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2章 村での生活
16話 カイエンナッツに秘められた思い
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守護樹だったカイエンナッツは、残った力の全てを自身の実に込めてドリアドネさん達に渡した。
そんな力を込められた木の実の種子だ。
守護樹の意思を……想いを引き継いでいてもおかしくはない。
その考えが正しければ、カイエンナッツ自身がろくに育たず周りに花が咲き乱れているこの状況……
しかもよくよく見れば、所々にカイエンナッツと同じくソラニンを含んでいそうなナス科の花が多く咲いているのを見るに──
カイエンナッツの苗は、ドリアドネさんのためにこの花畑の成長を促した……そう考えることもできる。
ドリアドネさんの特殊な根を使えばソラニンも簡単に吸い出せるし、それを取り入れることで体を維持することが可能なんじゃないだろうか……?
まあ、当のドリアドネさんにそういう考えがないみたいだから……意図は全く伝わってないみたいだけど。
《カイエンナッツの芽が出て半月……未だに成長がほとんど見られず、私は半ば自分の命を諦めてましたの……でも、リョウさんのお力でこうして苗が無事に育って──》
そこまで言うと、ドリアドネさんは再び涙を浮かべた。
俺にはその表情が、何かを恐れているように見えた。
《安心するのと同時に……まだ消えたくない、このままカイエンナッツの行く末を見届けたい……そんな想いが、強く沸き上がってきてしまって……》
《ドリアドネさん……》
ブレンはドリアドネさんの肩に止まって、慰めているようだ。
しかし……助かる可能性が見えてきたからこそ、命を失うのが恐ろしくなってしまったのかも知れないな。
でも、俺の予想が間違ってないならドリアドネさんは助かるはずだ。
そのためには──
「ドリアドネさん、諦めるのはまだ早いかもしれない」
……え……?
戸惑っているブレンとドリアドネさんに、俺は近くにあるじゃがいもの花に似たナス科の花を指し示した。
「この花が咲いてる植物なんだけど、恐らく全草にカイエンナッツと同じ成分をもってる。この植物の体液を、吸収してみてもらえないかな」
《カイエンナッツと同じ成分……! わ、私……助かるかもしれませんの!?》
「正直、やってみないと分からない。でも、やる価値はあると思う」
《いま、すぐにやりますわ!》
《ひゃっ!?》
そう念話で言うと同時に、瞬間移動したかと思うほどの速度で植物の真横に来たドリアドネさん。
あまりの勢いに、ブレンは肩から振り落とされてしまった。
驚く俺達を気にも止めず、根を使って草の全ての水分を抜き出すと──
ドリアドネさんは根を口元まで伸ばし、勢いよく口に咥え込んだ。
えぇ……ワイルドすぎる……
ごくごくと喉を鳴らしているドリアドネさんだが……
あの植物、そんなに水分無いと思うんだけど……?
俺が細かいことを疑問に思っていると、ドリアドネさんの全身がうっすらと光り始めた。
……もはやなにも言うまい。ソラニンを含んでいると思われる草の汁を飲んだだけで光るとか……
《これは……! 力が漲って来ましたわ!》
……うん、余計な事は言わないでおこう。喜んでそうだし。
「良かった。やはりソラニンさえ摂取すれば、身体の維持に問題はなさそうかな?」
《はい! ……こんな身近な花に、私達の命の源が含まれているなんて……思いもしませんでしたわ》
まあ、そうは言っても……俺がここに来るまでの間に、ソラニンを含んでいそうなナス科の植物は見当たらなかった。
カイエンナッツがドリアドネさんのために咲かせたと思われる、この花畑があればこそだろうな。
ここにある花があれば、カイエンナッツの実がなるまでドリアドネさんの命を持たせることは可能だろう。……だが──
「ドリアドネさん、あちこちに散っていった同種の仲間達に連絡する方法とかってあります?」
《!! そうですわ! すぐに念話で知らせなくては!》
ドリアドネさんの数によっては、うまく分けないと植物が足りなくなってしまうかもしれない……
《十八人、みんな連絡つきましたわ! すぐにこちらに向かって来るみたいですの!》
ドリアドネさんは念話をしながら教えてくれたが、仲間との連絡を取るのが大変そうだ。
でも……悲しい笑顔はなくなって、明るい笑顔になっているから、もう心配は要らないかな。しかし──
「十八人か……」
俺はぼそっと呟き、花畑をチェックしようとしたが、そこにブレンから念話が。
《リョウさん、ナス科の植物なら、ここにいるドリアドネさんを含めても全員が三回分吸えるだけの数がありますよ!》
「おお……ブレン、ありがと。それなら大丈夫そうだね」
俺は先に数えてくれたブレンに、腕を差し出した。
ブレンは腕に止まると、肩まで伝ってきて一息ついた。
《これで心配は無くなったと思っていいんでしょうか?》
「当面は大丈夫かな。念のため、結実を促す活力剤も作ろうかとは思ってるけど……それはまた後日でいいと思う」
《……次はあんなに本気で作ったらダメですからね?》
「そうは言うけどさ……俺、うまく加減するのって苦手なんだよ……なんだか手抜きしてるような感じがして……」
《リョウさんって、色々と器用なのに……所々すごく不器用ですよね……》
それは言わないで……心にグサッと来るから……
そんな力を込められた木の実の種子だ。
守護樹の意思を……想いを引き継いでいてもおかしくはない。
その考えが正しければ、カイエンナッツ自身がろくに育たず周りに花が咲き乱れているこの状況……
しかもよくよく見れば、所々にカイエンナッツと同じくソラニンを含んでいそうなナス科の花が多く咲いているのを見るに──
カイエンナッツの苗は、ドリアドネさんのためにこの花畑の成長を促した……そう考えることもできる。
ドリアドネさんの特殊な根を使えばソラニンも簡単に吸い出せるし、それを取り入れることで体を維持することが可能なんじゃないだろうか……?
