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1章 冒険の始まり
32話 ついに完成!
しおりを挟む三十分ほどで作業は無事に終わったらしく、
クレソンさんが完成した槍を俺に差し出してきた。
「リョウさん、タンジーちゃんお待たせしたね。この通り、槍は無事に完成したよ!」
「ありがとうございます!」
「お兄さん、よかったね!」
《リョウさん、良かったですね!》
完成した槍を受け取り、喜んでいると──
「おっと、まだ喜ぶのはちょっと早いぞ?」
そう発言したクレソンさんの表情は、真面目そうな顔だ。
どうやら、からかっている訳じゃないみたいだな。
「穂先を作る前、俺が柄を持って構えたら重量が増加して床にめり込んだろ?」
「確か、柄が俺以外に装備されたくなかった……というやつですよね?」
「そうだ。だが、先程作った穂先を付けて、仕上げを丹念に行っている。もはや別物になっていると言っていいはずだ」
つまり、もしかしたら俺も同じようになる可能性があると言いたいのだろうか?
「おそらく大丈夫だとは思うが、まずは装備してみてもらえないか?」
「……わかりました」
俺は少し緊張しながら、槍を装備するためにメニューを開き、まずは装備変更、次に右手を押すと一覧には
『柄が決め手のアイアンスピア』
という名前が──
「いや、ちょっと待った……この名前、なんなんですか!?」
俺はジト目でクレソンさんを見ると、クレソンさんは焦ったように反論してきた。
「まてまて、言っておくがな、俺が付けた訳じゃないぞ! 完成した時にはこの名前だったんだ!」
「……本当ですか?」
「俺の命に誓って本当だ! ……俺もたくさんの武具を作ってきたが、こんな名前は初めてなんだ」
さっきまでの緊張が壊れるような、なんとも気の抜けた名前だ……
今後槍を見るたびに気が抜けそうだが、良く考えたら最近もこんなことがあったような……?
《リョウさん、ポーションの時と同じですね……》
…………ああ、それか!!
とすると、この名前は俺が関わったからこんな名前に……?
「クレソンさん、疑ってすみませんでした……原因は自分が鍛冶に関わったからかもしれないです……」
「いやいや、それもおかしな話だろ。誰が関わろうと──」
無言で一旦メニューを戻し、アイテム欄からポーション達を出して作業台の上に置く。
「これらの名前……見てください」
「ポーションか? 武具と違って名前はつけれないから、名前なんてみんな同……じ……?」
「へんななまえばっかりだ!!」
クレソンさんは一つのポーションの名前を見て、口を開いたまま固まった。
横から覗き込んでいたタンジーは「おもしろーい!」と言って、次々に名前をチェックしている。
「リョウさん、こいつは一体どうしたんだ……?」
「全て俺が作成したポーションなんですが、なぜか全部こんな感じで……」
「…………なんだそりゃ……」
ポーションを作ったことを説明すると、クレソンさんは脱力してこちらを見た。
「つまり、槍があの名前になったのは……本当にリョウさんが関わったからなのか」
「おそらく、ですけどね」
「……じゃあ、あれか? 今後リョウさんが武具を作ったら、みんなこうなるってことか!?」
「俺だってわかりませんってば!!」
そんなに詰め寄られて聞かれたって俺にも分からん!
筋肉さんもそんなに暴れないで! マジで怖いんだから!!
また話が脱線してしまったが、今度こそ槍を装備するため再びメニューから
『柄が決め手のアイアンスピア』
を選ぶ。
余談だが、クレソンさんに聞いたところ、一度なら名前を変える(あだ名みたいな感じだが)ことは出来るらしい。
あとで必ず変えてもらおう。
装備前に詳細を表示してみると。
『柄が決め手のアイアンスピア』
〖攻撃力30 攻撃速度-30% 耐久値80
リョウの為に作られた槍。
他の者には装備することが出来ず、無理矢理装備したり盗むことで重量が異常に増加する。
重量が増加した際には体から離せなくなり、リョウが外すまで地面に縫い付けられるだろう。
両手で持つことで、攻撃力+1.5倍 攻撃速度+15%
製作者 クレソン リョウ タンジー〗
相当強いな……確かに、これはもはや別物だ。
さて、いよいよ装備だ。
詳細の下に『タップして装備』があるので、タップすると──
一気に重量が増加した。
重いっ……持っているのがやっとだ……!
まさか本当に別物に──
「リョウさん、つかぬことを聞くが……筋力値はいくつだ?」
「……え……?」
《……はぁ、まだ割り振ってないから一のままですよね?》
「一のままです……」
クレソンさんはそれを聞いて、あきれた顔を浮かべながら頭を押さえた。
ブレンは、肩をガツガツ突っついてくる。地味に痛い……
タンジーは「お兄さん、どんまい!!」と励ましてくれた。
これは……かなり恥ずかしいぞ……!
一旦槍を装備から外して作業台に置き、STR(筋力)に十ポイント割り振ってから再び装備する。
何の問題もなさそうだ……
「えっと、無事装備できました……」
「……だろうな」
「良かったね! お兄さん!」
《そうでしょうね……》
タンジー以外は呆れ顔だった。
うぅ、すみませんでした……
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