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サメトリ合戦
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トリが色とりどりの野菜を持って道を歩いていました。
トリは早く家に帰って彩り美しいサラダを食べようとウキウキして歩いていました。
そこへ道の向こうからサメがやってきます。
「よう、トリさんこんにちは。やや、美味しいそうな野菜だね」
「肉食のサメくんには関係ないよ。」
「僕は先月からヒンドゥー教に入信したんだ。もう立派な菜食主義者だよ」
「トリッキーな生き方だね。でも私は家に帰ってひとりサラダバーをするんだよ。ゆとり世代だからね」
「いいなあ。ほしいなぁ。どうだろこのミカンの種と交換してくれないかい」
トリは無視して通り過ぎようとします。
「待って!トリさん。その風味豊かな野菜たちは一度食べてしまえばおしまいだろ?ミカンの種を植えれば木がはえて実がなって、あまくて美味しいのがいっぱい食べられるんだぜ?」
と述べた上で、ミカンの種の利点を強調。
トリ側も一定の理解を示し、これに応じました。
サメはうまいことトリをいいくるめて、国産無農薬野菜の数々を手に入れます。
トリは家に帰って庭にミカンの種を植えました。
そして、
♪早く芽を出せミカンの種出ないと嘴でつっつくぞ
といって毎日水をやります。
やがて芽が出てどんどん大きくなっていきます。
トリは、
♪早く木になれミカンの種ならぬと嘴でつっつくぞ
と水をやります。
やがて大きな木に育ちます。実がなるのももう一歩という感じです。
トリは、
♪早く実がなれミカンの種ならぬと農薬振りまくぞ
と水をやります。
トリがいっしょうけんめい育てた甲斐あってか、ミカンの木は美味しそうな実をたくさんつけました。
「さあ食うぞ」
トリは喜んで木に登ろうとしますが、何度やってもすべって転げ落ちてしまいます。
「まいったなぁ。これじゃせっかく育てた意味がないよ」
トリが困っているのを見てサメが言います。
「トリさん、だいぶ困ってるようだね。僕は泳ぎの名人なんだよ。取ってあげよう」
「えっ、それは助かるよ」
サメは滝を登る要領でひょいひょいとミカンの木に登っていきます。
そして黄色い"ミカンの実"を取ると、
「こりゃうまい」
とむしゃむしゃ食べるのでした。
見ているだけでも美味しそうで喉がコケッとなりました。
「おおいサメさん、早く私にも取ってよう」
「まだまだ熟してないよ。完熟のみかんは未完熟だからね」
「じゃあ未完熟でいいから取っておくれよ」
ところがサメは、
「それはできない。もともとミカンの種は俺のものだったんだ」
と、"遺憾の意"を示し、
「これでもくらえ」
とまだ熟していない青いミカンをトリに投げつけるに至りました。
結果、見事命中したトリは
「コケッ」と潰れ死んでしまいました。
そのとき三羽の子トリが陰からでてきます。
三羽の子トリはお母さんが殺されたのを知り、ぴよぴよと泣きました。
「憎しみ深いあのサメに 母の仇を取りにいく」
三羽の子トリは誓うのでした。
数年がたち、三羽は立派なトリとなり、いよいよ復讐に出発します。
その途中、イルカさんに出会います。
「トリさんトリさん、どこに行くの」
「いじわるサメをヒドイ目にあわすんだ」
「そりゃユカイだ。わたしの助けもいるかい?」
イルカさんも10年前、すれ違いざま、サメの父親に痴漢されたことがあったのです。
さらに進むと、映画監督さんに出会います。
「トリさんトリさん、どこさ行くだ」
「いじわるサメをヒドイ目にあわすんだ」
「よーし、ほんならおらも着いていくど」
映画監督さんもその昔、サメに意地悪されたことがあったのです。
サメの家につくと、留守でした。みんなは家にしのびこんでサメの帰りを待ちます。
長男「サメはずるいヤツだから、こっちも気をひきしめていかないとね。作戦が大事だよ。まずサメが帰ってきたら、イルカさんがサメを誘惑してこっちにおびき寄せるんだ」
次男「おとり作戦だね!」
イルカ「サメはついてくるかしら」
長男「大丈夫。"痴漢の血"が入ってるんだから。それからサメがいいところまできたら、映画監督さんが塩酸をぶっかける。以上。」
イルカ「映画監督を有効に使いなさいよ」
三男「すごいや兄さん。ぼく鳥肌がたったよ」
次男「あいつにも鮫肌立ててやろう」
監督「おらも天才肌がたったさ」
イルカ「君たちはなにもしてないじゃない」
トリたち「だって僕らさとり世代だもん」
そこへサメが「寒い寒い」と戻ってきます。
「小雨が降ってきやがった。こまるこまる。ん?あれは、べっぴんなイルカちゃんじゃねえか」
サメはすけべ心全開でイルカさんのあとをつけます。
サメは必死で追いかけましたが、イルカを見失ってしまいました。
気がつくとそこは、暗くて狭いいけすでした。
「しまった」
とサメは思いました。
見上げると、眼鏡をかけたひげ面のおじいさんがにこやかに液体を流し込んでいます。
「身体中が熱い。灼けているみたいだ。助けてくれ。すまなかった。赦してくれ、助けてくれー」
サメはさめざめと泣きました。
サメはとても反省しているようでした。
みんなももがき苦しむサメを見て、サメを赦しはじめていました。
するとどうでしょう。
涙のアルカリ性によって、泣けば泣くほど塩酸の酸性は中和され、イケスの水は弱酸性になりました。
