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心配
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「さ、ダリア様とダグラス様に会いに行こう」
きっと今の時間は外の庭園でティータイムをしているはず。ダグラス様は非常にお忙しい方だ。それもフロライン公爵家に匹敵するほど。だけれど、一日に一回は必ずダリア様や私と接する機会を設けている。それに、数ヶ月に一度町にも一緒に出かけてくださるのだ。きっと私が来たからではなくて、それがダグラス様にとって当然のこと。その当然のことが私にとってはとても嬉しかった。
「ダリア様!ダグラス様!」
二人仲良く会話しているところを邪魔するのは悪い気もしたが、思い切って声をかけた。そうすれば、ダリア様は椅子から立ち上がり私の方へ手を振ってくれた。ダグラス様もふっと軽く口を緩めた。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい、早かったわね」
「何か言われたか?」
私が二人のいるテーブルに近づけば、ルリが椅子を引いてくれる。ルリに感謝しながら座って話の続きをする。
「そうですね、やっぱり私がやったと決めつけているようでした。話し合いの価値はないと思ったので誓いをして帰ってきました」
「「「え」」」
三人が同時に声を上げた。きっとそれは誓いを告げたという部分に対してなのだろう。
「説明してくれるか?」
「はい、もちろんです」
一番最初に口を開いたのはダグラス様だった。
「閣下は私がリリアに危害を加えるのを危惧しているようでしたので15になるまで公爵家の方と関わらない誓いをしてきました。私としても戻るまでこれ以降公爵家と関わるつもりはなかったので好都合です」
「そう。あなたほどの魔法の使い手でもかなり疲れたでしょう?」
「そこまでは疲れていませんよ。現に魔法を使って帰ってきたわけですし、それに先ほどだって――」
あ、口が滑りそうになった。怪我したことを心配させないために、治したのに自分で墓穴を掘るところだった。いや、もう遅かったみたいだ。笑みを浮かべているけれど、怒っている様子の二人が私をじっと見ている。
「先ほどだって、何かしら?」
「い、いえ何もありませんよ」
隠そうと思ったが、声がわざとらしく裏返ってしまった。こんなんじゃ嘘をついているってバレバレじゃないか。
「ルリ」
「え、ちょっと――」
「はい、先ほどまで頬から血を流しておいででした」
止めようとしたけれど、無理だった。こういう時だけルリは強情なんだから。全く誰に似たんだかね。それはそうと、二人がだいぶ怒っている。でも、今傷はないから心配することはないと思うのだけれど。
「傷でしたらもう見ての通り治しましたし、跡だって残っていませんよ?」
そう補足をすれば、三つため息が聞こえた。
「そういう問題じゃないのよ、リュシエンヌ。跡が残るとか残らないとかそういうことを言っているんじゃないの。もう少し自分の体を大切にして。あなたの両親は心配しない方かもしれないけれど、私たちは違うわ。ルリだってそうよ」
私はダグラス様、ルリの顔を順番に見ていった。そうすれば、二人ともダリア様の意見に同調するように頷いてみせた。そっか、私はまた心配をかけてしまっていたのだ。治せる傷、跡の残らない傷なら私は心配をかけないと思っていた。それにそこまで深い傷を負いそうであれば、すぐに避けていただろうし公爵夫人のことを返り討ちにできるほどの力もある。だから私は、心配をかけないだろうと思っていた。けれど、違うんだ。この人たちは私が傷を負うことや、そうなるかもしれないことを心配してくれているのだ。
「ありがとうございます。やっと認識の齟齬に気づけました。もう自らを傷つけに行くことはしません」
そう正面をみて宣言すればダリア様は笑顔で頷いてくれた。
きっと今の時間は外の庭園でティータイムをしているはず。ダグラス様は非常にお忙しい方だ。それもフロライン公爵家に匹敵するほど。だけれど、一日に一回は必ずダリア様や私と接する機会を設けている。それに、数ヶ月に一度町にも一緒に出かけてくださるのだ。きっと私が来たからではなくて、それがダグラス様にとって当然のこと。その当然のことが私にとってはとても嬉しかった。
「ダリア様!ダグラス様!」
二人仲良く会話しているところを邪魔するのは悪い気もしたが、思い切って声をかけた。そうすれば、ダリア様は椅子から立ち上がり私の方へ手を振ってくれた。ダグラス様もふっと軽く口を緩めた。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい、早かったわね」
「何か言われたか?」
私が二人のいるテーブルに近づけば、ルリが椅子を引いてくれる。ルリに感謝しながら座って話の続きをする。
「そうですね、やっぱり私がやったと決めつけているようでした。話し合いの価値はないと思ったので誓いをして帰ってきました」
「「「え」」」
三人が同時に声を上げた。きっとそれは誓いを告げたという部分に対してなのだろう。
「説明してくれるか?」
「はい、もちろんです」
一番最初に口を開いたのはダグラス様だった。
「閣下は私がリリアに危害を加えるのを危惧しているようでしたので15になるまで公爵家の方と関わらない誓いをしてきました。私としても戻るまでこれ以降公爵家と関わるつもりはなかったので好都合です」
「そう。あなたほどの魔法の使い手でもかなり疲れたでしょう?」
「そこまでは疲れていませんよ。現に魔法を使って帰ってきたわけですし、それに先ほどだって――」
あ、口が滑りそうになった。怪我したことを心配させないために、治したのに自分で墓穴を掘るところだった。いや、もう遅かったみたいだ。笑みを浮かべているけれど、怒っている様子の二人が私をじっと見ている。
「先ほどだって、何かしら?」
「い、いえ何もありませんよ」
隠そうと思ったが、声がわざとらしく裏返ってしまった。こんなんじゃ嘘をついているってバレバレじゃないか。
「ルリ」
「え、ちょっと――」
「はい、先ほどまで頬から血を流しておいででした」
止めようとしたけれど、無理だった。こういう時だけルリは強情なんだから。全く誰に似たんだかね。それはそうと、二人がだいぶ怒っている。でも、今傷はないから心配することはないと思うのだけれど。
「傷でしたらもう見ての通り治しましたし、跡だって残っていませんよ?」
そう補足をすれば、三つため息が聞こえた。
「そういう問題じゃないのよ、リュシエンヌ。跡が残るとか残らないとかそういうことを言っているんじゃないの。もう少し自分の体を大切にして。あなたの両親は心配しない方かもしれないけれど、私たちは違うわ。ルリだってそうよ」
私はダグラス様、ルリの顔を順番に見ていった。そうすれば、二人ともダリア様の意見に同調するように頷いてみせた。そっか、私はまた心配をかけてしまっていたのだ。治せる傷、跡の残らない傷なら私は心配をかけないと思っていた。それにそこまで深い傷を負いそうであれば、すぐに避けていただろうし公爵夫人のことを返り討ちにできるほどの力もある。だから私は、心配をかけないだろうと思っていた。けれど、違うんだ。この人たちは私が傷を負うことや、そうなるかもしれないことを心配してくれているのだ。
「ありがとうございます。やっと認識の齟齬に気づけました。もう自らを傷つけに行くことはしません」
そう正面をみて宣言すればダリア様は笑顔で頷いてくれた。
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