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2章 村での生活
泉に住む犬とアヒル①
しおりを挟むとある泉の近くに、アヒルと共に住み着いている犬が居た。
ある日、犬は森の中で普段聞いたことのない音が聞こえたので、単独で泉から離れて音が聞こえた辺りの様子を見に来ていた。
少し前には森の中に巨大な樹が突然現れて驚き、今度は突然の大きな音。
樹の方は悪い感じが全くなかったが、音の方はよく分からない。
一緒に居たアヒルは悪意を感じないから大丈夫だと言っていたが、犬は念のために調べに来たのだった。
犬は恐らく音が鳴ったであろう場所にたどり着くも、砕けた木の実しか見つからない。
(う~ん……この辺りに、なんとなく人間のような匂いがするんだけど……ぼくの知ってる人間たちとはなにかがちがう気がするんだよなぁ……)
砕けた木の実の周囲にある匂いが気になって、鼻を鳴らしていると──
「グワァ~~!!」
まるで遠吠えのようなアヒルの鳴き声が聞こえてきた。
(!? アヒルくんの声だ! 何かあったんだ!)
犬は急いで泉に向かって走る。ものの数分で泉に到着すると、そこには──
(お帰り~)
(え? あ、ただいま……?)
グワ~とのんびりとした雰囲気のアヒルに迎えられ、戸惑う犬。
(じゃなくて! 呼ばれたからいそいで帰ってきたんだよ!)
(そうだ、きいてよ! さっきね、お魚をとれたんだけど……)
犬が我に返って何かあったのか聞くと、アヒルがグワッ! グワッ! と言ってきた。
アヒルの話は、せっかく咥えることができた魚をうっかり逃がしてしまったと言う内容だった。
(それはザンネンだったね……次にとれた時は、うれしくても先にたべちゃった方がいいと思うな)
(うん……でも、中々とれないから……とれたらうれしくなっちゃうんだ……)
また逃がしちゃったのかと思いつつ慰める犬だが、あんな大声で呼ぶほどの出来事だったのか疑問に思った。
(それにしても、あんな大声でぼくをよぶほどショックだったの?)
(ショックだったよ! でもよんだのは、人間がきたからなんだ~)
再度大声で呼ぶほどの事だったのかと聞いてみると、のんびりとした口調で予想外の答えが返ってきた。
この答えには犬も思わず大きな声でワン! ワン! と吠えてしまった。
(人間が来たなんて大問題だよ!! なんで早く言わなかったの!?)
(だって! お魚の事がショックで、忘れちゃってたんだもん!)
(えぇ……そこまでなの……?)
(うん!)
クワッ! と言いきるアヒルにちょっと引いてしまった犬だが、頭を切り替えて詳しく聞いてみることにした。
(えっと……人間はどの辺りまで来たの?)
(あの辺だよ!)
アヒルがグワッ! と翼で指し示したのは、泉で一番森に近い所だった。
(もしかして、いずみになにかをしたんじゃ……?)
(ぼくが見たときは、いずみに手を入れていたよ~)
(ええっ!? もしかしてどくとか……)
(どく? それって体にわるいやつだっけ?)
(そうだよ! つよいどくだとしんじゃったりするんだ!)
(でも、ぼくいずみにずっといるけど……なんともないよ?)
(それもそうだね……じゃあ、人間はなにをしに来たんだろ?)
犬は人間がやりそうな悪いことを考えてみたけれど、なかなかこれといったものが思いつかなかった。
なにも思い付かず、思わずキューン……と落ち込んだ声が出てしまう犬。
するとアヒルがなにかを思い出したようにグワーと鳴いた。
(そう言えば、ぼくが人間に気づいたのはいずみの水がへったからなんだよ~)
(そうなの!? というか、それを先に言ってよ……)
(だって、お魚が……)
(あー……うん、そうだったね……)
アヒルにとって、食べ物のことはとても大事なことなんだと、改めて犬は思い知った。
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