39 / 69
ティータイム
しおりを挟む
「わぁ、リュシエンヌ様のお部屋素敵ですね!リュシエンヌ様の髪のお色と瞳の色ばかりですね!」
ルリは私に用意された部屋に入りそういった。私はその一言で気づいたのだ。
「そっか、この部屋私とお母様の髪の色と瞳の色なんだ」
「気づいていらっしゃらなかったのですか?」
ルリの言葉に頷けばルリは目を見開いた。道理でこの部屋が落ち着くのか。私はこの髪と瞳のせいで閣下や公爵夫人に強くあたられてきたこともあった。だがそれでも唯一のお母様との繋がりであるこれらは嫌いになれなかった。むしろ好きに近い。だから、この部屋はとても落ち着くのだ。そういえばキトはターニャ様が好んでいたものと同じように用意した、と言っていた気がする。ならば、お母様もこの髪と瞳を気に入っていたのだろうか。そうだったら嬉しいな。
「ルリ、あなたも一緒に食べない?」
私が考え事をしていれば、ルリのティータイムの準備は続々と進んでいった。どうやらルリの分までもケーキをもらっていたらしく皿に分けても1つピースが余っていた。あとできっとルリは食べるのだろうけれど、せっかくなら一緒に食べたいと思いそう提案した。ルリは満面の笑顔で了承してくれた。
「チョコケーキなので紅茶はウバがいいよとおすすめされまして」
ルリはティーカップに紅茶を注いでいく。ウバという紅茶は初めて聞いたけれど、とても独特な香りがする。ルリが注ぎ終わったティーカップを私の前に置く。
「とても綺麗なオレンジ色ね」
「ウバは赤みの強いオレンジ色が特徴的、らしいですよ。それに渋みが少し強いみたいなんです」
う、渋みか。紅茶は好きなのだけれど渋いものは少し苦手なんだよね。顔を顰める私の前にルリは嬉々として座る。
「頂きましょうか」
私がそう一言言えば、待ってましたと言わんばかりにケーキにフォークを刺した。そして、口元に運び頬張った。
「~!」
とてもおいしかったようだ。ルリは目を輝かせて、私にも食べるように促してくる。軽く笑いながら私も一口食べた。
「美味しい」
「―!そうですよね!」
ルリは共感してもらえて嬉しそうだ。こんなに美味しいものは初めて食べたんじゃないかって思うぐらい美味しかった。濃厚なチョコレートケーキを食べ進めれば当然口がもったりとしてくる。そこでウバを飲んだ。渋みがあったとしてもあまり長引かず、すっきりとした味わい。濃厚なチョコレートケーキととても合っていた。
「これは、とてもいいものを教えてもらっちゃったね」
「本当ですね!」
「今度はお店に行ってみよう。人気だから入れるかわからないけどね」
ルリは口に含みながら頭を上下に振った。そして、咽せた。
「だ、大丈夫!?」
「大丈夫です、ごめんなさい」
私はルリに近寄って、背中をさすった。口に含んだままそうするからよと軽口を叩けば、へへっとルリは笑った。大丈夫そうなのを確認して私は元の席に戻った。
「ティータイムが終わったら、荷解きをしなければね」
「そうですね」
普通の令嬢に比べれば量は少ないが普通に荷解きが大変な量を持ってきた。夕食の時間まではゆっくりしていられなさそうだなと遠くを見つめながらも、今の優雅なひと時を楽しんだ。
ルリは私に用意された部屋に入りそういった。私はその一言で気づいたのだ。
「そっか、この部屋私とお母様の髪の色と瞳の色なんだ」
「気づいていらっしゃらなかったのですか?」
ルリの言葉に頷けばルリは目を見開いた。道理でこの部屋が落ち着くのか。私はこの髪と瞳のせいで閣下や公爵夫人に強くあたられてきたこともあった。だがそれでも唯一のお母様との繋がりであるこれらは嫌いになれなかった。むしろ好きに近い。だから、この部屋はとても落ち着くのだ。そういえばキトはターニャ様が好んでいたものと同じように用意した、と言っていた気がする。ならば、お母様もこの髪と瞳を気に入っていたのだろうか。そうだったら嬉しいな。
「ルリ、あなたも一緒に食べない?」
私が考え事をしていれば、ルリのティータイムの準備は続々と進んでいった。どうやらルリの分までもケーキをもらっていたらしく皿に分けても1つピースが余っていた。あとできっとルリは食べるのだろうけれど、せっかくなら一緒に食べたいと思いそう提案した。ルリは満面の笑顔で了承してくれた。
「チョコケーキなので紅茶はウバがいいよとおすすめされまして」
ルリはティーカップに紅茶を注いでいく。ウバという紅茶は初めて聞いたけれど、とても独特な香りがする。ルリが注ぎ終わったティーカップを私の前に置く。
「とても綺麗なオレンジ色ね」
「ウバは赤みの強いオレンジ色が特徴的、らしいですよ。それに渋みが少し強いみたいなんです」
う、渋みか。紅茶は好きなのだけれど渋いものは少し苦手なんだよね。顔を顰める私の前にルリは嬉々として座る。
「頂きましょうか」
私がそう一言言えば、待ってましたと言わんばかりにケーキにフォークを刺した。そして、口元に運び頬張った。
「~!」
とてもおいしかったようだ。ルリは目を輝かせて、私にも食べるように促してくる。軽く笑いながら私も一口食べた。
「美味しい」
「―!そうですよね!」
ルリは共感してもらえて嬉しそうだ。こんなに美味しいものは初めて食べたんじゃないかって思うぐらい美味しかった。濃厚なチョコレートケーキを食べ進めれば当然口がもったりとしてくる。そこでウバを飲んだ。渋みがあったとしてもあまり長引かず、すっきりとした味わい。濃厚なチョコレートケーキととても合っていた。
「これは、とてもいいものを教えてもらっちゃったね」
「本当ですね!」
「今度はお店に行ってみよう。人気だから入れるかわからないけどね」
ルリは口に含みながら頭を上下に振った。そして、咽せた。
「だ、大丈夫!?」
「大丈夫です、ごめんなさい」
私はルリに近寄って、背中をさすった。口に含んだままそうするからよと軽口を叩けば、へへっとルリは笑った。大丈夫そうなのを確認して私は元の席に戻った。
「ティータイムが終わったら、荷解きをしなければね」
「そうですね」
普通の令嬢に比べれば量は少ないが普通に荷解きが大変な量を持ってきた。夕食の時間まではゆっくりしていられなさそうだなと遠くを見つめながらも、今の優雅なひと時を楽しんだ。
15
お気に入りに追加
4,543
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。

公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。
なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。
普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。
それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。
そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。

竜王陛下の番……の妹様は、隣国で溺愛される
夕立悠理
恋愛
誰か。誰でもいいの。──わたしを、愛して。
物心着いた時から、アオリに与えられるもの全てが姉のお下がりだった。それでも良かった。家族はアオリを愛していると信じていたから。
けれど姉のスカーレットがこの国の竜王陛下である、レナルドに見初められて全てが変わる。誰も、アオリの名前を呼ぶものがいなくなったのだ。みんな、妹様、とアオリを呼ぶ。孤独に耐えかねたアオリは、隣国へと旅にでることにした。──そこで、自分の本当の運命が待っているとも、知らずに。
※小説家になろう様にも投稿しています

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜
梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーロットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。
そんなシャーロットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。
実はシャーロットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーロットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーロットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。
悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。
しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーロットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーロットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーロットは図々しく居座る計画を立てる。
そんなある日、シャーロットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる