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第二章 激情の通り雨

愛してる

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───え。


どうして。
……なんで、今、言うの……?


やっと、今井くんの気持ちに気付いたのに。
今井くんの心に、触れられたと思ったのに。


これから先──今井くんと付き合っていくうちに、今より距離が近くなっていくんだろうなって……
そう、思ってたのに……


「………ゃ、」

やだ。
なんで。
今、突き放さないで。
もっと、僕の傍にいて──


「……」

今井くんを見つめたまま、言葉にならない思いを視線でぶつける。
その瞳から、熱い涙が零れ落ち……頬に一筋の跡を残す。


「……泣くなよ」

涙で濡れた頬を、拭ってくれる。
その優しくて、脅える指先で……


「実雨」

僕を抱き締め、切ない声で僕の名を口にする。
その手が、温もりが、胸が………苦しい。

「今まで、大事にしてやれなくてごめん」
「──、」

目をきゅっと瞑り、小さく頭を横に振る。

こんな事なら……
もっと早く、気付けば良かった。
もっと早く向き合って、色んな話をして、もっと深く……踏み込めば良かった。

そしたらきっと……
今井くんを、傷付けたりしなかったのに。
好きになっていたかもしれないのに。

壊れそうなこの関係を、繋ぎ止められたかもしれないのに………


「幸せになってくれ」
「………」
「お願いだ」

肝心の声が、中々出てこない。
何度も頭を横に振るのに。今井くんは、聞き入れてくれなくて──


「愛してる」


両手で頬を包まれ、額と額を合わせる。
そして、最初よりも強く、押し当てられる──唇。





雨が止んだのか。
窓から、眩しい程の日射しが射し込む。


激しい雨の下で起こった出来事は、
僕と今井くんの運命を変え、またいつもの日常へと返す。


眩い程に、煌めく雨雫を残して──




そして。

あんなに暑くて、激しくて

長かった夏が───終わった。





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