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1章 冒険の始まり

22話 危険なプレイヤー※※

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 武具屋を飛び出した俺は、よく分からないことが多すぎて頭を抱えた。
 あの武具屋の女性は、おそらく俺の身近で起きた異変について知っている。
 だが、今は言うことが出来ないという……つまり、何者かに制限されているか、信用が足りないということだろうか?


「お兄さ……おこ……るの? 大……?」

 まあ、まだ村に来たばかりだし……信用なんかあるわけないよな。
 修理は無料でしてくれたが、あれはあくまでもお礼だったからな。


「お兄さ……きこえ……? おに……ーん!」

 とりあえず、さっき妙に嫌な感じがしたから、一旦宿に戻ってブレンに相談しようかな──

「お兄さんってば!」
「うわっ!?」

 突然耳元で大声を出されて、後ろに倒れてしまった。


「いてて……びっくりしたなぁ……」
「もうっ! やっと気づいてくれた?」

 顔を上げると、そこにはかなり怒った顔のタンジーが……


「お兄さん、何回よんだと思ってるの? かんがえこむなら一人のときにしてほしいんだけど!」
「えっ、ごめん! 全然聞こえてなかった……」

 そういえば、考えてる時なにか聞こえていたような?
 ……集中しすぎてほぼ聞こえなかったし、気にもしてなかった……
 反省しなくては……


「本当にごめんな……」
「……おこってるのかと思って、しんぱいしてたんだよ? いきなりお店出てっちゃうし……」

 そっか……俺、女性に挨拶とお礼言って、返事も聞かずにすぐ出てきたんだっけ……
 そりゃ、周りから見たら怒ってるようにも見えるか。


「怒っていた訳じゃないんだ」

「そうなの?」

「うん。ただ、昨日からよく分からないことやおかしいことが沢山あってね……ちょっと混乱しちゃってさ」

「こんらん? っていうのはよく分からないけど……からだがよくないってことだよね?」

「うん……まあ、間違ってはいないかな」

「じゃあ、あんないはまたこんどにして、うちでいったん休んだ方がいいかも!」

 いや、あの状態のサラさんがいたら休まらないような気がする……
 でも、セージ君の様子は見ておきたいかな。


「タンジーちゃんの家で休むかどうかはともかく、セージ君の様子は見たいな」

「わかった! じゃあうちに行こうよ!」

 返事も聞かず、タンジーは走り出した。
 って、走るのかよ!?


「タンジーちゃん! 転んだら危ないから!」

 慌てて追いかけるが、


「先に行って、お母さんに言っておこうと思って!」

 一瞬こちらを振り向いて返事をしたタンジーだが、そこに鍛冶屋? から出てきた人が……


「……ったく、なんだよあのAI野郎! 人が依頼してんのに断りやがって──」


「ちょっ! タンジー! 危ない──」

 ガツッ
「うおっ!?」「ぁ……」

 全身鉄らしき素材で出来た装備をまとった男性に、タンジーは全力で突っ込んでしまった……
 タンジーは顔面から鉄の鎧にぶつかり、その場で横に倒れてしまった。
 ぶつかられた人も、ガシャッと音を立てて尻餅をついてしまったようだ。


「タンジー! 大丈夫か!?」

 慌てて駆け寄って様子を確認すると、気絶していて鼻血が出ているようだった。
 ストレージからランクⅡポーション草餅が食べたくなるポーションを出して使うを選択、タンジーに触れた。
 淡い光がタンジーに降り注いだのを確認した俺は、前方で尻餅をついた人を見た。


 タンジーがぶつかった男性は、仲間が三人いたらしく既に引き起こされていたが、憤怒の表情を浮かべていた。


「なんなんだこいつは!? データの分際で人様にぶつかって謝りもしねぇのか!?」

 キレてる!? しかもデータの分際って……ここはゲームの世界だから、みんなデータだろうに。


「落ち着けって! どう見ても気絶──」
「はあ!? データごときが気絶なんかするわけねぇだろ!?」

 仲間の全身黒ずくめの男性が諌めているが、火に油だな。


「いやいや、この世界のNPCは生きてんだから──」
「生きてる!? データがか!? んなわけねぇだろ!」


 軽装の茶髪の男性も諌めるが……全否定か。
 データだとしても、表現として間違ってはいないと思うが。


「あんた、気が短すぎ……マジ萎えるんだけど」
「ああ!? ざけんな! この糞データが悪いんだろうがっ!?」


 男性は、タンジーに指をさしながら更に怒鳴り散らす。
 金髪の女性は、見るからに嫌そうな顔しているな。

 しかし、ヤバイ奴にぶつかったな……AIを毛嫌いしてるタイプか……?
 とにかく、落ち着かせなければ。


「あのっ、すみませんでした! 俺の連れがご迷惑をお掛け──」
「ああ? 連れだと? てめぇもデータか!?」

 謝ろうとするも、すぐに怒鳴り返してくる。
……俺も貴方も、アバターなんだからある意味データだぞ……まあ、今はそういうことじゃないか。


「勿論違います。ですが、この子供──」
「子供じゃねえ! あんた、見た目に騙されてんぜ? そいつは単なるデータだ」

 どこか遠くを見ているような目で、語っているが……
 こいつは、何を言ってるんだ? この世界のことを全く知らないのか?


「おい、やめとけよ……熱くなりすぎだぞ」
「言っても無駄だよ……あれは相当頭に血が登ってるし」
「うゎ……こいつマジ沸いてるわ……ドン引きなんですケド」


 仲間の人達も、かなり引いてるな。この男性だけが分かっていないのか……?


「てめぇら、ごちゃごちゃうるせぇ! 俺は知ってんだよ。AIなんて、所詮作り物の欠陥品だってな!!」

 『知ってる』と言うことは、なにかトラブルにあったことがあるのだろうか?


「……ん……? ここは……? あ、お兄……さん?」

 タンジーが目覚めたが……ある意味最悪のタイミングかもしれない……


「お? 起きやがったか欠陥データが!! てめぇのせいで防具が汚れただろうが!!」
「ひっ……なに……?」

 タンジーの態度がよほど気に入らなかったのか、男は更に激昂した。


「データごときが、人間のふりしてんじゃねぇぇ!!」
 男は剣を抜き、振り上げて──


「やめろよ!」

 俺はタンジーの前に出て、プレイヤーと向き合った。


「AIだろうとなんだろうと、子供に対する態度じゃないだろ」
「なんだてめぇ……邪魔すんな!! 俺はバグ取りをする所なんだよ!」

 これは、ダメだな。言葉が通じる状態じゃない。
 顔が真っ赤になってて、まともな受け答えも出来ない……バーサク状態にそっくりだ。


「お兄さん……」

 ちらっと後ろを見ると、タンジーはがたがたと震えている……怖いんだろうな。


「タンジー、絶対に顔を出すなよ」

 タンジーの頭をなで、再びプレイヤーに向き合う。


「バグ取りの邪魔をするなら、てめえから排除してやるよ!! 元βテスターとしてな!!」

 元βテスター? 
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