園芸店店長、ゲーム世界で生産にハマる!

緑牙

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1章 冒険の始まり

21話 謎の多い武具屋さん

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 取り出したビギナースピアを見て、あまりの耐久の低さに驚いた。


「予想していたより大分劣化が酷いわね……」


 女性は呟きながら俺の持つ槍を検分していたが、ふと顔を上げた。


「貴方、この槍の消耗具合から狼は複数いたはずだけど……素材は今あるかしら?」

「いえ、タンジーちゃんを助けて村に送ることしか考えてなかったので……拾ってないです」


 そう返答すると、女性は苦笑した。


「ますます冒険者にしてはおかしな人……でも、人としては、すごくいい人ね」


 冒険者ってのはどれだけ印象が悪いんだろう……
 俺は人助けが最優先なのは当たり前だと思っていたが……
 俺が考え込んでいると、女性はクスッと笑った。


「悪いことじゃないから、考え込まなくていいのよ? でもね……」


 女性はなにかを迷うような素振りを見せたが、真顔になると言葉を続けた。


「無茶するのはダメよ? 明らかに勝ち目の無い相手に挑むとか……ね」


 この女性ひと……どこまでわかってるんだろう。
 スキルのこともそうだし、他の村人とは全然感じが違うんだよな……


「さて、堅い話はここまでね! タンジーちゃんが待ちくたびれてるし?」

 言われてタンジーをちらっと見ると……
 退屈そうというよりはなんか……むくれてるような?


「べつに、ほうっておかれてさびしいわけじゃないもん!」


  ……寂しかったんだな。
 そっとタンジーの頭を撫でつつ

「ごめんな?」

 と謝った。俺は誰かと話し始めたり考え込んだりすると、つい周りが見えなくなっちゃうんだよな……


「ん、いいよ。あたまなでてくれたし! そういえばお姉さんは、お兄さんのぶきを見たかっただけなの?」

「あら、すっかり忘れてたわ……タンジーちゃんを助けてくれたお礼に、修理してあげようと思っていたのよ」

「しかし手持ちが──」
「もちろん無料よ? お礼なのにマネを取るわけないわ」

「いいんですか? こちらとしてはとても助かりますが……」

「当然よ。タンジーちゃんもセージ君も村の大事な子供よ。家族として、お礼くらいしたくなるでしょう?」


 村単位で家族……か。
 いいな、そういう考え方。


「では、この槍をよろしくお願いします」

「ええ、承ったわ」


 そうして槍を渡したのだが──


「……? えっ……この槍……!? ……貴方、狼以外には戦ってないのよね?」

「え、あ……はい。あとは竹を一本切った位ですが……それがどうかしましたか?」


 一体どうしたんだ? 槍を持った瞬間から、女性の様子が……?

 少しして、女性は俺達から距離を空けると目をつむり、何か集中し始めた。


「お姉さん、どうしたんだろ?」
「分からない……槍に問題があったのかな?」

「こ……に早……に意…………えるなんて……え? ……そ……そこまで……いが…………ったわ……」


 ……なんだ? 何かを呟いている? 全然聞き取れないが……

 と、そこで女性ははっとしたようにこちらを向いて、謝ってきた。


「ごめんなさいね。ちょっと気になることがあって、スキルを使って調べていたの」

「気になること、ですか?」

「でも勘違いだったみたい。ごめんなさいね。すぐ修理してくるから、ちょっと待っててね!」


 慌ただしく捲し立てると、女性は、奥の部屋へ入っていった。
 ……言いたくないことがあるみたいな感じだったな。

 この世界、隠し事してる人多くないか?




「お待たせ! 耐久値は最大まで回復したわよ!」

 数分後、奥の部屋から帰ってきた女性は槍を両手で持ち、満面の笑みを浮かべていた。
 よほど満足のいく出来だったのだろうか。


「ありがとうございます!」

「耐久値は、修理した時に劣化して、最大値が下がることもあるから……無事に回復してあげられるのは嬉しいのよ!」


 ……俺はそんなに分かりやすい顔してるのか? 
 ここに来てから、思考読まれてばかりだ……


「貴方は顔と態度に出すぎよ? 誰が見ても分かるはずだわ」


 女性は苦笑しながらそう断言した。

 ……マジですか……


「それより、治った槍を受け取ってみてよ!」


 ぐいぐいと槍を押し付けてくるので、慌てて両手で受け取ると──


 ど…… 完全……ったよ…… これ……た、一…………る……


 何かの意識が流れ込んできて思わず頭を押さえた……
 ……なんだ……今のは……?


「お兄さんどうしたの? 大丈夫?」

「あ……うん、大丈夫……みたいだな」


 タンジーに返事をしながら視界を上げると、女性は難しい顔をしてこちらを見ていた。


「貴方、本当に大丈夫? まさか、渡しただけでこんなに影響を受けるなんて……」
「影響……? 貴女は、なにかご存じなんですか?」


 勢いあまって聞いてしまったが、隠し事は勘弁して欲しい。
 色々と情報が足りなすぎるからな……


「……ごめんなさい。今はまだ、話して良いかどうか……私には判断が出来ないの……」

 女性の申し訳なさそうな表情を見るに、何を言っても教えて貰えなさそうなのは分かる。
 はぁ……


「わかりました。ですが、この槍になにかをした訳ではないんですよね?」

「それは勿論よ。……ただ、私に言えることがあるとしたら、貴方は自分の信じることのために行動すること……かしらね」


 言われなくてもそのつもりだが、なんなんだろうな……
 なにか、厄介なことが起こりそうな気がしてくるのは──


「わかりました。では自分達はもう行きますね。……槍、直してくださって、ありがとうございました」


 俺は再び頭を下げてお礼を伝えると、返答も聞かずに店を出た。
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