21 / 27
一章 全てを忘れた怨霊
21話 新しい命と二度目の夢
しおりを挟む
分娩室の扉を通り抜け、苦し気な女性の悲鳴はさらに大きな物へとなっていった。部屋の中にはベッドで横になりながら絶叫している女性の他に男性が一人、そして三人の女性がいた。
「お母さんもうちょっと頑張って! 頭出るから! 」
「ひぅ――、うがああああああっ! ちょっと待った! トイレ! 違うのでるううう」
「お父さん! 奥さんの手握ってて! 」
部屋は何やら慌ただしい。吉田君が言うには、新生児というのはどうやら新しく生まれてくる人間のことらしい。そして、ベッドで絶叫しながら何やら頑張っている女性はその母親であり、女性の手を両手で強く握る男性は父親であるらしいが、大きく取り乱している。
「ミヨコ、大丈夫だぞ! 俺はここにいるぞ! 」
「大丈夫じゃねえええええ! いってええええええ! 」
叫びながら頑張っている女性と取り乱している男性を見つめている老人の霊は、何やら懐かしい物を見るような表情でその姿を見守っていた。
「わしもこんなだったなぁ、無力を思い知ったよ。でも後でありがとう何て言われた時には泣いちまったな」
しみじみと語る老人の霊をしり目に、女性の叫び声は激しさを増した。その瞬間、女性の股下で何やら取り出している女性も叫んだ。
「きた! 頭出ましたよ! 」
私もその声に反応して覗き込むと、なんと女性の股から人間の頭のような物が出てきた。私もつい夢中になってその姿を見ていると、ついにはズルズルと身体が全て出てきた。
「おぎゃぁ、オギャ――! 」
「生んだぁあああああああああ――!! 」
生まれた小さな人間は、女性から取り出されるとしばらくして激しく鳴き始めた。その声を聞いた瞬間に、今まで凄絶な表情で絶叫していた女性の顔が柔らかく微笑み、手を握っていた男性も泣き出した。
「おめでとうございます。男の子ですよ! がんばりましたね! 」
生まれたての人間を取り出した女性はそう言うと、母である女性と父であろう男性に抱きかかえた小さな人間を見せていた。
女性はそれを見るとほっとしたような安らかな顔になって気絶し、男性は元気に喜んだ。なるほど、人間はこうやって生まれてくるものなのだと私は初めて知ることができた。
「さて、もうわしもいかねば」
老人の霊はそう言うと、女性に抱きかかえられた新生児の顔を見て微笑み、その小さな体の中に溶け込むようにして消えていった。
……ルーフの時とはずいぶん違う守護霊の誕生を目の当たりにしたからか、私は少し呆然としてしまう。老人の霊は、白く淡い光に包まれていたのだ。対してルーフは黒い靄に包まれている。なんでこんな違いが出るのだろう。
「終わったっすね。守護霊は基本的に外部から攻撃されたり、警戒しなければいけないほどの霊がいない限りは出てこないっす。あのじいさんは俺やなにか先輩を知ってるから、俺らが近づいても出てこないっすよ」
あの老人の霊と会えなくなるのは少し寂しいけど、守護霊になれたんだ。私も『おめでとう』という気持ちで老人の守護霊が宿った新生児を見守った。
新生児は別の部屋に移動させるのか、女性二人が新生児を部屋から出して行ってしまう。ベッドで気絶している女性に男性が寄り添う姿が何とも微笑ましく思えてくる。そして何故か、羨ましくも思えるんだ。
「ここにはもう用がないっすね。俺達も出るっすか」
吉田君はそう言って、入ってきた扉を透き通って出て行く。私もそれに続こうとするのだが、やはりベッドで気絶する女性と寄り添う男性が羨ましくて仕方がなかった。コレも生前の記憶が原因なのかは分からないが、私はそれを振り切って吉田君の後を追った。
病院の通路を歩いていると、霊の気配がいくつか感じられる。だけれど、私に近寄ってくる気配はなさそうで、むしろ離れていっているのがわかる。
特に何も起きぬまま、私達は床を透き通って一階の出口にまで戻ってきた。木口の情報を沢山教えてくれたあの老人の霊とも、これでお別れなのだ。でも今日は木口の情報だけではなく、人間が新しい命を生むのも見られてとても興味がそそられる体験ができた。私は有意義に満ちた気持ちで病院を後にした。
「もう夜も遅いっすね。意外と時間が経ったようで、外にいる人間も少ないっす。次の情報収集できそうな場所まで移動するっすか」
