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2章 村での生活

45話 昔からの悪癖

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 ──昔からそうだった。

 楽しいことが目先にあると、ついそちらにしか思考が行かなくなって回りに迷惑をかけてきた。

 今回も手伝いをしたいと思いながらも、
本心では庭いじりが出来ることを期待していたんだ。

 ……俺はいつまで経っても大人になりきれない、ダメな大人だな……


「あ、頭を上げて下さい! こちらは手伝って貰う側なのですから……!」
「そうだよお兄さん! もうあたま上げよ?」

「はい……すみませんでした……」

「……リョウさんにお庭の事をお願いしなかったのは、私の我が儘なんですよ」

「……え?」


 俺が頭を上げてサラさんを見ると、自嘲するような表情をしていた。


「私のお店で出す草花を育てる場所なので、私達家族だけで手を入れたかったのです。……お店の基礎となる場所にまで人に手を借りてしまったら、お店をやっていくのが後ろめたくなってしまうので……」

《リョウさん、サラさんはご主人とお店を始めた頃は、ご主人が庭を整えて手入れをして、育った草花をサラさんが売るという生活をしていたようです。だからこそ、今は亡きご主人が管理していた庭は家族で何とかしたいと思っているようです……》

(なるほど。だとしたら、我が儘なんかじゃないな)


「サラさん、それは我が儘なんかじゃないと思います。仕事をする人の、言わば信念だと俺には思えますし。……だから、そんな顔しないで下さい」

「そう……でしょうか?」


 少なくとも、家族の思い出を大事にしようとすることが悪いなんてあり得ないからな。

 俺なんか、庭いじりがしたかったという子供じみた理由だったのだから……

 それに比べたら、サラさんは俺とは違って立派な大人だな……


「じゃあ、俺の担当は料理ですね! ……とは言え毎食分作るのは難しいので、こちらに来れた時だけで大丈夫ですか?」
「勿論です! 来てくれてくれるだけでも心強いので、無理はしないで下さいね!」

「分かりました! 分かりましたから、もう少し距離を……」
「はい、お母さんははなれて~」


 なんでこう、テンションが上がると距離を詰めてくるのか……

 いや、仲のいい間柄ならむしろ当たり前なのかな……?




 さて、時間がある時はここで料理を作ることになったけど、今の時間からして晩御飯からだな。

 でも焼きサツマノイモのあとなら、やっぱりあれ・・を出すべきだろうな!


「とりあえず料理は晩御飯からになりますが、その前にもう一つ軽いおやつを食べませんか?」

「お兄さんニヤニヤしてる……なにかたくらんでるの?」
「おにいちゃんがつくったものはみんなおいしいから、ぼくはたべたい!」
「もう、私お腹いっぱいだから食べれないかもです……」



  やばっ、顔に出ていたか!


 それにしても企んでるって……俺はそんなに怪しい顔してるのか……?

 でも、セージ君に信頼されてるのは嬉しいところだな!

 サラさんはお腹いっぱいと言うが、きっとこれを出せば……もしかしたら一口くらいは食べる気になるかも知れない。
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