 永遠の凍雨

燻った心

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ロープウェイ乗り場から車で下り、別の山間へと続く道を上っていった場所にある、小さな温泉街。
その外れ……自然に囲まれ、ひっそりと佇む、情緒溢れる小さな宿。
出迎えてくれたのは、品のある和装の女将。二階の部屋を案内され、簡単に挨拶を交わした後、タイミング良くはける。


「お茶でも飲んで、少し休もうか」

湯飲み茶碗を拾って並べ、樹さんが急須にポットの湯を注ぐ。
木皿にある個装したお茶請け。時代を感じる部屋の作り。畳の匂い。そこに、微かなお茶の匂いが混じる。

「……」

多分、まだ引き摺ってる。
樹さんから話を聞いてから、何となく感じていたモヤモヤが強くなってる。

……どうしよう。全然拭えない。
樹さんは多分、こうなるって解ってたから……自分の中に仕舞って、隠そうとしてくれていたのかもしれないのに。

「ここの温泉は、露天風呂しかないみたいだね」
「……」
「貸切は予約を入れなくても、空いてたら好きに使っていいそうだから……」
「……」
「タイミング良く、入れたらいいね」

上手く反応できない僕に、樹さんは変わらず優しい声で話し掛けてくれる。

「………うん」

だけど僕は、樹さんみたいに上手く笑えない。



ひと息ついた後、部屋に用意されていた浴衣を持って、一階の湯場へと向かう。
一つは女性専用。一つは貸切露天。
もう一つは混浴の大露天風呂。

「貸切、空いてるみたいだよ」
「……」
「入ろうか」
「………え」

………貸切。
ぼんやりとしていた頭の中が、突然クリアになる。
その途端、トクンッと心臓が高鳴り、身体に緊張が走る。
温泉宿に一泊する事が決まってから、そういうのを全く想像しなかった訳じゃない。
……けど……

「うん……」

こんなもやもやした気持ちのままで、いいのかな。
このまま二人きりで、温泉に入ったりしても……


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