吉田君がそう言うので、私は長距離移動のためにルーフを呼び出した。私はルーフの背中の上にいつもの様に同化し、吉田君はルーフをよじ登って背中にまで這いあがる。
街といえどこの場所が丘だからか、夜空は澄んで星が綺麗に見ることができる。とても美しい景色だ。そんなものを見ていたら、私はどうやら眠くなってきてしまった。ウトウトとルーフの背中で眠気と闘っていると、吉田君が声をかけてきた。
「なにか先輩! 今度はあの下に見える街に行ってみるっすか! 大きな街っすから、情報も沢山あるっすよ! ……あれ? 眠たいっすか? 」
コクリコクリと首を落とす私は、吉田君の話を半分ほど聞いていなかった。眠気が限界だ。いつもの様にルーフのフカフカな背中に突っ伏して眠りに落ちた。
「おやすみなさい。なにか先輩」
ここはどこだろう。コレは、夢か。この森の景色、そして荒れ放題な獣道。そして見える右腕の袖をヒラヒラと漂わせる老人。
どこかで見た事がある。そうだ、いつしか見た夢と同じ情景だ。だけど、あの時とは違う。何が違うのだろう、そうだ。あの時はお日様が天に昇っており、今はお月様が天に昇っているんだ。そんな違いだった。
長い白髪を結び、右腕の無いこの老人は『木口』だ。あの廃墟の神札を貼り、右腕の無い九十二歳の老人。この情報を知る今でこそ、今この夢で見ている目の前の老人が『木口』なんだ。私が大切に想っている日記帳とボールペンそしてラブレターを、およそ一番よく知る人間なんだ。
老人。いや木口は私の夢の中で夜遅くの獣道を渡り、一人廃墟へ向かって行く。一体何をする気なのだろうと思ったが、よくよく思い返してみると、近くの村の住民が木口を呼ぼうとしていたのを思い出した。
どうやら木口は誰かに頼まれて、再びあの廃墟を調べに行ったのだろう。そしてとうとう身に覚えのある廃墟が姿を現した。夜遅くさらには森の中ということもあって全くの暗闇かと思えば、月明りが廃墟を照らして意外とよく見えている。
木口は廃墟をしばらく見つめると、前に見た夢と同じように廃墟の裏へと回って行った。草木で荒れ放題な細い道を渡って、石の塊のある場所で足を止めた。今ならわかる。あの石の塊は、形は違うけどたぶんあの老人の霊がいた『墓石』と同じモノなんだ。
木口はしばらく丸い墓石を見つめるが、特に何もないらしく元来た道を戻ろうとした。しかしその瞬間、足元で何かを見つけたようだ。
月明りがわずかに反射する物を木口は足元で見つけ、それをしばらく見つめると拾い上げた。木口が足元から拾い上げて今左手に持っている物は、私が落とした『木製のボールペン』だった。
そのことを確認した私は少し驚いたが、不思議と『これでいい』と感じている。そんなことを思いながら木口を見てみると、前に見た夢では見ることができなかった木口の顔全体がわかった。木口は口を開けて凄絶な表情で固まっているのだ。
しばらく固まった後に、およそその年齢ではできないと思われる俊敏な動きであたりを見回して警戒し始めた。前に夢で見た狐を今度は九匹呼び出して辺りを警戒させると、木口は何故か涙を流しながら謝った。
『ごめんね。――イさん。守ってあげられなかった。せめて、これ以上苦しませない』
九匹の狐達は木口を囲んで九つの方向に向かって警戒をしているが、前に夢見た木口の様に私と目が合う様子はない。今回はどこで目が覚めるのだろうと考えていた私は、夢の中で木口と同じ地面に降り立った。そして近づいて木口を観察しようとした時、狐の一匹が私に唸った。
跳びつく狐は次第に白い炎に包まれ、私に噛みつこうとしている。びっくりした私は、いつしか感じた気分に変わってしまう。この感じはなんだろう、確か、そう。琴音たちの時の様だ。
『動くな――イ――ナ』
何かを呟く木口だが、特に何も起きない。それよりこの狐が邪魔だったから私はルーフを呼び出して狐を喰らわせた。白い炎を帯びた狐はルーフに喰いちぎられ、完全に消滅した。その瞬間ガラスが割れるような音があたりに響き渡り、木口は驚いたような表情でつぶやいた。
『名の呪が利かない、自分の名前を憶えていないのか。――それに、狐火で焼かれないとは、相当に高級な守護霊ということか……』
木口はルーフを無視して私をじっと見つめ始めた。そして私の二本ある右腕が持つ日記帳を見て、再度私の瞳に目を戻す。瞬き一つせず、私に呟いた。
