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公爵夫人
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「リュシエンヌ!!お前がここにいることは知っているのよ!」
なぜ魔法の発動を止めてしまったのだろう。本当に、さっさと行って仕舞えば私はダリア様たちの約束を守れていたのに。
「公爵夫人……」
騒がしく扉を開けて入ってきたのは公爵夫人だった。長い髪は綺麗にまとめてある。ご自慢の髪をそこまでまとめてしまうのはきっとリリアを育てるためなのだろう。公爵夫人自らリリアを育てていて、しかもかなり深い愛情を注いでいることが嫌というほどわかってしまう。それにしてもノックもせずに執務室へ公爵夫人が入ってきているというのに閣下は一つも声を荒げようとしない。あぁ、心から閣下は愛しているのね。
「ねぇ、あなたでしょう!私のリリアに手を出したのは!?」
この人もか。私を犯人扱いするのは。それに私が何を言ってもきっと聞いてくれないのだろうな。
「公爵夫人、お久しぶりでございます。お言葉ですが私は何もしておりません。そもそも私はこの一年、公爵邸に立ち入ったことも、近づいたこともございません」
「嘘をつかないで!」
――パチンッ!!
私の言うことに聞く耳を持たない。だいぶ興奮しているようで肩が上下している。これは下手なことを言えばきっと叩かれてしまうだろう。そう思いながら発言したのだけれど、私は公爵夫人が持っていたその扇で頬を叩かれてしまった。乾いた音が鳴り響き、部屋が沈黙に包まれる。早く帰りたい、その一心で私は痛む頬を押さえながら口を開く。
「嘘ではないということはこの真実の結晶が示してくださいます。そして私は公爵家に私が15になるまで関わりを持たないという誓いをしました。そのうち、誓いが発動してしまいますのでこの場を離れさせていただきます」
「ちょっ――」
私は止めに入ろうとする公爵夫人を無視し、魔法を発動した。行先はもちろん私の部屋。
「リュシエンヌ様!?」
私にとっては長かったけれど、きっと実際には一時間も経っていないだろう。それなのに、なんだかこの家がとても安心する。
「お早いお帰りで?」
「うん、ただいま」
そうルリに微笑めばあっと大きな声を出す。
「血が!」
ルリは手に持っていた箒を投げ出し私の元に走ってきた。そしてジンジンと痛む頬に優しく触れた。本当に優しくだったのだが、出来立てのそれは痛みを感じさせた。その痛みに表情を軽く歪ませれば、ルリはおなじような表情をした。
「切れちゃったのね」
「これは、公爵夫人が?」
「うん。会うつもりはなかったんだけどね。私はやってないって言ったら嘘って叩かれちゃった」
そう笑いながら言えば、ルリは苦しそうな表情をする。
「そんな顔しないで、ルリ」
「そうおっしゃるのであれば、怪我をしないでください」
「一応気をつけてるんだけどねぇ」
私は遠くを見ながら魔法を発動させる。先ほどまで血が流れていた傷は最初から無かったかのように消えていった。本当に魔法って便利だなぁ。別に傷なんて今まで気にしていなかったけれど、今は私のことで気を病んでしまいそうな人がたくさんいるから治しておかないと。
「私、変わったんだなぁ」
ふふッと私が笑えば、ルリは不思議そうな顔をした。
なぜ魔法の発動を止めてしまったのだろう。本当に、さっさと行って仕舞えば私はダリア様たちの約束を守れていたのに。
「公爵夫人……」
騒がしく扉を開けて入ってきたのは公爵夫人だった。長い髪は綺麗にまとめてある。ご自慢の髪をそこまでまとめてしまうのはきっとリリアを育てるためなのだろう。公爵夫人自らリリアを育てていて、しかもかなり深い愛情を注いでいることが嫌というほどわかってしまう。それにしてもノックもせずに執務室へ公爵夫人が入ってきているというのに閣下は一つも声を荒げようとしない。あぁ、心から閣下は愛しているのね。
「ねぇ、あなたでしょう!私のリリアに手を出したのは!?」
この人もか。私を犯人扱いするのは。それに私が何を言ってもきっと聞いてくれないのだろうな。
「公爵夫人、お久しぶりでございます。お言葉ですが私は何もしておりません。そもそも私はこの一年、公爵邸に立ち入ったことも、近づいたこともございません」
「嘘をつかないで!」
――パチンッ!!
私の言うことに聞く耳を持たない。だいぶ興奮しているようで肩が上下している。これは下手なことを言えばきっと叩かれてしまうだろう。そう思いながら発言したのだけれど、私は公爵夫人が持っていたその扇で頬を叩かれてしまった。乾いた音が鳴り響き、部屋が沈黙に包まれる。早く帰りたい、その一心で私は痛む頬を押さえながら口を開く。
「嘘ではないということはこの真実の結晶が示してくださいます。そして私は公爵家に私が15になるまで関わりを持たないという誓いをしました。そのうち、誓いが発動してしまいますのでこの場を離れさせていただきます」
「ちょっ――」
私は止めに入ろうとする公爵夫人を無視し、魔法を発動した。行先はもちろん私の部屋。
「リュシエンヌ様!?」
私にとっては長かったけれど、きっと実際には一時間も経っていないだろう。それなのに、なんだかこの家がとても安心する。
「お早いお帰りで?」
「うん、ただいま」
そうルリに微笑めばあっと大きな声を出す。
「血が!」
ルリは手に持っていた箒を投げ出し私の元に走ってきた。そしてジンジンと痛む頬に優しく触れた。本当に優しくだったのだが、出来立てのそれは痛みを感じさせた。その痛みに表情を軽く歪ませれば、ルリはおなじような表情をした。
「切れちゃったのね」
「これは、公爵夫人が?」
「うん。会うつもりはなかったんだけどね。私はやってないって言ったら嘘って叩かれちゃった」
そう笑いながら言えば、ルリは苦しそうな表情をする。
「そんな顔しないで、ルリ」
「そうおっしゃるのであれば、怪我をしないでください」
「一応気をつけてるんだけどねぇ」
私は遠くを見ながら魔法を発動させる。先ほどまで血が流れていた傷は最初から無かったかのように消えていった。本当に魔法って便利だなぁ。別に傷なんて今まで気にしていなかったけれど、今は私のことで気を病んでしまいそうな人がたくさんいるから治しておかないと。
「私、変わったんだなぁ」
ふふッと私が笑えば、ルリは不思議そうな顔をした。
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