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2章 村での生活

11話 とある冒険者達の遭遇 ②

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 ジアスが調査に没頭しているとき、フロンドは弓から両手剣に持ち変え、接近戦で森狼フォレストウルフの群れと交戦していた。


(くっそ、ほとんど攻撃が当たらない! 相手の攻撃後の隙を狙ってんのに、こんなに当たらないなんて……! 流石は俊敏さが売りの、狼だなっ!)


 内心毒づきながらも、相手の隙を見つけては斬りかかるが、精々掠るのがやっとだ。
 ──と、ふいに視界に捉えていた森狼フォレストウルフの数が一匹少ないことに気付く。


(やべ……一匹見失った!? 不意打ちも怖いが、ジアスの方に行ったらヤバイ!)


 フロンドは両手剣を全身のバネを使って大振りで横に振り回し、森狼達との距離を強引に空けた。
 その隙に視線だけでジアスを探すと、一匹の森狼がジアスのすぐそばに──


(ヤバッ! マジでジアスの方に行ってた! 助けに行かな……い…………と……?)


 一瞬、唖然として棒立ちになってしまうほどに、衝撃的な光景がフロンドの目に映り込んだ。
 戦闘は好きではないと言っていたジアスが、木の棒と木の実を使って森狼をおちょくるような行動をしていたからだ。


(なんだあれ……まるで犬とじゃれ合ってるみたいなノリで、森狼を手玉に取ってるぞ……)


 ジアスは、至近距離で森狼が飛びかかろうとすると目の前で手を叩いて怯ませる。

 茂みに隠れようとジアスから視線を逸らすと、木の棒を投げつけて怯ませる。

 離れた所から飛びかかってきても、森狼の顔に木の実を投げつけて怯んだ隙に回避という、からかっているとしか思えない行動を繰り返していた。

 心なしか、森狼がぐったりとしているようにすら見える。
 フロンドは森狼達と一定の距離を保ちながら、ジアスの様子をチラ見していたが、森狼が突進してきたので回避行動をとった。


(おっと、危ね……あの戦い方はとても真似できそうにはないが、俺にも出来そうなやり方があるな)


 バックステップして森狼と距離を空けると、右側に回り込んでいた他の森狼が飛びかかってきたが──


「ふっ!!」


 フロンドは、両手剣を左下に降ろしつつ僅かに後ろに下がって森狼の攻撃の斜線から外れると、掬い上げるように両手剣を振り上げた。
 飛びかかって来た森狼の顎めがけて振り上げた一撃は、確かな手応えと共に森狼を切り裂いた。
 地面に落ちた森狼は、一瞬の間を空けてアイテムへと姿を変えた。


(おっし! クリティカルで決まった!! やっぱりクリティカル出ると、テンション上がるなぁ!)


 フロンドはジアスの戦い(?)を見ていて、森狼に行動前や飛びかかるときにできる隙があるのに気付いたようだ。
 素早い森狼の弱点を見つけることが出来たフロンドは、上がったテンションのままに、残りの森狼をあっさりと倒すことができた。


(ふう……さて、ジアスの方はどう……って、なんで倒してないんだ!?)


 森狼の群れを倒したフロンドがジアスを探すと、離れた場所にジアスはいたのだが……
 ジアスは、弱りきった森狼を倒すことも逃がすこともせず、未だに戦って(?)いた。


「お、そっち終わった? お疲れ~!」

「お、おう……お疲れ。……じゃなくて、そいつ倒さないのか?」


 ジアスがこちらに向き直ると、森狼はもはや動き回ることも辛いようで、全身を投げ出すようにして地面に倒れ込んでしまった。
 舌を出し、ぜえぜえと苦しそうにしている森狼。
 フロンドが近付くと牙をむき出しにして唸るが、攻撃する気は無さそうだった。


「あ~……正直困ってるんだよね。 なんか愛着わいちゃってさ!」

「愛着って……具体的にはどうすんの……? テイムする方法とかあるの?」

「そんなことは知らん!」

「……はぁ……」


 呆れたフロンドだったが、念のためにと周囲を索敵すると──


(え"……この森狼、敵性反応じゃなくなってる!?)


 周囲に敵性反応がないばかりか、目の前の森狼からも敵性反応が消えていた……

 普段索敵をすると、モンスターは黄色に、明らかな敵意がある者は人でもモンスターでも赤く表示されるのだが……
 この森狼は、むしろ青い……味方の反応を示していた。


「じ、ジアス……さん、そいつ味方の反応になってるぞ……」

「へぇ~」

「反応薄っ!!」

「だって、正直こいつが敵か味方かってことに、あまり興味が湧かなくってさぁ。どっちにしても、倒す気は全くないからね」


 敵意を示す赤い反応になっていたモンスターが、味方になるなんてあり得ないことのはずなのだが、ジアス的にはあまり興味はないらしい。


「あっ、今の戦闘でそこそこ時間取られちゃったし、早く先に進もう! 拾い物する時間無くなっちゃう!」

「えっ……この森狼はどうすんの!?」

「スルーで! 餌になりそうなもんもないし!」

「ええぇ……愛着湧いたんじゃないのかよ……」


 よほど先に進みたいのか、森狼をスルーして先に行こうとするジアス。
 森狼……すっげぇこっちをガン見してるんだが……というか、目が潤んでないか……?
 なんか、可哀想なんだが……


「ジアス、さん。放置するのは流石に可哀想って言うか……」

「うーん、それもそうか!」


 そう言うと、ジアスは森狼の前まで戻ってきて──


「お疲れっ! 元気でな! じゃっ!」


 そう声をかけると、あっさり森の奥へ向かってしまう。
 これは、なにを言っても無駄っぽいな……


「なんか、連れが悪いことしたな……よかったらこれ、食ってくれ」


 フロンドはストレージから携帯食の干し肉を出すと、森狼の前に軽く放り投げた。
 投げたのは、近付いたら噛まれそうだったからだ。
 後ろを振り向くと、既にジアスはかなり離れていたので、慌てて後を追うのだった。


 その後も二人は森の探索を続け、様々な素材を手に入れていた。

 ジアスが土にほとんど埋まっている素材などをめざとく見つける度に、フロンドは呆れながらも、密かにテンションが上がっていた。
 なぜなら、ジアスが──


「ダブってるもので欲しいのがあったら、いくつかおまけで進呈しよう!」


 そう、報酬を増やしてくれると言ったからだった。
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