『僕は、二度と逃げないよ。君を解放するまでは』
「お母さんもうちょっと頑張って! 頭出るから! 」
「ひぅ――、うがああああああっ! ちょっと待った! トイレ! 違うのでるううう」
「お父さん! 奥さんの手握ってて! 」
部屋は何やら慌ただしい。吉田君が言うには、新生児というのはどうやら新しく生まれてくる人間のことらしい。そして、ベッドで絶叫しながら何やら頑張っている女性はその母親であり、女性の手を両手で強く握る男性は父親であるらしいが、大きく取り乱している。
「ミヨコ、大丈夫だぞ! 俺はここにいるぞ! 」
「大丈夫じゃねえええええ! いってええええええ! 」
叫びながら頑張っている女性と取り乱している男性を見つめている老人の霊は、何やら懐かしい物を見るような表情でその姿を見守っていた。
「わしもこんなだったなぁ、無力を思い知ったよ。でも後でありがとう何て言われた時には泣いちまったな」
しみじみと語る老人の霊をしり目に、女性の叫び声は激しさを増した。その瞬間、女性の股下で何やら取り出している女性も叫んだ。
「きた! 頭出ましたよ! 」
私もその声に反応して覗き込むと、なんと女性の股から人間の頭のような物が出てきた。私もつい夢中になってその姿を見ていると、ついにはズルズルと身体が全て出てきた。
「おぎゃぁ、オギャ――! 」
「生んだぁあああああああああ――!! 」
生まれた小さな人間は、女性から取り出されるとしばらくして激しく鳴き始めた。その声を聞いた瞬間に、今まで凄絶な表情で絶叫していた女性の顔が柔らかく微笑み、手を握っていた男性も泣き出した。
「おめでとうございます。男の子ですよ! がんばりましたね! 」
生まれたての人間を取り出した女性はそう言うと、母である女性と父であろう男性に抱きかかえた小さな人間を見せていた。
女性はそれを見るとほっとしたような安らかな顔になって気絶し、男性は元気に喜んだ。なるほど、人間はこうやって生まれてくるものなのだと私は初めて知ることができた。
「さて、もうわしもいかねば」
老人の霊はそう言うと、女性に抱きかかえられた新生児の顔を見て微笑み、その小さな体の中に溶け込むようにして消えていった。
……ルーフの時とはずいぶん違う守護霊の誕生を目の当たりにしたからか、私は少し呆然としてしまう。老人の霊は、白く淡い光に包まれていたのだ。対してルーフは黒い靄に包まれている。なんでこんな違いが出るのだろう。
「終わったっすね。守護霊は基本的に外部から攻撃されたり、警戒しなければいけないほどの霊がいない限りは出てこないっす。あのじいさんは俺やなにか先輩を知ってるから、俺らが近づいても出てこないっすよ」
あの老人の霊と会えなくなるのは少し寂しいけど、守護霊になれたんだ。私も『おめでとう』という気持ちで老人の守護霊が宿った新生児を見守った。
新生児は別の部屋に移動させるのか、女性二人が新生児を部屋から出して行ってしまう。ベッドで気絶している女性に男性が寄り添う姿が何とも微笑ましく思えてくる。そして何故か、羨ましくも思えるんだ。
「ここにはもう用がないっすね。俺達も出るっすか」
吉田君はそう言って、入ってきた扉を透き通って出て行く。私もそれに続こうとするのだが、やはりベッドで気絶する女性と寄り添う男性が羨ましくて仕方がなかった。コレも生前の記憶が原因なのかは分からないが、私はそれを振り切って吉田君の後を追った。
病院の通路を歩いていると、霊の気配がいくつか感じられる。だけれど、私に近寄ってくる気配はなさそうで、むしろ離れていっているのがわかる。
特に何も起きぬまま、私達は床を透き通って一階の出口にまで戻ってきた。木口の情報を沢山教えてくれたあの老人の霊とも、これでお別れなのだ。でも今日は木口の情報だけではなく、人間が新しい命を生むのも見られてとても興味がそそられる体験ができた。私は有意義に満ちた気持ちで病院を後にした。
「もう夜も遅いっすね。意外と時間が経ったようで、外にいる人間も少ないっす。次の情報収集できそうな場所まで移動するっすか」
吉田君がそう言うので、私は長距離移動のためにルーフを呼び出した。私はルーフの背中の上にいつもの様に同化し、吉田君はルーフをよじ登って背中にまで這いあがる。
