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第一章 梅雨の幻影

永遠の彼女2

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「でも、お前の方が辛そうな顔してたな。……あん時は、悪かった」

少しだけ頬を赤らめた今井が、腑が悪そうに台詞の最後を濁らせる。

「お前、あの後すぐ早退しただろ?
それで何となく……気付いちまった。認めたくはなかったけどな」
「……」
「……白石の気持ちに全然気付かねぇ大空に、心底ムカついてさ。
午後の授業フけて、アイツとやり合ったんだよ。
──白石を、今のまま中途半端にさせとくなら、俺が奪うってな」
「──!」


……あの時……そんな事が……


「したらアイツ、俺に言ったんだよ。
彼女とは別れるから……実雨にはぜってー手ぇ出すなって」
「……え……」


……大空。
どうして、そこまで想ってて……

……どうして……佐藤さんと……


目を伏せれば、下瞼に触れる事無く涙がぽろぽろと落ちる。



「………で、金曜日。──お前、キスマーク付けてきただろ?
それがまた火種になってさ。
大空に呼び出されて……今から佐藤と別れるから、黙って見てろって……」
「………」


……大空……

その時の光景が、見てもいないのに目に浮かぶ。
大空は、そこまで僕の事を……想って……


立っていられなくなって、膝から崩れ落ちる。

「………おい、大丈夫か?」

差し伸べられる、今井の手。
でも、それを取る気にはなれなくて……

借りていたままのハンドタオルで、濡れた目元を雑に拭う。

「………」
「佐藤は、別れたくないって散々ごねて、その場に泣き崩れて。
下校する頃には、また雨が降ってきてさ。『送って』って、大空にだだ捏ねだして。
………その帰り、だもんな」


今井の、深い溜め息。


「死人に口なしっつーか。
佐藤が言わない限り、永遠に大空の彼女……なんだよな」

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