夫婦とは長い会話である

風邪

男「体調崩してもうてるやん」
女「熱やなあ」
男「やなあ」
女「あーくそ、この熱で発電でもできたらちったぁ電気代も浮くのに」
男「体調崩してる時まで家計の心配せんでも」
女「家計も崩れてるからな」
男「返す言葉もございません」
女「返してよ」
男「え、」
女「言葉」
男「ああ言葉」
女「退屈やから言葉投げてくれんと。さみしい」
男「なんやなんや、かわいいところもあるやないですか。桃さんいる？桃さん。あーんしてあげましょうか？あーん」
女「もうちょっと面白い話して」
男「クスリともせんやん」
女「風邪だけに」
男「床に伏しながらにして、その頭の回転。ジャイロやん。ジャイロヘッドやん」
女「散々使い古されてるやつやろ」
男「いやでもすごいよ。その嗅覚というか、空気の読み方というか」
女「嫁だけに」
男「元気やん。風邪ちゃうやん」
女「自分が言わせてるんやん」
男「そんな意図はなかったんやけど」
女「なあ、風邪ってさ」
男「遮ってきた」
女「なんで風の字付くんやろな」
男「まあ風邪に限らず風疹とか痛風とかも風付くよな」
女「調べて」
男「承知」

男「風とは、空気の動き、空気の流れ、であるから、呼吸器系の炎症を主に風邪という」
女「なるほどなあ。空気の流れが悪なるから、風邪なんやなあ」
男「でも余命宣告されんでよかったなあ」
女「なんでやねん。たかだか風邪やのに」
男「嫁だけに」
女「……あんた、風邪ちゃう？ 」
男「おっと。夫だけに」
女「……おやすみ」