街といえどこの場所が丘だからか、夜空は澄んで星が綺麗に見ることができる。とても美しい景色だ。そんなものを見ていたら、私はどうやら眠くなってきてしまった。ウトウトとルーフの背中で眠気と闘っていると、吉田君が声をかけてきた。
「なにか先輩! 今度はあの下に見える街に行ってみるっすか! 大きな街っすから、情報も沢山あるっすよ! ……あれ? 眠たいっすか? 」
コクリコクリと首を落とす私は、吉田君の話を半分ほど聞いていなかった。眠気が限界だ。いつもの様にルーフのフカフカな背中に突っ伏して眠りに落ちた。
「おやすみなさい。なにか先輩」
ここはどこだろう。コレは、夢か。この森の景色、そして荒れ放題な獣道。そして見える右腕の袖をヒラヒラと漂わせる老人。
どこかで見た事がある。そうだ、いつしか見た夢と同じ情景だ。だけど、あの時とは違う。何が違うのだろう、そうだ。あの時はお日様が天に昇っており、今はお月様が天に昇っているんだ。そんな違いだった。
長い白髪を結び、右腕の無いこの老人は『木口』だ。あの廃墟の神札を貼り、右腕の無い九十二歳の老人。この情報を知る今でこそ、今この夢で見ている目の前の老人が『木口』なんだ。私が大切に想っている日記帳とボールペンそしてラブレターを、およそ一番よく知る人間なんだ。
老人。いや木口は私の夢の中で夜遅くの獣道を渡り、一人廃墟へ向かって行く。一体何をする気なのだろうと思ったが、よくよく思い返してみると、近くの村の住民が木口を呼ぼうとしていたのを思い出した。
どうやら木口は誰かに頼まれて、再びあの廃墟を調べに行ったのだろう。そしてとうとう身に覚えのある廃墟が姿を現した。夜遅くさらには森の中ということもあって全くの暗闇かと思えば、月明りが廃墟を照らして意外とよく見えている。
木口は廃墟をしばらく見つめると、前に見た夢と同じように廃墟の裏へと回って行った。草木で荒れ放題な細い道を渡って、石の塊のある場所で足を止めた。今ならわかる。あの石の塊は、形は違うけどたぶんあの老人の霊がいた『墓石』と同じモノなんだ。
木口はしばらく丸い墓石を見つめるが、特に何もないらしく元来た道を戻ろうとした。しかしその瞬間、足元で何かを見つけたようだ。
月明りがわずかに反射する物を木口は足元で見つけ、それをしばらく見つめると拾い上げた。木口が足元から拾い上げて今左手に持っている物は、私が落とした『木製のボールペン』だった。
そのことを確認した私は少し驚いたが、不思議と『これでいい』と感じている。そんなことを思いながら木口を見てみると、前に見た夢では見ることができなかった木口の顔全体がわかった。木口は口を開けて凄絶な表情で固まっているのだ。
しばらく固まった後に、およそその年齢ではできないと思われる俊敏な動きであたりを見回して警戒し始めた。前に夢で見た狐を今度は九匹呼び出して辺りを警戒させると、木口は何故か涙を流しながら謝った。
『ごめんね。――イさん。守ってあげられなかった。せめて、これ以上苦しませない』
九匹の狐達は木口を囲んで九つの方向に向かって警戒をしているが、前に夢見た木口の様に私と目が合う様子はない。今回はどこで目が覚めるのだろうと考えていた私は、夢の中で木口と同じ地面に降り立った。そして近づいて木口を観察しようとした時、狐の一匹が私に唸った。
跳びつく狐は次第に白い炎に包まれ、私に噛みつこうとしている。びっくりした私は、いつしか感じた気分に変わってしまう。この感じはなんだろう、確か、そう。琴音たちの時の様だ。
『動くな――イ――ナ』
何かを呟く木口だが、特に何も起きない。それよりこの狐が邪魔だったから私はルーフを呼び出して狐を喰らわせた。白い炎を帯びた狐はルーフに喰いちぎられ、完全に消滅した。その瞬間ガラスが割れるような音があたりに響き渡り、木口は驚いたような表情でつぶやいた。
『名の呪が利かない、自分の名前を憶えていないのか。――それに、狐火で焼かれないとは、相当に高級な守護霊ということか……』
木口はルーフを無視して私をじっと見つめ始めた。そして私の二本ある右腕が持つ日記帳を見て、再度私の瞳に目を戻す。瞬き一つせず、私に呟いた。
『僕は、二度と逃げないよ。君を解放するまでは』
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる