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2章 村での生活

2話 森の中の花畑

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 到着した花畑は爽やかな香りで満たされていて、多種多様な花達が見事に咲き乱れている。
 しかし、これだけ咲いていてよく栄養が持つな……
 見た感じは赤土っぽくて、あまり肥料要素が無いように思える。
 現実なら、こういう土には肥料をあげたりしないと咲き続けるのは不可能なんだがなぁ。


《リョウさん見てください! あちらに道があって、花畑の中心まで行けそうですよ!》

 ブレンのテンションも高いな!
 俺もこれだけ花が咲き乱れてるのを見ることはあまりないから、多少は高揚してるけどさ。
 苦笑しながらブレンの示す方向を見ると、確かに道がある……んだが。

 なんだ……?
 なんかすごい違和感を感じる……?
 まるで人が手を加えたかのように整った道なんだけど……
 足跡は一つもなくて、踏み固められてるわけでもなくふかっとした土だ。
 赤土はかなり固まりやすくて、ふかふかになる土ではないのだが……

 それに、こんな森の奥に花が咲き乱れるほど肥沃な土地があれば、多少なりとも獣達に荒らされた跡があるはずだが……
 荒らされた跡どころか、足跡すら全く見当たらない。
 まるで、ここだけ違う空間みたいだ……


 《リョウさ~ん! ここなら花畑全体が見渡せますよ! 来ないんですか~?》

 俺が考え込んでる内に、ブレンは飛んでいってしまっていたようだ。
 悩んでいても分からないし、とりあえず行ってみよう。


 花畑にある道は縦と横に一本ずつあり、中央で交差している。
 よくよく見たら花畑を囲うように一周してる細い道もあるな。
 なにかが、ここを管理しているのは間違いないだろうけど……
 おそらく、人ではない……と思うが。

 警戒しながらふかふかな道を歩いていると、なにか足元──
 いや、土の下に違和感を感じた。
 なんと言うか……一瞬だけ、足で太い線を踏んだときみたいな感触が……


《そんなに警戒しなくても、周辺に敵意は感じませんから大丈夫ですよ!》

 思わずびくっとしてしまった……
 いつの間にか俺の横にブレンが飛んできていたみたいだ。


「そっか、敵意はないのか。なら、問題はないのかな……」

《リョウさんは、さっきから何を警戒してるんですか?》

「いや、ここの花畑……色々違和感があるからさ」

《違和感……ですか?》

「うん。まず、これだけ花が咲いているのに雑草が見当たらないし、土自体にあまり肥料要素があるようには見えないんだ」
《あっ、確かに雑草が無いです!》

「だろ? それにこの道ふかふかで、花が傷まないようになってる。つまり、きっちり整備されてるんだ。だけど、足跡が一切見当たらない」

《飛んでいたから地面は気にしてませんでした……確かにふかふかみたいですね》

「それに、花畑全体が綺麗すぎる。森の中でこんなに花が咲いていて獣が来てないなんて不自然すぎるんだよ。普通はもっと荒れているはずだろ?」

《獣が嫌いなものが生えていたりするんでしょうか?》

「いや、おそらくここを管理している何かがいると思う」

《何かって……?》

「状況からして人ではないと思う。魔法を使えばできるかもしれないけど……俺は土にかなり縁がある生き物だと思う。何か心当たりはないかな?」

《森の奥の荒れてない花畑……周囲の土はみんなふかふかで傷んだ植物がない……蚯蚓のモンスターとかでしょうか? もしくは──》

 ブレンがなにかを言おうとしたが、何かが近付いてくる振動が伝わってくる。
 警戒して周囲を見回していると、遠目に熊が突進してくるのが見えた。


《リョウさん! ここで戦ったら花畑が荒れてしまいます!》
「ああ! 急いで出よう!」

 ブレンは肩から飛び立ち、俺も慌てて花畑から出ようとするが、既に熊は花畑のすぐ前まで来てしまっている。
 こうなったら槍を投げて牽制を──

 俺が槍を構えると同時に、熊が花畑に足を踏み入れた──


「グォォオゥ!?」


 熊が花畑に入った……と思った瞬間、熊は地面から突如生えてきた根? のようなものに腹部を貫かれた。


 熊は腹部を貫かれたまま、さらに伸びた根のような物によって一メートルほど地面から持ち上げられている。
 にも関わらず、暴れて脱出しようとしている。
 大したしぶとさだな……だが、弱ってはいるようだな。


《リョウさん、今のうちに倒してしまった方がいいと思います》

 少し離れたところでホバリングしているブレンがそんなことを言ってきた。
 え……下手に動いたら俺もああなるんじゃ……?

「今動いたら俺も危ないんじゃ……?」
《大丈夫です! こちらには一切敵意はないですから!》

 いや、それは俺が動いてないからでは……?
 俺が動くのを躊躇していると、ブレンは肩に飛んできて──

 ガッ!!

「い"っだぁぁ!?」

 頬をおもいっきりつつかれた俺は悶絶するが……

《いいからさっさと仕留めてください! せっかくのチャンスなんですから!!》

 うぅ……容赦無さすぎだろ……
 痛みはあるが、槍を握り直して気持ちを切り替える。
 あの根みたいなやつは怖いが、ブレンを信じるしかないよな……っ!


 俺は熊に走り寄りながら、右手で槍の柄ギリギリを掴んで限界まで引き絞る。
 左手は柄に添えるようにして狙いを定めて──

「うおおぉぉ!!」

 全体重をかけて一気に槍を突き出す!
 突き出した槍は若干の抵抗を感じたが、熊の頭部を貫通した。
 それと同時に熊は消滅して、ドロップアイテムを残した。

 レベルアップのアナウンスが聞こえるが、俺は技の硬直が解けてすぐに構え直して周りの気配をうかがった。
 さっきの根みたいなものがどこからか出てくるかもしれない。
 熊をあっさり貫くようなものに攻撃されたら、俺なんか一撃だろう……
 こめかみをだらだらと汗が流れる。

 どれくらいの間、そうして構えていたのか……
 気が付いたらブレンが肩に止まっていて、軽く肩をつついていた。
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