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管理人さん
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「ところで、どうしてアルが管理棟に?」
久しぶりの再会だったから、少し雑談を楽しんじゃったわけだけれど本来そういう目的でここにいるわけではない。寮に入る手続きを済ませなくちゃいけないのだ。だから管理棟に来たわけだけれど、そこにはアルがいて。アルにとってここは毎日楽に通える場所なはずだけれど。
「単なる好奇心、かな。今までずっと王城にいたから違う生活をしてみたい。それに寮にリュシーが入るって聞いたから」
「まだ前者の理由はわかるけど、後者はどういうこと?」
アルとはこの数年間全く連絡を取っていなかったわけだから私が寮に入ることも今日学園につくことも知らないはずなんだけど、どうして知っているのだろう。
「男子寮と女子寮の場所は違っているけれど、途中までは同じだから一緒に帰れるかなと思ったんだ」
アルはそう言いながら頬を少し赤らめた。違う、聞きたいのはそういうことじゃないんだ。
「それは嬉しいけどなんで私が寮に入ることをアルが知ってるの?」
「それは、秘密だよ」
秘密って。きっと従者の方を動かして私のことを探らせたのかな。誰かの情報を得るために諜報員を活用するってことは別にいいんだけれど、私が相手なのに隠れてコソコソしなくていいのに。
「その様子じゃ私が向こうでどんなことしてたのか知ってそうだね」
「否定はしないよ」
私が口を尖らせながら言葉を放てば不適な笑みでアルは微笑んだ。
「まぁいいけれど。次からは私に直接聞いてもいいんだよ?アルに隠しているつもりはないから」
アルはその言葉を聞いて頷くそぶりを見せる。
「それでアルはもう手続き終わったの?」
「あぁそっか。リュシーも手続きをしにここへ来てたんだったね。ごめん。足止めしちゃって。僕はもう終わっているから大丈夫だよ」
「久しぶりに話せて楽しかったからいいよ。じゃあまた会おうね」
私はアルにそう告げてからルリと一緒に管理棟に入った。
「こんにちは。新入生さんかな?」
管理棟に入れば受付から、優しげな女性の声が聞こえた。
「はい。リュシエンヌ・フロラインと申します。今日から寮に入る予定なのですが」
「あ、フロライン公爵家の……これからよろしくね。私は女子寮の管理人をしているヘスター。気軽にへスターって呼んでね」
管理人さんか。見る限りとても若い女性だ。多分年も私とそう変わらないぐらい。
「こらこら、またへスターさんは」
へスターさんのことを怪しんで見ていれば、後ろから声が聞こえた。へスターさんは目を大きく見開いてまずいといった顔をした。
「ごめんなさいね。新入生さん。えっとあなたは確かフロラインさんだったかしら」
「え、あはい。リュシエンヌ・フロラインです」
突然現れた初老の女性に驚きながらも私は自己紹介をした。
「ご丁寧にありがとう。ほらへスターさん。フロラインさんに謝らなくちゃ」
「えっと、どういうことですか?」
私がそう二人に聞けば、ヘスターさんが困った顔をしながらも答えてくれた。
「このお婆さんが本当の女子寮の管理人。私はここで少しイタズラをしている女子寮の寮長なんだ」
「何回言っても止めてくれなくてねぇ。まぁそのほかの仕事はちゃんとしてくれているからいいんだけど。あぁまだ私の自己紹介がまだだったねぇ。私は女子寮の管理人を任されているヴァネッサっていうの管理人さんって呼んでも大丈夫だからね」
へスターさんがあまりにも若く見えるからびっくりしたのだけれど、本当は私と同じく学園の生徒だったのか。
「入寮の手続きをしましょうか。へスターさん、手伝ってくれる?」
「はぁい…………これだね」
ヴァネッサさんの手伝いをするへスターさんはとても動きがスムーズで何がどこにあるかすべて知っているようだった。きっと長いことこうやってヴァネッサさんの手伝いをしているのだろう。
「ありがとう。はいフロラインさん。一度書類を送ってもらっていたと思うのだけれどもう一度だけサインを頂戴。この寮に関するルールとかちょっと書いてあるから。基本外出は自由だけれど夜一定の時間を過ぎたら外出禁止とかね」
ヴァネッサさんは説明しながら席に着くように私に促した。ペンを受け取り書類へちゃんと目を落としていれば、すぐに紅茶が差し出された。へスターさんが差し出したみたいだ。ヴァネッサさんが説明をして、へスターさんはその助手にまわっていて。とても連携が取れているなと感心しながらも書類を読み進めサインをした。
「はい、ありがとう。じゃあリュシエンヌさんのお部屋に案内するわね。少しの間お願いできるかしら」
「わかったぁ」
「また新入生さんを困らせたりしないんだよ」
「はいはい。わかってるって」
