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ルリ・スコットの話

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「はあぁぁぁぁ」

 パーティーの翌日。私は起きて開口一番にため息をついた。その理由としては、昨日馬車から出る際に「大っ嫌い」と叫んでしまったからだ。勢いで言ったことだから本気にしていなければいいのだけれど。絶対に次会った時すぐ謝罪しよう。

「おはようございます、リュシエンヌ様。やっぱりリュシエンヌ様は起きられるの早いですね」
「おはよう、ルリ。そんなことないと思うよ?」

 ルリがいつものように私の部屋にやってきた。そういえばルリは私の専属侍女に昨日付きでなったんだっけ。だからこれからずっと朝はルリだし、何をするにもルリが一緒だ。それがとても幸せだと感じる。

「ねぇルリ。私の専属侍女引き受けてくれてありがとう」
「いえ、こちらこそですよ。リュシエンヌ様はお優しくて、とても可愛らしくて綺麗で。本当に最高のご主人様ですよ!」
「ふふ、ありがとう」

 ルリがとても私のことを慕ってくれているのがひしひしと伝わってくる。私を大切に思ってくれる人がこんなに近くにいたなんて時戻り前の私は全く気づかなかった。そう思うと本当にバカだったんだなって。

「ねぇルリ。私あなたのこと大切だわ。だからずっとずっと一緒にいてね」

 ルリをまっすぐみて私はそういった。ルリは目を丸くしていた。その様子が本当に愛らしくて軽く笑ってしまった。

「あ、リュシエンヌ様!!笑わないでください!」
「だって、あなたの顔があまりにも間抜けだから」
「そ、そんなの。いきなり私がすごく嬉しくなることをおっしゃるから!」

 そう言いながらルリは涙を軽く拭った。

「リュシエンヌ様。私はあなた様にそう言われなくてもずっと一緒にいるつもりです。フロライン家にきてからずっとそう決めていたのですから」

 ずっと決めていた。どうしてそんなにも私のことを強く思ってくれているのかがわからなかった。だから聞いてみよう、そう思った。

「ねぇ、ルリ。あなたがそこまで私を一緒にいてくれる理由を聞いてもいいかな」

 ルリは笑顔で頷き話し始めた。

「私が公爵邸に来たのはちょうどリュシエンヌ様が生まれた年でした。ターニャ夫人が亡くなってしまいリュシエンヌ様を育てる方がいなくなってしまいました。そこで公爵様は自ら育てることを選ばずに新しい使用人を雇用することにしました。そこで来たのが私でした。私の家は本当にひっ迫している貧乏男爵家なんです。だからお給料がいい公爵家の使用人に母に勝手に応募させられました。いつのまにかトントン拍子で話は進み公爵家の使用人になったんです。リュシエンヌ様の乳母は食事以外何もされない方でした。それ以外のことは私に任せっきりでした」

 私、ずっとルリが乳母だと思っていた。赤ちゃんの頃の記憶なんて全くないけれどいつもいたのはルリだったから。でもルリは今でやっと成人の18だったはず。だから私が生まれた時って言うと、12?いや11の時なのかな。働き始めるのには本当に早いな。そこまでひっ迫しているなんて知らなかった。驚いている私を後目にルリは話を続ける。

「こんな私に公爵令嬢の使用人なんて勤まるのかなって不安でした。だけど、初めてリュシエンヌ様を抱いた時。今でも忘れられません。笑顔でその小さな手で私の頬を触ってくださりました。まるで、大丈夫とでも言うように。私はそこからリュシエンヌ様に何があろうとお仕えするのだと決めたのです」

 ルリは座っている私に近づく。するといきなり跪き始めた。

「こういうのは男性がやるからカッコいいのですが……。手を出していただけますか?」

 私はいつになく真剣な表情をするルリに流され手をだした。

「私、ルリ・スコットはこの命、この人生をリュシエンヌ・フロライン様に捧げることを誓います」

 そのまま私の手にルリはキスをした。挨拶の一環として男性にはよくされることは多いけれど、女性にされるのは初めてで少しドキドキした。

「やっぱり、私じゃ格好つかないです。それにリュシエンヌ様に一生を捧げようと思ったのには他にも理由あるんですよ?」

 硬直している私に気づかないのかルリは話し続けていた。

「公爵様を思って必死に頑張っている姿がとてもお美しくて。可憐で。そう思うと無性に腹が立ってきました。あんなにも頑張っているのに公爵様と夫人は一切リュシエンヌ様に興味がないんですから!……てリュシエンヌ様?どうしたのですか?」

 私が今こうなっている理由が全くもってわからないといった顔でこちらを見つめてくる。まぁその鈍感さも私の侍女のいいところだし。

「別にどうもしないわ。これからも末長くよろしくね、ルリ」
「?はい!リュシエンヌ様!」
 
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