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第三章 虚ろいの秋雨

再会

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《急用が入って、行けなくなってしまいました》
《また後で、会おうね》

携帯の画面に表示された、ミキさんからのメッセージ。

「……」

期待と緊張で高まっていた分、その落胆は大きくて。
樹さんらしくない淡々とした文に、一抹の不安が過る。

〈わかりました〉
〈また、会えるのを楽しみにしています〉

深い溜め息をつき、片手で胸元を押さえる。
緊張の糸が切れたせいか。落胆の中にほっとした気持ちが入り混じっている事に気付く。

「……」




店を出て、来た道を戻る。
その足取りは重く。やっぱり会いたかった、という気持ちばかりが大きく膨らんでいく。

街の喧騒と眩いネオン。
今の僕には居心地が悪く。それらを避けるように、裏道へと逸れる。
表通りから一本入っただけなのに。その煌びやかさとは随分とかけ離れた暗い道で。心なしか、気温まで下がったように感じた。
ぽつぽつと並ぶ小さな外灯。閑散としたシャッター通り。
その侘しい雰囲気が、かえって僕の心を落ち着かせてくれた。


「……こんばんは」

少し歩いた所で、突然声を掛けられる。
驚いて見れば、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべた男が、僕の隣に貼りついていた。

「アメくん、だよね」
「……え、」

どうして……その名前……

驚きと恐怖から、足が竦んで立ち止まる。
その一瞬の隙をつき、僕の正面に回り込んだ男が、ニヤニヤと嫌な目付きで僕を上から下から値踏みする。

「………やっぱり、可愛いなぁ」
「……」
「ミキって、僕の事だよ」

……え……
何を、言ってるの……
この人は、ミキさんなんかじゃ、ないのに。
困惑する僕に、男が携帯を取り出し、その画面を掲げて見せる。

「“また後で会おうね”、って送ったら、落ち込みながらも、“会いたい”って返してくれたよね。
……だから、会いに来たんだよ。
ずっと見てたよ。店の外から、健気に反応する君の姿を。
……本当に、可愛いなぁ」
「……」

気持ち悪い声でくつくつと笑いながら、男がゆっくりと近付く。
声も出ず、身体が硬直して動けない。
逃げなきゃなのに。そんなの、解ってるのに……
まるで蛇に睨まれた蛙のように、脅えながら男を見上げれば、大人しく言うことを聞くと思ったのか。容赦なく男の手が伸びる。

「じゃあ、行こうか」

「──行くって、どこ?」

すぐ背後から聞こえた、男の声。
驚いて振り返れば、そこにいたのは、ラフな格好をした───魁斗かいと


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