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綺麗!?

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「今日は確かアルが来るのよね」
「そうですよ、リュシエンヌ様。傷ができてしまったのでお化粧をするのは控えた方がよろしいですが、そのままでも十分リュシエンヌ様は可愛らしいですもの。」
「ありがとう」 

 昨日の公爵夫人のあの動揺した顔を思い出すととても滑稽ですぐに笑ってしまう。もうすでに何回も思い出し笑いしてしまってルリに不審がられてしまっている。ごめんなさいね。我ながら昨日の立ち回り方はとてもうまかった。ちょっと言い返しただけなのにすぐに血が上っちゃって叩いた公爵夫人。その行動はすぐに閣下の耳に入り、きっと昨日はギスギスしてたんじゃないかな。だって公爵夫人のこと愛していたとしても、醜聞を流すのは公爵家としてよくないことだ。パーティーでは一応仲良し家族を演じているわけだから。

「昨日のこと、侍女の間では話題になってる?」
「はい、それはもちろん」

 噂好きの侍女たちならすぐに色んなところに広げてくれるだろう。だけど、まだまだ小さい噂。いつか社交界に顔を出せないぐらい大きなものにしていかないと私の気がすまない。

「楽しみだわ」

 思わず口に出てしまった。不審がられてないだろうか、そう思いルリの方を向くと「リュシエンヌ様はアルフレッド王子殿下のことが大好きになられたのですね」と言われた。まぁ、確かにアルが来るのが楽しみでそわそわしているのは確かだから否定はできない。

「そういえば私、リュシエンヌ様とお話ししていると時々6歳の子供とは話している気持ちになれないのですよ。変ですよね」 

 ぎくっ。鈍感だと思ったら時々鋭いのねルリは。突然私が変わったって屋敷内じゃ噂になっているのに、ルリだけ全く疑わずにいるものだからひどく鈍感なんだろうって思っていたのに。さすがのルリでも私が変わっていることには気づいてるみたいだ。

「そんなわけないわ。私、ちゃんと6歳だもの。あ、でもただの6歳じゃないわよ。一ヶ月後に7歳になるのだから」
「そうですよね。申し訳ありません、おかしなこと言って」

 よかったなんとか誤魔化せたみたいだ。でも、いつかルリにこのこと話せたらいいな。まだ、私の心の準備ができていないだけだけど。




 紅茶を飲んで過ごしていると、アルが来たという伝令がきた。私は早速席を立ち、玄関へ迎えに行った。

「リュシー、こんにちは」
「ご機嫌よう、アル。来てくれてありがとうございます」

 少し廊下を走ってきてしまった。髪は乱れてないだろうか、ドレスにゴミはついていないだろうか。きっと大丈夫心配になりながらもカーテシーをした。

「リュシーのカーテシー。とても綺麗だね」

 心配事を考えていたからいきなり「綺麗」その言葉をいわれて驚いてしまった。

「綺麗!?」
「うん、僕は王子として何人もの令嬢のカーテシーを見てきたけれど、やっぱりリュシーのが一番ですね」

 面と向かってそんなふうに褒められたから、とても嬉しくて恥ずかしかった。きっと今の私の顔は真っ赤っかだろう。その顔を見せないようにずっと下を向いていた。

「と、とりあえず応接室にご案内させていただきます」

 ずっと下を向いている、玄関に居座らせるのも不敬なので顔を合わせなくて済むように私は先導して歩き始めた。応接室に着く頃には顔の熱は治るといいなと願いながら。
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