気だるそうに返事をするへスターさんをヴァネッサさんは一瞥し私の方を向く。
「さぁ、いきましょうか」
久しぶりの再会だったから、少し雑談を楽しんじゃったわけだけれど本来そういう目的でここにいるわけではない。寮に入る手続きを済ませなくちゃいけないのだ。だから管理棟に来たわけだけれど、そこにはアルがいて。アルにとってここは毎日楽に通える場所なはずだけれど。
「単なる好奇心、かな。今までずっと王城にいたから違う生活をしてみたい。それに寮にリュシーが入るって聞いたから」
「まだ前者の理由はわかるけど、後者はどういうこと?」
アルとはこの数年間全く連絡を取っていなかったわけだから私が寮に入ることも今日学園につくことも知らないはずなんだけど、どうして知っているのだろう。
「男子寮と女子寮の場所は違っているけれど、途中までは同じだから一緒に帰れるかなと思ったんだ」
アルはそう言いながら頬を少し赤らめた。違う、聞きたいのはそういうことじゃないんだ。
「それは嬉しいけどなんで私が寮に入ることをアルが知ってるの?」
「それは、秘密だよ」
秘密って。きっと従者の方を動かして私のことを探らせたのかな。誰かの情報を得るために諜報員を活用するってことは別にいいんだけれど、私が相手なのに隠れてコソコソしなくていいのに。
「その様子じゃ私が向こうでどんなことしてたのか知ってそうだね」
「否定はしないよ」
私が口を尖らせながら言葉を放てば不適な笑みでアルは微笑んだ。
「まぁいいけれど。次からは私に直接聞いてもいいんだよ?アルに隠しているつもりはないから」
アルはその言葉を聞いて頷くそぶりを見せる。
「それでアルはもう手続き終わったの?」
「あぁそっか。リュシーも手続きをしにここへ来てたんだったね。ごめん。足止めしちゃって。僕はもう終わっているから大丈夫だよ」
「久しぶりに話せて楽しかったからいいよ。じゃあまた会おうね」
私はアルにそう告げてからルリと一緒に管理棟に入った。
「こんにちは。新入生さんかな?」
管理棟に入れば受付から、優しげな女性の声が聞こえた。
「はい。リュシエンヌ・フロラインと申します。今日から寮に入る予定なのですが」
「あ、フロライン公爵家の……これからよろしくね。私は女子寮の管理人をしているヘスター。気軽にへスターって呼んでね」
管理人さんか。見る限りとても若い女性だ。多分年も私とそう変わらないぐらい。
「こらこら、またへスターさんは」
へスターさんのことを怪しんで見ていれば、後ろから声が聞こえた。へスターさんは目を大きく見開いてまずいといった顔をした。
「ごめんなさいね。新入生さん。えっとあなたは確かフロラインさんだったかしら」
「え、あはい。リュシエンヌ・フロラインです」
突然現れた初老の女性に驚きながらも私は自己紹介をした。
「ご丁寧にありがとう。ほらへスターさん。フロラインさんに謝らなくちゃ」
「えっと、どういうことですか?」
私がそう二人に聞けば、ヘスターさんが困った顔をしながらも答えてくれた。
「このお婆さんが本当の女子寮の管理人。私はここで少しイタズラをしている女子寮の寮長なんだ」
「何回言っても止めてくれなくてねぇ。まぁそのほかの仕事はちゃんとしてくれているからいいんだけど。あぁまだ私の自己紹介がまだだったねぇ。私は女子寮の管理人を任されているヴァネッサっていうの管理人さんって呼んでも大丈夫だからね」
へスターさんがあまりにも若く見えるからびっくりしたのだけれど、本当は私と同じく学園の生徒だったのか。
「入寮の手続きをしましょうか。へスターさん、手伝ってくれる?」
「はぁい…………これだね」
ヴァネッサさんの手伝いをするへスターさんはとても動きがスムーズで何がどこにあるかすべて知っているようだった。きっと長いことこうやってヴァネッサさんの手伝いをしているのだろう。
「ありがとう。はいフロラインさん。一度書類を送ってもらっていたと思うのだけれどもう一度だけサインを頂戴。この寮に関するルールとかちょっと書いてあるから。基本外出は自由だけれど夜一定の時間を過ぎたら外出禁止とかね」
ヴァネッサさんは説明しながら席に着くように私に促した。ペンを受け取り書類へちゃんと目を落としていれば、すぐに紅茶が差し出された。へスターさんが差し出したみたいだ。ヴァネッサさんが説明をして、へスターさんはその助手にまわっていて。とても連携が取れているなと感心しながらも書類を読み進めサインをした。
「はい、ありがとう。じゃあリュシエンヌさんのお部屋に案内するわね。少しの間お願いできるかしら」
「わかったぁ」
「また新入生さんを困らせたりしないんだよ」
「はいはい。わかってるって」
気だるそうに返事をするへスターさんをヴァネッサさんは一瞥し私の方を向く。
「さぁ、いきましょうか」
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