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第二章 激情の通り雨

溺れる

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……はぁ、はぁ……



息が、苦しい……

空気中の湿気が肺に取り込まれる度に、溺れたようにもがく。
顎を天に突き上げ、片手を高く伸ばし、遙か彼方にある水面を求め……

僕は、息継ぎをした──



「………実雨……みう……っ、はぁ……」

腿の上に跨がった僕の腰を掴み、浮き上がろうとする僕を底へと引き戻す。
その度に下から突き上げられ……淫らに揺さぶられる身体。


……苦しい。

汗ばんだ、剥き出しの柔肌──その胸元に這われる熱い舌。
硬く膨らんだ小さな尖りを探し当てられれば、甘い果実を貪るかのように甘噛みされ、舌先で何度も舐られる。


「……はぁ、ハァ、……みう……!」


──ズンッ

奥深くに打ち込まれる、大きく反り返った楔。
僕を、この水の底に縛りつけるつもりなんだろう……

腰を掴む手が僕の背中へとまわり、ぶるぶると快感に震えながら僕を捕らえ……離さない。


──はぁ、はぁ、はぁ、


苦しそうな息づかい。
お互いの汗が混ざり合い、肌が触れ合う程に濡れて………


「……ヤベぇ……も、イく……っ、」

「………ん、…」


飽和状態の中。
息が苦しくて。溺れそうで。
何度も何度も……水面を求めて背を反らし、顎を突き上げる……


「……ぁあっ、」


身体なら、あげる。
……だから、心までは───どうか……奪わないで。


「──みぅ……っ、!!」

激しい律動の末に、放たれる欲望。
沈められる身体。
痛みを感じながら、空っぽになっていく心。

「……」

その全てを手放して……
大空のもとへ……飛んでいけたら………いい、のに…………





「ほら……」

ぼんやりとする僕の目の前に現れたのは、ペットボトルのミネラルウォーター。
それを受け取り、視界に映る腕を目で辿りながら視線を上げる。

大空が亡くなって。樹さんと別れて。
放心状態だった僕を支えてくれたのが、今、目の前にいる──今井だった。

裸のままミネラルウォーターをがぶ飲みする今井は、首に掛かったスポーツタオルで、汗で濡れた額や首元を雑に拭う。

「……」


………どうして、こうなっちゃったんだろう………


ミーンミンミン……

全開の窓から容赦なく入り込んでくる、蝉の声響。
僕の体をもつんざき、思考回路をどんどん奪って麻痺させていく……

一糸纏わぬ姿のまま、床にぺたんと尻をつき、ペットボトルを握り締め……また、俯く。
顎先に伝っていく、じっとりした汗。


「……実雨」

穏やかな声が隣で聞こえ、ハッとして顔を上げれば……傍らに腰を下ろし、床に片手を付いた今井の唇が、すぐそこまで迫っていて。

「もう一回、……しようぜ」
「………」

熱情を孕む瞳。
耳元に掛かる、熱い吐息。
抵抗なく受け入れれば、掴まれた肩をゆっくりと押し倒され、再び硬い床に背中を押し付けられる。

──重ねる唇。
今井の舌が、僕の咥内をいやらしく舐った。



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