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キスがしたい
しおりを挟む男:「風邪?」
女:「ううん、花粉症。今日気温高いから」
男:「あ、そっか」
女:「なんで」
男:「いやマスクしてんなあと思って」
女:「そやねえ。あと化粧してないから」
男:「あ、そうなん」
女:「わからん?」
男:「わからん」
女:「えー、眉毛とかないやん」
男:「あー、言われて見たらそやねえ」
女:「他人の顔ちゃんと見てないんやな」
男:「そらガン見してもあれやろ」
女:「それはまあそやけど」
男:「じゃあ見してや」
女:「え?」
男:「いや、顔。せっかくやし」
女:「いやせっかくて、うちすっぴんやし」
男:「ええやん。すっぴんの方が」
女:「すっぴんの方がええなんてことはないよ」
男:「いや、だってあれやん。俺さっきまで化粧してないことにも気づかんかったわけやし」
女:「それはそれで傷つくけどな」
男:「え、あ、ごめん」
女:「ええけど」
男:「見してえな」
女:「何を」
男:「やから顔」
女:「そんなん言われたらますます嫌やわ」
男:「でも他人の顔ちゃんと見い言うたん自分やん」
女:「ちゃんと見いとは言うてないよ」
男:「そんなようなこと言うてたよ」
女:「まあそんなようなことやったかもわからんけど」
男:「じゃあ見せるのが道理ってもんじゃない?」
女:「急に道理とか言うやん」
男:「あかん?」
女:「あかんことはないけど。ちょっとだけやで」
男:「うん」
女:「……やっぱりなんか恥ずかしいわ」
男:「なんやねん!勿体ぶんなよ」
女:「いや、こんだけ勿体ぶったから、なんかマスク取るだけが、スカート捲るぐらい恥ずかしいわ」
男:「どんなんやねん」
女:「じゃあ取ってよ」
男:「え?」
女:「マスク。あんたがずらしてよ」
男:「は?」
女:「え、なに照れてんの」
男:「いや照れてへんよ。照れてへんけど」
女:「なに?」
男:「なんか、あれやん。恥ずかしいやん」
女:「やっぱり恥ずかしいんやん」
男:「いや自分が変なこと言うからやん」
女:「じゃあどうしたらいいんよ」
男:「普通に外して普通に」
女:「わかった。わかったからちょっとあっち向いてて」
男:「なんやねんそれ。まあええけど」
女:「いいって言うまでこっち見んといてよ」
男:「わかった、大丈夫やって」
男:「もういい?」
女:「まだ。待って」
男:「もういいでしょ?」
女:「もうちょっと」
男:「振り返るで?」
女:「まってほんまにまって」
男:「いやマスク外すのにどんだけかかっとんねん」
女:「こんにちは」
男:「いや化粧してるやん」
女:「見ーたーなー」
男:「見んでもわかるわ」
女:「うちが鶴やったら飛んで行ってるよ」
男:「恩返ししてから行け」
女:「恩返しして欲しいの?」
男:「え、うん」
女:「じゃあ……しりとり、しよ」
男:「なんやそれ。ええけど」
女:「負けたら相手の言うこと聴くこと。うちからな。うーん、「す」からにしよ。すき」
男:「え?」
女:「す・き」
男:「き、き、きs……」
女:「き……?」
男:「気温」
女:「はい負けー」
男:「負けたわ。言うこと聴くわ。なにして欲しいん」
女:「じゃあ……もう一回しりとりしよ」
男:「え」
女:「じゃあ次自分からでええで。「す」からな」
男:「それも指定あり!?」
女:「だって言うこと聴くんやろ。ほらはよ」
男:「す……」
女:「え、なんt……(はっくしゅん)」
男:「……すぎk」
女:「ん?」
男:「スギ。スギ花粉のスギ」
女:「ギ?スギ花粉じゃなくていいのね」
男:「負けてまうやん。ギ」
女:「うーん、祇園。あ、「ん」付いちゃった」
男:「なんやねん。わざとやろ」
女:「そやで。これが噂のおん返し」
男:「祇園、気温。はっ」
女:「じゃあ言うこと何でも聴いてあげます。なにがいい?「す」からな」
男:「それも「す」から!?」
女:「まずは「す」からでしょ。「き」からなんてありえへんから」
男:「まあ、確かにそうか……」
女:「さあ、どうぞ」
男:「すっぴん見せて」
女:「帰れ」
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