こうして一命を取り留めたサメは監督さんの映画の主演に抜擢され、トリたちは手を汚すことなく上手にお母さんの仇を取り、みんな幸せに暮らしましたとさ。
トリは早く家に帰って彩り美しいサラダを食べようとウキウキして歩いていました。
そこへ道の向こうからサメがやってきます。
「よう、トリさんこんにちは。やや、美味しいそうな野菜だね」
「肉食のサメくんには関係ないよ。」
「僕は先月からヒンドゥー教に入信したんだ。もう立派な菜食主義者だよ」
「トリッキーな生き方だね。でも私は家に帰ってひとりサラダバーをするんだよ。ゆとり世代だからね」
「いいなあ。ほしいなぁ。どうだろこのミカンの種と交換してくれないかい」
トリは無視して通り過ぎようとします。
「待って!トリさん。その風味豊かな野菜たちは一度食べてしまえばおしまいだろ?ミカンの種を植えれば木がはえて実がなって、あまくて美味しいのがいっぱい食べられるんだぜ?」
と述べた上で、ミカンの種の利点を強調。
トリ側も一定の理解を示し、これに応じました。
サメはうまいことトリをいいくるめて、国産無農薬野菜の数々を手に入れます。
トリは家に帰って庭にミカンの種を植えました。
そして、
♪早く芽を出せミカンの種出ないと嘴でつっつくぞ
といって毎日水をやります。
やがて芽が出てどんどん大きくなっていきます。
トリは、
♪早く木になれミカンの種ならぬと嘴でつっつくぞ
と水をやります。
やがて大きな木に育ちます。実がなるのももう一歩という感じです。
トリは、
♪早く実がなれミカンの種ならぬと農薬振りまくぞ
と水をやります。
トリがいっしょうけんめい育てた甲斐あってか、ミカンの木は美味しそうな実をたくさんつけました。
「さあ食うぞ」
トリは喜んで木に登ろうとしますが、何度やってもすべって転げ落ちてしまいます。
「まいったなぁ。これじゃせっかく育てた意味がないよ」
トリが困っているのを見てサメが言います。
「トリさん、だいぶ困ってるようだね。僕は泳ぎの名人なんだよ。取ってあげよう」
「えっ、それは助かるよ」
サメは滝を登る要領でひょいひょいとミカンの木に登っていきます。
そして黄色い"ミカンの実"を取ると、
「こりゃうまい」
とむしゃむしゃ食べるのでした。
見ているだけでも美味しそうで喉がコケッとなりました。
「おおいサメさん、早く私にも取ってよう」
「まだまだ熟してないよ。完熟のみかんは未完熟だからね」
「じゃあ未完熟でいいから取っておくれよ」
ところがサメは、
「それはできない。もともとミカンの種は俺のものだったんだ」
と、"遺憾の意"を示し、
「これでもくらえ」
とまだ熟していない青いミカンをトリに投げつけるに至りました。
結果、見事命中したトリは
「コケッ」と潰れ死んでしまいました。
そのとき三羽の子トリが陰からでてきます。
三羽の子トリはお母さんが殺されたのを知り、ぴよぴよと泣きました。
「憎しみ深いあのサメに 母の仇を取りにいく」
三羽の子トリは誓うのでした。
数年がたち、三羽は立派なトリとなり、いよいよ復讐に出発します。
その途中、イルカさんに出会います。
「トリさんトリさん、どこに行くの」
「いじわるサメをヒドイ目にあわすんだ」
「そりゃユカイだ。わたしの助けもいるかい?」
イルカさんも10年前、すれ違いざま、サメの父親に痴漢されたことがあったのです。
さらに進むと、映画監督さんに出会います。
「トリさんトリさん、どこさ行くだ」
「いじわるサメをヒドイ目にあわすんだ」
「よーし、ほんならおらも着いていくど」
映画監督さんもその昔、サメに意地悪されたことがあったのです。
サメの家につくと、留守でした。みんなは家にしのびこんでサメの帰りを待ちます。
長男「サメはずるいヤツだから、こっちも気をひきしめていかないとね。作戦が大事だよ。まずサメが帰ってきたら、イルカさんがサメを誘惑してこっちにおびき寄せるんだ」
次男「おとり作戦だね!」
イルカ「サメはついてくるかしら」
長男「大丈夫。"痴漢の血"が入ってるんだから。それからサメがいいところまできたら、映画監督さんが塩酸をぶっかける。以上。」
イルカ「映画監督を有効に使いなさいよ」
三男「すごいや兄さん。ぼく鳥肌がたったよ」
次男「あいつにも鮫肌立ててやろう」
監督「おらも天才肌がたったさ」
イルカ「君たちはなにもしてないじゃない」
トリたち「だって僕らさとり世代だもん」
そこへサメが「寒い寒い」と戻ってきます。
「小雨が降ってきやがった。こまるこまる。ん?あれは、べっぴんなイルカちゃんじゃねえか」
サメはすけべ心全開でイルカさんのあとをつけます。
サメは必死で追いかけましたが、イルカを見失ってしまいました。
気がつくとそこは、暗くて狭いいけすでした。
「しまった」
とサメは思いました。
見上げると、眼鏡をかけたひげ面のおじいさんがにこやかに液体を流し込んでいます。
「身体中が熱い。灼けているみたいだ。助けてくれ。すまなかった。赦してくれ、助けてくれー」
サメはさめざめと泣きました。
サメはとても反省しているようでした。
みんなももがき苦しむサメを見て、サメを赦しはじめていました。
するとどうでしょう。
涙のアルカリ性によって、泣けば泣くほど塩酸の酸性は中和され、イケスの水は弱酸性になりました。
こうして一命を取り留めたサメは監督さんの映画の主演に抜擢され、トリたちは手を汚すことなく上手にお母さんの仇を取り、みんな幸せに暮らしましたとさ。
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