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2章 村での生活
56話 調合部屋は、匂うのが当たり前……?
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そう言われてタンジーを見ると、ちょうど大きなあくびをしていた。
しかも、バッチリ目が合ってしまった……
タンジーは両手で自分の口を抑えると、若干睨んでるような目付きでこちらを見てきた。
「お兄さん、今見たよね……?」
「うん、ごめんな? でも、虫歯もないし綺麗な歯だったぞ!」
真っ白で歯並びも良かったし、時々虫歯になる俺とは雲泥の差だな──
などと思いつつふとおばあさんの方を見ると、呆れたような目でこちらを見ていた。
「あんた、子供相手でも容赦ないねぇ……」
「はい?」
「分からないならその方がいいのかもねぇ……さて、あんたはこっちの部屋に来な」
「分かりました。タンジーは──」
「今はタンジーちゃんのことは放っておきな。……あとですぐ来るだろうし」
「あ、はい……」
先に部屋に向かうおばあさんの後に着いて行きつつ、チラッと横目でタンジーを見ると──
ぼーっとしたような表情でこちらを見ていた。
しかも、一瞬目線が合うと俯い俯いてしまった。
これは、タンジーにとって言ってはならないことを言ってしまったのだろうか……?
どちらにせよ、おばあさんの言う通り少し距離を空けた方が良さそうだな。
薬屋の奥にあったドアを空けると、そこはテーブルと椅子があるお茶の間のような部屋だった。
その部屋には俺の正面と左右にドアが一つずつあるから、この部屋には合計四つのドアがあるということになる。
おばあさんはすでに右にあるドアの前にいるので、そちらが調合を行う部屋なのだろうか?
「あんまり人の部屋をじろじろ見るんじゃないよ! さっさとこっちの部屋に入りな!」
「はい! すみません!」
慌てて右のドアに向かい、そのドアを開け放った瞬間──
俺はむわっとした濃厚な草の匂いに満たされていた。
「うっ……ごほっ……これは……!」
あまりの強い匂いに思わずむせ込む。
「なんだい、情けないねぇ……あんただって調合した時は強烈な匂いが出るだろう?」
「いや、調合はたしかに匂いますが……げほっ……換気とかは──」
「そんなことしたら近所からクレームが来るだろう? それに、お客だって寄り付かなくなっちまうじゃないか」
元々お客さん来てないじゃないですか──
……と、危うく声に出すところだった。
すでに睨まれてるので、多分俺の考えていたことはばれてるとは思うけど……
口に出すよりはましなはず!
「うわっ! このへや、ものすごくくすりくさいね!」
内心で冷や汗をかいていると、正気に戻ったタンジーが来てくれた!
しかも、バッチリ目が合ってしまった……
タンジーは両手で自分の口を抑えると、若干睨んでるような目付きでこちらを見てきた。
「お兄さん、今見たよね……?」
「うん、ごめんな? でも、虫歯もないし綺麗な歯だったぞ!」
真っ白で歯並びも良かったし、時々虫歯になる俺とは雲泥の差だな──
などと思いつつふとおばあさんの方を見ると、呆れたような目でこちらを見ていた。
「あんた、子供相手でも容赦ないねぇ……」
「はい?」
「分からないならその方がいいのかもねぇ……さて、あんたはこっちの部屋に来な」
「分かりました。タンジーは──」
「今はタンジーちゃんのことは放っておきな。……あとですぐ来るだろうし」
「あ、はい……」
先に部屋に向かうおばあさんの後に着いて行きつつ、チラッと横目でタンジーを見ると──
ぼーっとしたような表情でこちらを見ていた。
しかも、一瞬目線が合うと俯い俯いてしまった。
これは、タンジーにとって言ってはならないことを言ってしまったのだろうか……?
どちらにせよ、おばあさんの言う通り少し距離を空けた方が良さそうだな。
薬屋の奥にあったドアを空けると、そこはテーブルと椅子があるお茶の間のような部屋だった。
その部屋には俺の正面と左右にドアが一つずつあるから、この部屋には合計四つのドアがあるということになる。
おばあさんはすでに右にあるドアの前にいるので、そちらが調合を行う部屋なのだろうか?
「あんまり人の部屋をじろじろ見るんじゃないよ! さっさとこっちの部屋に入りな!」
「はい! すみません!」
慌てて右のドアに向かい、そのドアを開け放った瞬間──
俺はむわっとした濃厚な草の匂いに満たされていた。
「うっ……ごほっ……これは……!」
あまりの強い匂いに思わずむせ込む。
「なんだい、情けないねぇ……あんただって調合した時は強烈な匂いが出るだろう?」
「いや、調合はたしかに匂いますが……げほっ……換気とかは──」
「そんなことしたら近所からクレームが来るだろう? それに、お客だって寄り付かなくなっちまうじゃないか」
元々お客さん来てないじゃないですか──
……と、危うく声に出すところだった。
すでに睨まれてるので、多分俺の考えていたことはばれてるとは思うけど……
口に出すよりはましなはず!
「うわっ! このへや、ものすごくくすりくさいね!」
内心で冷や汗をかいていると、正気に戻ったタンジーが来てくれた!
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