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2章 村での生活
20話 門番さんは情報通!?
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村の入り口に差し掛かると、出る前に花畑のことを教えてくれた門番さんがいた。
凄く助かったし、お礼を言わないとな。
「門番さん、お疲れ様です。教えて貰った花畑ですが、どうにか無事にたどり着けました。本当にありがとうございます!」
「お、さっきの冒険者さんか。それはよかったな!」
この人は明らかに俺より年が上であろうと思われる貫禄があるけど、偉ぶった感じがなくて話しやすいな。
「遅いから今日は帰って来ないかと思っていたぞ。ちなみに俺はサンショウと言うんだ」
「サンショウさんですね。自分はリョウと言います。こっちは相棒のブレンです。森で色々ありまして……」
「リョウとブレンだな。丁寧にありがとよ。まあ森は色々な魔物がいるし、無事に帰ってきただけ大したもんだよ」
サンショウさんか。名前覚えるのは苦手だが、しばらくこの村にいることになりそうだから、覚えておかないと。
「サラさんがな、お前さんが戻ってきてないかと何度か聞きにきてたから、あとで顔を出してやってくれないか?」
「サラさんが、ですか? 一応この後行く予定ではありましたが……何かあったのでしょうか?」
ログインしてから森に入るまでに声とかかけてないし……なぜ森に行ったことがバレてるんだ……?
「いや、たまたま村を出るのを見かけたらしいぞ。それで、いつ戻ってくるか気になって様子を見にきていたんだとさ」
……今度から、声をかけてから出た方がいいのかもな。
「分かりました。ではこの後すぐ向かいますよ」
「そうしてくれたら助かる。あの人も子供達も、恩人であるリョウの事が気になって仕方ないみたいだからな」
「……えっ? 俺の事、知ってるんですか!?」
タンジーの事はともかく、セージの事は知ってる人は少ないと思っていたが……
「そりゃ、サラさんもタンジーも自慢するようにみんなに話してるからな。名前までは聞いてなかったが、リョウが何をしたかは村のみんなが知ってると思うぞ」
……えぇ…………まぁ小さい村だし、噂が広がるのは仕方ないとは思うが、話して回らなくてもいいだろうに……
「ははっ! 目立つのは嫌だって顔してるぞ?」
「そりゃそうですよ……俺としてはできることをやっただけですし」
「リョウは良い意味で変わってるな。以前村に来た冒険者達はやりたい放題だったというのに」
どうやら、その冒険者達は村中の壺や樽を割ろうとしたり勝手に家に入って部屋を漁ったりと酷かったようだ。
……恐らくは、以前俺が倒したプレイヤーの一行だろう。
「自分は、こういう性格なだけですよ」
「ふむ……冒険者全てが、誤った価値観を持っているわけではない。……と言うことだな」
「そう思っていただけたらありがたいですね。他にもまともな冒険者はいると思いますから。ではそろそろ──」
「おお、済まんな。長らく引き留めてしまった」
「いえ、今度時間があればまた色々教えてください」
「承った。では、またな」
「はい、では失礼します」
サンショウさんと別れてサラさんの家に向かう。
例のプレイヤーだけでなく、他にもやりたい放題のプレイヤーはいるんだろうな。
でも、きっとそれを止めようとするプレイヤーもいるはず。
……いつかは、町に行ってみたいところだな。人混みは好きじゃないが、様子くらいは見ておいた方がいいような気がしてきたし。
村に入って突き当たりにある、屋根が桜色の家──サラさんの家に到着した。
早速、軽めにドアをノックするが反応がない。
留守なのかと思ったが、耳を澄ますと若干だが家の中で物音がする。
もう夜だし、警戒してるのかもしれないな。
「こんばんは~。遅い時──」
ガタガタッ!! バタンッ!
……なにやら大きな物音がしたが、大丈夫かな?
などと思っていると、バタバタと走る音が聞こえた。
と、次の瞬間目の前のドアがバン! と音を立てて開き、タンジーが出迎えてくれた。
……と言うか、そんなに走ってこなくても……
「お、お兄さん、お帰り!」
「お、おう。ただいま……?」
勢いに飲まれてただいまとか言っちゃったよ……
「いやいや、ただいまじゃないよな……こんばんは、タンジー」
「こんばんは! お兄さん、いつ来るかな~ってずっと思ってたから、ついお帰りって言っちゃった」
そう言って照れたような笑いを浮かべながら舌を出すタンジーを見て、俺は戦慄した。
(これが……本物のてへぺろってやつなのか!)
「あっ、おにいちゃんだ! こんばんは!」
我に返った俺がその声の方へ視線を向けると、相変わらずムキムキなセージ君が視界に映ったが……
あまり元気が無いように見えるな。
いい笑顔だし、声がかすれてるとかじゃないんだけど……なんと言うか、筋肉が萎れて見えるというか……
「やあ。セージ君もこんばんは。食事はしっかり摂ってるかい?」
そう聞くと、タンジーとセージ君は目を見合わせて苦笑した。
これはもしかして……
「じつは……セージはあんまり食べれてないんだ……わたしは、ちゃんと食べてるけど」
「おにくがぜんぜんでなくて……だんだんたべれなくなっちゃった……」
えぇ……サラさんにお金は返したはずなのに……?
