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再会

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「さぁ学園に着いたわけだけれど、ここからどうしたらいいの?」
「リュシエンヌ様、しっかりと書類をお読みになっていなかったのですか?」

 馬車から降りてそう呟けばルリからそう鋭い声が飛んできた。

「うっ。一応は読んだんだけどなぁ」

 そう言って目を泳がせればルリからまたしても鋭い目で見られる。痛いよ、痛いよルリ。私が悪いのはわかってるって。

「はぁ、まずは正面に見える管理棟にいって寮の管理人様と会えばいいらしいですよ」
「へぇそうなんだ。じゃあそこでどの部屋かとかもわかるのかな。いってみようか」

 そのまま管理棟に向けて足を進めれば、管理棟の入り口に誰かがいることに気づいた。

「先客がいるみたいですね」
「そうだね、時間たってからの方がいいのかな」
 
 そうルリと話して踵を返そうとしたのだが。

「リュシー?」

 私の名前を呼ぶ声が聞こえた。ルリからではない。低い男性の声。聞き覚えのある声とは少し変わっているけれど、でも私のことをそうやって呼ぶのはただ一人しかいない。
 
「アル?」

 アル、とその人に向けて言葉を放てば嬉しそうに微笑みその瞬間、私は彼の腕の中にいた。

「え?」
「会いたかった」

 そう苦しそうにアルは呟いた。

「私も会いたかったよ」
 
 私はアルのつぶやきにそう返し、腕のアルの背中へと回す。アルの背中に回した手は重ならなかった。そこでひしひしとアルは成長したのだと感じさせられた。



 私たちは数分の間お互いの体温がそこにあることを確かめ合った。


「改めて……えっと。久しぶり」
「え、えぇ。久しぶり」
 
 正気を取り戻して、改めて挨拶をしようと思えば先ほどの数分抱きしめ合うという奇行が恥ずかしいと感じた。久しぶりに会えたからといって、なにもこんな路頭で抱きしめ合うなんて。恥ずかしい。すごく恥ずかしい。それに近くにはルリもアルの従者もいる。あの数分間をずっと見られていたなんて。いや、逆に皆に申し訳ないよ。あんな恥ずかしいものをずっと見せられていたんだから。

「元気だった?」
「うん、変わらず元気よ」
「あっちは楽しかった?」
「すごく楽しかったよ。子爵夫妻どちらもすごく優しい方だった」

 簡単な質問に私は微笑みながら答える。アルはそんな私の様子を見て嬉しそうだった。

「雰囲気変わったね。前より柔らかくなってる。笑い方もすごく自然だ」
「そう?きっと子爵夫妻の人柄が移ったのかも…」

 ちょっとまって。笑い方もすごく自然って前々不自然な笑い方だったってこと?

「ねぇ、私の笑い方って昔は変だったの?」

 そう聞けばこちらをずっと見てくれていた瞳は揺れ、違う場所を向いた。

「え、っと」
「口を滑らせたのはアルでしょ?」
「うん。わかった。正直に言うよ」

 口を尖らせながら詰め寄ればアルは観念したようだ。少し困り眉をしている。

「変っていうか固かったんだ。心から笑っていないような、そんな笑い方。でも今はすごく楽しそうに笑ってるよ。きっと子爵夫妻がいい人だったんだね」
「そっか。私、結構変わったかな」
「結構ってわけじゃないけれど、変わったよ。リュシーは」
「ちゃんといい方に変われているかな」
「これがいい方かどうかわからないけど、リュシーが楽しめてればいいと思うよ」

 私が楽しめてればいいか。うん。今生きていて少し心配なことはあるけれど楽しいって心から言える。これがいいか悪いか分からないけれど今は楽しめてればいい、って答えが丁度いい。

「そうだね、私は今すごく楽しいよ」

 私が微笑めばアルも、嬉しそうに微笑み返した。



 
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