夫婦とは長い会話である

わんちゃん欲しい

 女:「わんちゃん欲しい」
 男:「えー」
 女:「猫派？」
 男:「なんで犬じゃなかったら猫やと思うの？」
 女:「じゃあ何派？」
 男:「イリオモテヤマネコとか……」
 女:「猫やん」
 男:「あと、アマミノクロウサギとか」
 女:「生きた化石やん。あとなんで離島系なん」
 男:「なんか孤独やん？」
 女:「知らんよ。あ、あの白いわんちゃんかわいい」
 男:「白はやめとき」
 女:「なんでよ」
 男:「汚れ目立つで」
 女:「服か」
 男:「でも白はなあ」
 女:「なによ」
 男:「白旗とか敗北の色やし、……」
 女:「関係ないやん」
 男:「カレーうどんとか食われへんし」
 女:「やから服かて」
 男:「あー生きた化石飼いたい」
 女:「そんな化石みたいな目して言わんといて」
 男:「だれがゾンビや」
 女:「確かにゾンビ役とかできそうやね」
 男:「だれがゾンビや」
 女:「でも私は例えゾンビになってもあなたを愛するよ」
 男:「俺は逃げるよ」
 女:「愛してよ」
 男:「さすがに逃げるやろ。噛まれたらゾンビなってまうし」
 女:「一緒にゾンビとして生きていこうよ」
 男:「絶対いや」
 女:「唇に噛みつくわ」
 男:「いや、ゾンビの唯一の武器奪わんとって。口喰われたら噛むことすらできずにゾンビとして餓死してまうやん。ゾンビやのに餓死してまうやん」
 女:「よだれ出てきた」
 男:「なんでやねん。鬼畜か」
 女:「おしっこ行きたい」
 男:「急やな」
 女:「急やねん」
 男:「でも体内のどこから出るかによって名称変わるんやなあ」
 女:「水分やもんねえ」
 男:「よだれとかおしっことか」
 女:「汗とか涙とか」
 男:「ヒロインの涙で復活するシーンとかあるやん？」
 女:「あるね」
 男:「肩揺すってる時点で手汗で復活しろよと思いますよね」
 女:「思いません」
 男:「成分一緒やん」
 女:「私たちも名称変わりたいね」
 男:「どゆこと？」
 女:「赤ちゃん欲しい」