セージ君が元気無さそうに見えたのはそれが原因か。
肉がなかったら力が出ないというのは何となくわかるが、筋肉が衰えるほどとは……
「それよりお兄さんとブレンちゃん、うちによってって! なんだか、つかれたかおしてるよ!」
いつの間にかタンジーが俺の腕を掴んでいて、室内に引っ張りこまれてしまう。
「ちょっ、タンジー! わかった、わかったから引っ張らないでくれ!」
タンジーに引っ張られつつ食事をする部屋に入ると──
そこには、おでこに痛々しいたんこぶができているサラが居た……
凄く助かったし、お礼を言わないとな。
「門番さん、お疲れ様です。教えて貰った花畑ですが、どうにか無事にたどり着けました。本当にありがとうございます!」
「お、さっきの冒険者さんか。それはよかったな!」
この人は明らかに俺より年が上であろうと思われる貫禄があるけど、偉ぶった感じがなくて話しやすいな。
「遅いから今日は帰って来ないかと思っていたぞ。ちなみに俺はサンショウと言うんだ」
「サンショウさんですね。自分はリョウと言います。こっちは相棒のブレンです。森で色々ありまして……」
「リョウとブレンだな。丁寧にありがとよ。まあ森は色々な魔物がいるし、無事に帰ってきただけ大したもんだよ」
サンショウさんか。名前覚えるのは苦手だが、しばらくこの村にいることになりそうだから、覚えておかないと。
「サラさんがな、お前さんが戻ってきてないかと何度か聞きにきてたから、あとで顔を出してやってくれないか?」
「サラさんが、ですか? 一応この後行く予定ではありましたが……何かあったのでしょうか?」
ログインしてから森に入るまでに声とかかけてないし……なぜ森に行ったことがバレてるんだ……?
「いや、たまたま村を出るのを見かけたらしいぞ。それで、いつ戻ってくるか気になって様子を見にきていたんだとさ」
……今度から、声をかけてから出た方がいいのかもな。
「分かりました。ではこの後すぐ向かいますよ」
「そうしてくれたら助かる。あの人も子供達も、恩人であるリョウの事が気になって仕方ないみたいだからな」
「……えっ? 俺の事、知ってるんですか!?」
タンジーの事はともかく、セージの事は知ってる人は少ないと思っていたが……
「そりゃ、サラさんもタンジーも自慢するようにみんなに話してるからな。名前までは聞いてなかったが、リョウが何をしたかは村のみんなが知ってると思うぞ」
……えぇ…………まぁ小さい村だし、噂が広がるのは仕方ないとは思うが、話して回らなくてもいいだろうに……
「ははっ! 目立つのは嫌だって顔してるぞ?」
「そりゃそうですよ……俺としてはできることをやっただけですし」
「リョウは良い意味で変わってるな。以前村に来た冒険者達はやりたい放題だったというのに」
どうやら、その冒険者達は村中の壺や樽を割ろうとしたり勝手に家に入って部屋を漁ったりと酷かったようだ。
……恐らくは、以前俺が倒したプレイヤーの一行だろう。
「自分は、こういう性格なだけですよ」
「ふむ……冒険者全てが、誤った価値観を持っているわけではない。……と言うことだな」
「そう思っていただけたらありがたいですね。他にもまともな冒険者はいると思いますから。ではそろそろ──」
「おお、済まんな。長らく引き留めてしまった」
「いえ、今度時間があればまた色々教えてください」
「承った。では、またな」
「はい、では失礼します」
サンショウさんと別れてサラさんの家に向かう。
例のプレイヤーだけでなく、他にもやりたい放題のプレイヤーはいるんだろうな。
でも、きっとそれを止めようとするプレイヤーもいるはず。
……いつかは、町に行ってみたいところだな。人混みは好きじゃないが、様子くらいは見ておいた方がいいような気がしてきたし。
村に入って突き当たりにある、屋根が桜色の家──サラさんの家に到着した。
早速、軽めにドアをノックするが反応がない。
留守なのかと思ったが、耳を澄ますと若干だが家の中で物音がする。
もう夜だし、警戒してるのかもしれないな。
「こんばんは~。遅い時──」
ガタガタッ!! バタンッ!
……なにやら大きな物音がしたが、大丈夫かな?
などと思っていると、バタバタと走る音が聞こえた。
と、次の瞬間目の前のドアがバン! と音を立てて開き、タンジーが出迎えてくれた。
……と言うか、そんなに走ってこなくても……
「お、お兄さん、お帰り!」
「お、おう。ただいま……?」
勢いに飲まれてただいまとか言っちゃったよ……
「いやいや、ただいまじゃないよな……こんばんは、タンジー」
「こんばんは! お兄さん、いつ来るかな~ってずっと思ってたから、ついお帰りって言っちゃった」
そう言って照れたような笑いを浮かべながら舌を出すタンジーを見て、俺は戦慄した。
(これが……本物のてへぺろってやつなのか!)
「あっ、おにいちゃんだ! こんばんは!」
我に返った俺がその声の方へ視線を向けると、相変わらずムキムキなセージ君が視界に映ったが……
あまり元気が無いように見えるな。
いい笑顔だし、声がかすれてるとかじゃないんだけど……なんと言うか、筋肉が萎れて見えるというか……
「やあ。セージ君もこんばんは。食事はしっかり摂ってるかい?」
そう聞くと、タンジーとセージ君は目を見合わせて苦笑した。
これはもしかして……
「じつは……セージはあんまり食べれてないんだ……わたしは、ちゃんと食べてるけど」
「おにくがぜんぜんでなくて……だんだんたべれなくなっちゃった……」
えぇ……サラさんにお金は返したはずなのに……?
セージ君が元気無さそうに見えたのはそれが原因か。
肉がなかったら力が出ないというのは何となくわかるが、筋肉が衰えるほどとは……
「それよりお兄さんとブレンちゃん、うちによってって! なんだか、つかれたかおしてるよ!」
いつの間にかタンジーが俺の腕を掴んでいて、室内に引っ張りこまれてしまう。
「ちょっ、タンジー! わかった、わかったから引っ張らないでくれ!」
タンジーに引っ張られつつ食事をする部屋に入ると──
そこには、おでこに痛々しいたんこぶができているサラが居た……
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