まあ、当のドリアドネさんにそういう考えがないみたいだから……意図は全く伝わってないみたいだけど。
《カイエンナッツの芽が出て半月……未だに成長がほとんど見られず、私は半ば自分の命を諦めてましたの……でも、リョウさんのお力でこうして苗が無事に育って──》
そこまで言うと、ドリアドネさんは再び涙を浮かべた。
俺にはその表情が、何かを恐れているように見えた。
《安心するのと同時に……まだ消えたくない、このままカイエンナッツの行く末を見届けたい……そんな想いが、強く沸き上がってきてしまって……》
《ドリアドネさん……》
ブレンはドリアドネさんの肩に止まって、慰めているようだ。
しかし……助かる可能性が見えてきたからこそ、命を失うのが恐ろしくなってしまったのかも知れないな。
でも、俺の予想が間違ってないならドリアドネさんは助かるはずだ。
そのためには──
「ドリアドネさん、諦めるのはまだ早いかもしれない」
……え……?
戸惑っているブレンとドリアドネさんに、俺は近くにあるじゃがいもの花に似たナス科の花を指し示した。
「この花が咲いてる植物なんだけど、恐らく全草にカイエンナッツと同じ成分をもってる。この植物の体液を、吸収してみてもらえないかな」
《カイエンナッツと同じ成分……! わ、私……助かるかもしれませんの!?》
「正直、やってみないと分からない。でも、やる価値はあると思う」
《いま、すぐにやりますわ!》
《ひゃっ!?》
そう念話で言うと同時に、瞬間移動したかと思うほどの速度で植物の真横に来たドリアドネさん。
あまりの勢いに、ブレンは肩から振り落とされてしまった。
驚く俺達を気にも止めず、根を使って草の全ての水分を抜き出すと──
ドリアドネさんは根を口元まで伸ばし、勢いよく口に咥え込んだ。
えぇ……ワイルドすぎる……
ごくごくと喉を鳴らしているドリアドネさんだが……
あの植物、そんなに水分無いと思うんだけど……?
俺が細かいことを疑問に思っていると、ドリアドネさんの全身がうっすらと光り始めた。
……もはやなにも言うまい。ソラニンを含んでいると思われる草の汁を飲んだだけで光るとか……
《これは……! 力が漲って来ましたわ!》
……うん、余計な事は言わないでおこう。喜んでそうだし。
「良かった。やはりソラニンさえ摂取すれば、身体の維持に問題はなさそうかな?」
《はい! ……こんな身近な花に、私達の命の源が含まれているなんて……思いもしませんでしたわ》
まあ、そうは言っても……俺がここに来るまでの間に、ソラニンを含んでいそうなナス科の植物は見当たらなかった。
カイエンナッツがドリアドネさんのために咲かせたと思われる、この花畑があればこそだろうな。
ここにある花があれば、カイエンナッツの実がなるまでドリアドネさんの命を持たせることは可能だろう。……だが──
「ドリアドネさん、あちこちに散っていった同種の仲間達に連絡する方法とかってあります?」
《!! そうですわ! すぐに念話で知らせなくては!》
ドリアドネさんの数によっては、うまく分けないと植物が足りなくなってしまうかもしれない……
《十八人、みんな連絡つきましたわ! すぐにこちらに向かって来るみたいですの!》
ドリアドネさんは念話をしながら教えてくれたが、仲間との連絡を取るのが大変そうだ。
でも……悲しい笑顔はなくなって、明るい笑顔になっているから、もう心配は要らないかな。しかし──
「十八人か……」
俺はぼそっと呟き、花畑をチェックしようとしたが、そこにブレンから念話が。
《リョウさん、ナス科の植物なら、ここにいるドリアドネさんを含めても全員が三回分吸えるだけの数がありますよ!》
「おお……ブレン、ありがと。それなら大丈夫そうだね」
俺は先に数えてくれたブレンに、腕を差し出した。
ブレンは腕に止まると、肩まで伝ってきて一息ついた。
《これで心配は無くなったと思っていいんでしょうか?》
「当面は大丈夫かな。念のため、結実を促す活力剤も作ろうかとは思ってるけど……それはまた後日でいいと思う」
《……次はあんなに本気で作ったらダメですからね?》
「そうは言うけどさ……俺、うまく加減するのって苦手なんだよ……なんだか手抜きしてるような感じがして……」
《リョウさんって、色々と器用なのに……所々すごく不器用ですよね……》
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