上 下
19 / 107
第一章 梅雨の幻影

優しいキス

しおりを挟む


優しく右頬を包み込まれ、頬骨の上を親指の腹が柔くなぞる。そこに唇が当てられた後、首筋、項……と、優しく指先が滑っていく。

それだけで、身体の内側から快感が引き出され、ゾクッと粟立つ。

「……可愛い」

熱っぽい瞳が、僕を捕らえる。
握られた手の指間に、ミキさんの指が入り込み……合わせた掌の隙間に、湿気が籠もる。

しっとりとした肌。
甘く作り変えられていく空気。
色気を帯びる瞳……

「………っ、」

その瞳が柔く閉じられ、項に掛けられた指に力が籠められ、グイッと持ち上げられる。
……距離を詰める、唇。

「ん、……っ」

柔く唇に触れ、離れる間もなく今度は強く押し付けられる。
唇の形が崩れる程に──

熱くて。柔らかくて。
ミキさんの息遣いから、微かなコーヒーの香りと、彼自身の匂いが入り混じり……直ぐに唇が割られ、熱く濡れそぼつ舌が入ってくる。

「……んぅ……、」

初めての経験。感触。
恥ずかしくて……擽ったくて……
触れられた所全てが……火傷しそうに熱い……




優しく押し倒される。
ミキさんの手が、制服のボタンに掛かり……ひとつひとつ、丁寧に外されていく……

「……」


ホントに僕……するんだ……
この人と……セックス……


妙な緊張感と、高揚感。
掌がじんと痺れて、ピリピリする。

浅い呼吸を何度も繰り返しながら、ぼんやりと見上げれば、視線の合ったミキさんが優しく微笑む。

「……まだ、緊張してる?」
「……え……」
「痛い事は、しないから……」

大空に似た……笑顔。
優しい、声。


「うん……」



その言葉通り、ミキさんは僕に、痛い事はしなかった。


首筋、鎖骨、開けた胸元……
啄むようにキスを落とされると、波紋のように広がる、甘い痺れ。


「……っ、は……ぁあ……」


我慢できなくて声が漏れれば、徐にミキさんの手が僕の二の腕を摑む。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人とその恋人の浮気現場に遭遇した話

蜂蜜
BL
主人公は浮気される受の『友人』です。 終始彼の視点で話が進みます。 浮気攻×健気受(ただし、何回浮気されても好きだから離れられないと言う種類の『健気』では ありません)→受の友人である主人公総受になります。 ※誰とも関係はほぼ進展しません。 ※pixivにて公開している物と同内容です。

諦めようとした話。

みつば
BL
もう限界だった。僕がどうしても君に与えられない幸せに目を背けているのは。 どうか幸せになって 溺愛攻め(微執着)×ネガティブ受け(めんどくさい)

ハッピーエンド

藤美りゅう
BL
恋心を抱いた人には、彼女がいましたーー。 レンタルショップ『MIMIYA』でアルバイトをする三上凛は、週末の夜に来るカップルの彼氏、堺智樹に恋心を抱いていた。 ある日、凛はそのカップルが雨の中喧嘩をするのを偶然目撃してしまい、雨が降りしきる中、帰れず立ち尽くしている智樹に自分の傘を貸してやる。 それから二人の距離は縮まろうとしていたが、一本のある映画が、凛の心にブレーキをかけてしまう。 ※ 他サイトでコンテスト用に執筆した作品です。

グッバイシンデレラ

かかし
BL
毎週水曜日に二次創作でワンドロライ主催してるんですが、その時間になるまでどこまで書けるかと挑戦したかった+自分が読みたい浮気攻めを書きたくてムラムラしたのでお菓子ムシャムシャしながら書いた作品です。 美形×平凡意識 浮気攻めというよりヤンデレめいてしまった

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

嫌われものと爽やか君

黒猫鈴
BL
みんなに好かれた転校生をいじめたら、自分が嫌われていた。 よくある王道学園の親衛隊長のお話です。 別サイトから移動してきてます。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

あなたが好きでした

オゾン層
BL
 私はあなたが好きでした。  ずっとずっと前から、あなたのことをお慕いしておりました。  これからもずっと、このままだと、その時の私は信じて止まなかったのです。

処理中です...